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アーヴァンク

 森を切り拓いていたら小川を見つけた。

 元々は村の中を流れていたみたいだ。壊れかけた橋があっちとこっちをつないでいる。


「あ」


 何も考えずに橋の下を覗き込んだらモンスターと目が合った。


 アーヴァンクというビーバーみたいな姿のモンスターだ。

 ただし大きさは羊ほどもある。鋭い爪と怪力の持ち主だ。


「どうしたの?」

「!」


 横からティナが顔を出した。

 アーヴァンクはティナを見ると同時に逃げようとしたがティナの方が速かった。


「これ、どうする?」


 隣にいたはずのティナは次の瞬間にはもう橋の向こうにいて、逃げ出したアーヴァンクの首根っこを捕まえて宙づりにしていた。

 アーヴァンクは哀れにも空中で手足をキュッと縮めてカタカタ震えている。


「そうだな……」


 オレはアーヴァンクに触れながらテイマーの能力を使った。

 アーヴァンクの心が、言葉でなくイメージが伝わって来る。


 アーヴァンクは闇の中に巨大な口だけが浮かんだ得体の知れないモンスターに咥えられている心境だった。

 うーん、ティナの扱いが酷い。


「わかった、命は助けてやるからオレに従え」


 念じながらスキルを使うとテイムが通った。報酬型かな?


 こいつのジョブは【ワーカー】だった。

 猫っぽい顔をしていたので名前はタマにした。


 アーヴァンクは木を伐り倒したり岩を動かしたりが得意な土木作業のエキスパートだ。

 テイムしたのはたまたまだったがちょうど良かった。

 オレが学校に通っている間にもガンガン木を伐り倒してくれるだろう。


 警備をベルたちに、伐採をタマに任せてオレたちはウェスタへ向かった。

 材木を納入するためだ。


「よいしょっと」


 材木問屋には学校から話を通してもらってある。

 伐り倒した木を十本ロープでまとめて、ティナは頭の上に担ぎ上げた。


 まあ材木って安いから大した金にはならないんだけどな。

 オレたちはティナのおかげで運ぶのはタダだが普通は輸送の方が費用がかかる。

 一番金がかかるのは柱や板にする加工費だ。


「あ」


 ウェスタに向かう途中、材木を頭の上に抱え上げて歩いていたティナが突然声を上げた。


「どうした?」

「なんか新しいスキル覚えた」


 そういうとティナは材木から手を離した……って、ええっ?

 な、なんだこれ、触ってないのに木が宙に浮かんでる!


「え、なにこれ。どうなってるの? これ」

「[サイコキネシス]ってスキル。自分で持てるくらいの重さなら手を触れなくても動かせるみたい」


 マジか。


「それって木以外でも行けるの?」

「モンスターでも人間でもいけそう」

「じゃあちょっとオレに使ってみてよ」

「いーよー」


 次の瞬間オレの体は見えない力で持ち上げられた。


「おおっ」


 体を鷲掴みされてるって感じじゃないな。

 細胞の一粒一粒が全部持ち上げられてる感じだ。


 案外自由に体を動かせるのでオレは空中でうつ伏せに寝そべってみた。

 で、両手を前にピンと突き出すとオレの体はその姿勢のままスーッと滑った。飛ばしてるのはティナだけど。


 こ、こりゃあ楽だ!

 モンスターに使う場合には触れずに投げ飛ばしたりとか、破滅的な威力を発揮することだろう。


 しかしティナって歩いてるだけでも強くなるんだな……。


「うっ、うわああああああああああ!」


 ところでオレはティナの力には慣れてたのでうっかり失念していたんだが、木が浮いてるもんだから店の人にはメチャクチャ驚かれた。

 ティナは問屋の社長さんに「うちに就職しないか?」と勧誘されていた。


 今日も大汗をかいた。やれやれだ。


 ウンディーネで除湿しつつシルフで部屋の中の空気を回すと夏でも結構涼しい。

 水を浴びた後オレは部屋に引きこもった。


 ティナも風に吹かれて涼しそうにしている。

 下着にオレのシャツ一枚で、シルフに向かって「あ゛ー」とか言ってる。


 暑いけどさ、暑いのはわかるんだけどさ……。

 本当に目のやり場に困るのでもう少し着込んで欲しい。

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