冒険開始!
翌日の午後。オレたちは隊列を組んで森へと足を踏み入れた。
いよいよ冒険開始だ。
先頭を行くのは前と同じくレインだ。
護衛としてベルとハローをつけている。
今回のアメリはグリに乗って上空にいる。
グリは図体がでかいせいで狭い森の中を歩くのを嫌がるのだ。
グリに乗っていればかなり安全だし、上空からでもマッピングはできるみたいだし、ちょうどいいのでアメリに乗ってもらっている。
前衛はティナ、その次にベガに乗ったシャルとアイラ。
ティナは前と同じく素足、シャルとアイラはスカートにタイツを合わせている。
しんがりはオレだ。
マルの本体はオレに付けているのだが、分裂した分体をアメリと一緒に飛ばしている。いざという時の連絡用だ。
「よしみんな、気を引き締めて行こう!」
「「「了解!」」」
…………。
張り切って出発したオレたちだったのだが……。
しかし何も起こらない。
モンスターが一匹も出ないんだ。
どこか遠いところで鳥が鳴いている。
ヒラヒラとちょうちょが飛んで──あ、ティナの虫よけスキルに阻まれてあっちに行った。
のどかだ。
オレたちはとりあえずいつもの泉でのどを潤してからステージ岩に向かった。
岩の上でちょっと休憩、次は千年栗の巨木目指して出発した。
小路をえっちらおっちら一時間。道中特に障害もなくオレたちは栗の巨木の前にいた。
オレはようやく念願の栗の木にタッチすることができた。
ここからは未知の道程だ。
オレたちは注意深く道を進み、そして何事もなく無事出発点に帰ることができた。
んー……。本当に何も起こらなかった。
あれ? 森ってこんなところだっけ?
ハイキングして帰ったようなものだ。
張りつめていたのに拍子抜けだ。
「えーっと、それでは今日の反省会だが……」
オレたちはそろって顔を見合わせた。
やることがない。
二日目。
今日も何も出ない。
これはさすがにおかしい。
ティナの虫よけスキルで虫が寄ってこないのはわかるが、モンスターが出ないってのはどういうことだ?
「いや、こっちは普通に戦ってたけど」
「うちはいつもより忙しかったぞ」
「そうなの?」
帰ってから聞いてみたら他のパーティーはいつもより戦闘回数が多いくらいだそうだ。
何故だ。
三日目。
やはり何も出ない。
みんな気が抜けてしまって、レインも先行するのをやめてぶらぶらしてるしシャルはベガの上でピッコロを吹いている。
優雅な曲だ。お貴族様のピクニックかな?
ティナもオレの隣に来ておしゃべりしている。
頑張ってるのはアメリだけだ。
いいんだろうか?
「うぉーっ……」
「ギャーッ……」
森の奥から叫び声が聞こえてきた。人間とモンスター双方の。
金属音、そしてスキルの炸裂する音も。
他のパーティーが戦闘している音だ。
オレたちは一気に気を引き締めた。
冒険中のモンスターの横取りはご法度だが救援は義務だ、駆け付けないと。
ちなみに助けた方はその戦闘で得られた収入の一割程度のお礼をもらう慣習となっている。
それはともかくもう三日も何もしていないのだ。
お礼なんかどうでもいいからとにかく何かしたい。
「先に行くね!」
「任せた!」
ティナが先行して飛び出していった。
速い、もう姿が見えない。
オレはマルに合図してグリに現場へ急行するよう命令した。
そしてオレたちが駆けつけたときにはもう戦闘は終わっていた。
ティナとグリが蹴散らしてしまった──わけではない。
「逃げちゃった……」
ティナとグリが到着するとモンスターは一斉に逃げ出してしまったらしい。
あっちのパーティーの連中もポカンとしている。
「すまん、助かった……?」
「い、いや……? 大したことはしてない……??」
変な状況だ。
あっちもこっちもお互いわけがわからず首を傾げた。
結局その後もモンスターと遭遇することはなくオレたちは学校に帰った。
「えー、それでは反省会を始めたいと思います。……どうもティナとグリが怖くてモンスターが近寄ってこないんじゃないかと思うんだが、みんなの意見は?」
「同意」
「……私もそう思う」
アメリは手を挙げて、ティナは居心地悪そうにもじもじしながら同意した。
当事者たちもそう思うか。
「考えてみたら、前にティナと森に入った時も地竜と遭遇するまでモンスターが出なかったもんな」
「うん……」
これじゃ実習にならない。
でも、じゃあティナとグリを外すかって、そんな仲間はずれみたいなことはしたくない。
ベルで対処できないモンスターが出たら死ぬし。




