なんの成果も!! 得られませんでした!!
「ただいま……」
夕方になって帰ってきたティナの様子が少しおかしかった。
声が沈んでいるし、何となく顔色も暗い。
出かけるときはウキウキしてたのに。何があったんだろう?
心配になったキャロルは尋ねてみた。
「どうしたの? 何かあったの?」
尋ねるとティナは首を横に振った。
「何もなかったの」
ティナはウィルの新居にお呼ばれした話をした。
「お風呂入って」
「えっ」
聞いてキャロルはビックリした。
ティナって思ってたより大胆……。
「シャツ一枚で一緒にお茶飲んで」
「……それで何もなかったの?」
「何もなかったの」
「…………」
沈黙するしかなかった。
そんなこと聞かせないでよ! 何かあっても何もなくても反応に困る。
「……そんな別にいきなり最後までとかそこまではちょっとまだ心の準備ができてないけど、……でも少しくらい何かあってもよくない?」
「えっ。あっ、はい」
「私って女の子として見られてないのかな……?」
「えーっと、うーん……そんなことはないと思うけど……」
以前廊下ですれ違った時のことを思い出す。
あの時の彼は確かにティナを女の子として意識しているように見えた。ような気がする?
「が、頑張ろう! 応援してるから!」
「ありがとう……。あ、でも、やっぱりダメかも……」
ティナはまた急に自信をなくして肩を落とした。
「何でよ」
「ウィルって、シャルと仲がいいみたいなの」
「……シャル?」
「シャル」
「え、シャル? 何で? 何でシャル?」
「わからない。怖くて聞けなかった」
「あのシャルが? 男の子と? ウソでしょ? 勘違いじゃ──」
「ウィルの家にシャルが作った料理があったの」
あのシャルが?
男の子に手料理を!?
衝撃でキャロルはプルプル震えた。
この学校に入学して早や数か月、シャルとは同じ獣人として同じグループで活動しているが、それでも何を考えているのかわからないところがある。
多分音楽のことしか考えてないけど。
天然系女子、養殖じゃない天然ものの天然キャラだ。
少なくとも男の子なんて眼中になかったはずだ。
男子に興味がないからこそ人間の女子たちもしぶしぶ受け入れてきたのだ。
だってあの顔であの体で一芸もある。
あのちょっとズレた性格だってあそこまで見た目が良ければ恋愛にはむしろプラス要素として働くだろう。
シャルに本気を出されたら絶対に勝てない。
女子寮におけるシャルの評価は、言うなれば恋愛の潜在的頂点捕食者だった。
「あの顔と体で天然キャラっておかしくない!?」
「バグってるよね」
「ズルくない!?」
「チートだよね」
獣人は基本的に恋愛強者で大抵の恋愛は上手くいくと高を括っているところがある。
そんな了見だから同性から嫌われるのだが。
その獣人をして絶望を感じさせるものがシャルにはあった。
キャロルだって恋のライバルがシャルだなんてシチュエーションは絶対に嫌だ。
それにしても……。
キャロルは嘆息した。
ティナが彼のことを好きなのは知ってたけど、まさかシャルまでとは。
キャロルには正直に言ってウィルの良さがさっぱりわからなかったのだが……もしかしたら何か凄い魅力があるんだろうか?
「シャルはどんな男が相手でも100%落とせるんだからウィルは譲ってくれてもいいじゃない!」
ティナが叫んだ。
(もう気持ちが負けてるし……)
さすがに同情してしまう。
でも、そこまで悲観的にならなくても、ティナだって負けないくらい可愛いのに。
ティナの方がいいって男の子だっているんじゃない?
少なくとも彼の場合シャルよりはティナの方が合っているんじゃないだろうか。
キャロルにはそう思えるのだが……。
キャロルは肩を落としたティナのその肩にそっと手を添えた。
「が、頑張ろう……。応援してるから……?」
「うん……」
タフな戦いになりそうだった。




