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木こり

 始まったばかりの冒険だったんだが早くもお休みだ。

 翌日からオレたちはそれぞれの課題を解決するための活動を始めた。


 アメリは早速マッピングを始めた。

 グリに乗って東西南北に舐めるように移動しつつ、空から地表を観測している。


 素晴らしく効率的な3Dマッピングだ。遠からず課題を解決してしまうことだろう。

 一応連絡用に分裂したマルを一羽つけておいた。


 アイラもまた、教官やバイト先のプリーストジョブの先達に聞いて頑張っている。

 シャルからの伝言ゲームなもんで詳細はよくわからないけど。


 何だか取得条件が色々あるらしいんだが、アイラはまともに口を聞いてくれないんだ。同じパーティーなのに。

 まあ大丈夫じゃないかな、多分。


 レインは苦戦してる。


 最初は教官のところに行ったんだが……あいにくその[忍び足]というスキルを持っているのがタクティス教官だった。

 悪い人じゃないんだが、この学校でも屈指の「教えるのが下手」な教官だ。


「よし、教えてやる。見て覚えろ」


 そう言ってタクティス教官は姿を消してしまったそうだ。

 まさに聞いた通りのスキルだ。


「見えねーよ!」


 レインは拳をテーブルに叩きつけて吠えていた。


 しょうがないので次は同系統のジョブの同期生たちを尋ねて回っていた。

 でもマックやマルスみたいな上級者でもやっぱりそのスキルは持ってなかった。


 おかげでどうやったら身につくのかわからない。


 シャルは[奪魂]があるから条件は実質クリア済みだ。

 というわけで次のライブの練習をしている。


 公会堂の予約が取れたとき──大体十日に一回くらいのペースでライブしてたおかげで客のレベルも上がってきた。

 今のところまだノリはいいんだが若干マンネリ化してきたことも確かだ。


「そろそろ新しいことを始めたいな」

「例えば?」

「オリジナルソングとか」


 シャルは難しい顔をした。

 今までのシャルは編曲だけで自分の曲というものを持っていない。


「作曲はやったことがないわ」

「既存の曲でも歌詞をつけるとか」

「歌詞……何を歌ったらいいのかしら」

「なんかこう、伝えたいメッセージ的なことでも載せとけばいいんじゃないの? オレへの愛とか」

「……もう、もう、本当にバカなんだから!」


 そしてオレはというと──


「暑ちぃー……」


 オレは首に掛けた手ぬぐいで流れる汗を拭いた。


 太陽がギラギラしてる。季節はすっかり夏だ。

 あんまり暑いもんだから下は探索用の迷彩服だが上は脱いでしまって肌着一枚だ。


 相談した次の日、教官が早速「許可が取れたぞ」と言ったのでオレは森の伐採に着手していた。


 森の木は放っておくと人間の領域にどんどん侵食してくるので自家消費分の伐採に許可はいらない、というか推奨されている。

 寮でも森の木をバンバン薪にしている。


 しかし販売となると別だ。

 だってこの辺りでは木はいくらでも生えてくる厄介者だが都会に持って行けば立派な資材なんだ。

 材木も薪も炭もそれなりの値段になる。


 森林資源はこの辺境の領主や地域の貴重な収入源になっていて売買は免許制だ。


 基本的に学生の冒険中の成果を金に換えるときは学校と折半だ。

 何故って学生にはまだ販売の資格がないから学校が代わりにやってくれるんだ。

 ティナの地竜もそうだったらしい。


 材木の売買も同じルールが適用される。

 で、学校が許可を取ってくれたのでオレとティナはバンバン伐採している。

 まとまったら材木問屋に運び込もう。


 村が放棄されてからたったの数年、その間にもう木は見上げるような大木に育っている。

 木を切り倒すのに苦戦していたオレは斧を杖に小休止しているところだ。


 ──開拓用のテイムモンスターが欲しい。


 これまでオレは冒険することしか考えてなかったのでそっちに使えるモンスターばかり集めてきた。

 でも今はこの大木を伐ったり運んだり切り株を引っこ抜いたりできるモンスターが欲しかった。

 具体的には牛系のモンスターだな。


 自分の課題を早々に済ませたティナはオレを手伝ってくれている。

 ところがティナは木を運ぶのと切り株を抜くのはできるんだが、意外なことに木を伐るのが苦手だった。


「あれっ?」


 苦手というか斧が壊れちゃうんだ。

 ティナが斧を振るったら刃が幹に食い込むと同時に柄がへし折れて、その場でクルリと一回転していた。


 以前「剣を使うと壊れちゃう」って言っていたけど、どうもジョブの特性でそうなっちゃうんじゃないだろうか。

【超獣】ジョブは武器との相性が悪いようだ。


 そろそろ再開するか。オレは斧を振りかぶった。


「Hey- Hey- Foo!」


 位置を変えながら十回くらい斬りつけたかな?


 メキメキメキ……


 細くなった幹の残りを軋ませて、ようやく木はドウと倒れた。


「ふう……」


 オレは後ろに倒れるように座り込んだ。

 腕もパンパンだが手のひらが腫れぼったくて、熱い。


 四つん這いで木陰に移動して、ウンディーネに井戸水を持って来させて頭上からバシャバシャ掛ける。

 ついでシルフに風を吹き付けさせると一気に冷えた。


 あー……気持ちいぃー……。


 切り株を一息で引っこ抜いたティナも隣にやってきて、シルフに吹かれて涼んでいる。


 空にはそよ風もない。オレたちの周りに落ちた木陰の形は微動だにしなかった。

 動いているのはオレとティナの髪の毛だけだ。


「──そういえばさあ」

「ん? なぁに?」


 声を掛けながら見るとティナは体育座りに抱えた膝の上に頬を乗せてこっちを見た。


「マナバーストって何だったの?」


 ティナは即日課題を片付けてしまったんだ。

 おかげで見学する暇もなかったんで気になっていた。


「ああ、あれ? 魔力を直接放出する攻撃のこと」


 オレたちは普通体の中にある魔力を消費してスキルを発動している。

 スキルを使わなくても魔力って使えたんだ。


「へー、そんなことできたんだな」

「できることは誰でもできるらしいよ、やり方さえ知ってれば」


 だったらオレにも教えてくれればいいのに。そうしたらオレも後ろから援護射撃ができる。

 でもそう言うとティナは首を横に振った。


「ファイターとかナイトみたいな頑丈なジョブじゃないと体が耐えられなくて爆発しちゃうんだって」


 クッ、こんなところにもジョブの格差が……。

 気を取り直して聞いてみた。


「ティナはできるようになったんだよね?」

「一応」

「実際どんななの? やってみせてよ」

「うーん……。これもらっていい?」


 ティナは次に切ろうとしていた木を指さした。


「どうぞ」

「じゃあ……」


 立ち上がったティナは手を伸ばして木の幹に軽く指先をつけた。で、次の瞬間勢いよく踏み込んだ。

 体が一瞬ブレて見えるような瞬発力だ。浮いていた手のひらが木の肌を叩く。


 バァン!


 爆音と共に木の幹が吹っ飛んだ。


 でもティナの手のひらがついているところはまったくの無傷だ。

 反対側が抉られたように大きく消し飛んでいる。


 木はメリメリ……と音を立てて向こう側に倒れた。


「スッゴ……」

「こんな感じ。スキルじゃなくて魔力を直接叩きつけるの。こんなこともできるよ」


 ティナは今度は人差し指をまっすぐ立てて空の端を指さした。

 その指先から噴き出したまばゆい光がピィーンと空気を高く震わせて一直線に空の彼方へ消えて行った。


「慣れると下手なスキルより速くて強いんだって」

「ちょっと目を離した隙に強くなるなぁ」


 オレは倒れた木を見た。これは薪にしよう。




 ところで、その後ティナがローキックの練習台にすることで伐採の速度は随分と改善した。


「今まで本気で蹴っていい相手がいなかったからちょうどよかった」


 何だか怖いことを言っていた。

 あの細い足で蹴ったら木が折れるんだもんな……。


 スゴすぎるよティナさん、本当に……。

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ティナは デスビ○ムを おぼえた!(ドラク○並感
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