大掃除
翌朝、オレは学校に行ってしばらく休む許可を得た。
ちょっと今のままでは暮らせそうにない。
それと修理すべき箇所を示して、その許可も。
あの建物は学校に付属してるわけで、修繕の材料費は出してくれることになった。
自宅に戻る前に教室に顔を出してしばらく休むと伝えると、レインたちはオレの肩を叩いて言った。
「おいおい、そういう事なら言えよ、水臭いな」
「俺たちも手伝ってやるよ」
「……ありがとう、助かる!」
帰りにバイト先に寄ってテイムモンスターたちの寝藁をもらってきた。
厩に敷き詰めてやったら大喜びでゴロゴロしていた。
午後になったら支援科の男子たちが半分は来てくれた。
戦闘科からもマックが来た。
「他のやつらは探索がどうしても外せなくてな。明日は交代で来るって言ってたぜ」
友情に感謝だ。
まずは総出でほったらかしの壊れたイスなんかを外に出して解体した。後で薪にしよう。
ブラウニーは粗大ごみの片付けはできないからな。助かる。
他のやつらが廊下の蜘蛛の巣を払ったりあちこち雑巾を掛けてくれているのでオレはかまどを掃除した。
ようやく綺麗になったころレインがやってきて肩を叩いて言った。
「なあなあ、料理していい?」
「むしろ頼む」
「サンキュー! 明日は食材持ってくるわ。……おわっ!」
鼻歌交じりに火を熾したレインから悲鳴が上がった。
「どうした?」
「何かいる! トカゲ!」
見たらかまどの火の中にトカゲがいた。サラマンダーだ。火が【火霊】のジョブを得た状態だ。
例によって魔力を送ったら簡単にテイムできた。
次は水回りだな。
オレはウンディーネで井戸水を丸ごと全部持ち上げて捨てた。
さらにウンディーネで井戸水の湧出を止めつつ中に降りて綺麗に洗った。
これが結構な重労働だった。
壁を洗って、底に溜まった泥や汚れをすくって外に捨てる。二人ずつ交代で頑張ったんだが結局夕方までかかった。
でもおかげで生活用水は何とかなりそうだ。
次の日は交代で他のやつらが来てくれた。
固定パーティーに入っていない居残り組は引き続き来ているけど。
なんとルークたちもパーティー全員で来てくれた。
「これ、女子寮からもらってきたの。使って」
ルークのパーティーの女の子たちは古い布団を持って来て客室に入れた。
おまけに破れたところを繕ったりカバーを縫ったりして、今夜からでも使えるようにしてくれた。
板を持ってきたマックが屋根に飛び乗って、雨漏りの屋根板を外して取り替えた。
こういうとき身軽なやつがいると楽でいいな。
「俺の家は大工なんだ。昨日から気になってて……」
そう言いながらマックはその真下の床板も取り替えてくれた。
部屋や廊下の掃除が終わったので手の空いたやつらは草むしりしている。
オレは今朝から風呂掃除に取り掛かっていた。
シルフでひたすら換気して、ウンディーネでひたすら除湿した。
風呂はタイル貼りだった。
多分陶芸系のジョブの職人が工事したのだろう。目地まで硬い。
おかげでルークたちの力でブラシをゴシゴシかけても大丈夫だ。
板張りじゃなくて良かった。もしそうならとっくに腐ってて大工事になるところだった。
ボイラーも掃除したら使えるようになった。
夕方、とうとう住居が完成した。
オレはひと月はかかることを覚悟していたんだが、こういうことはやっぱり人数が物を言うな。
「せーのっ」
「「「「「バンザーイ!!!」」」」」
「お疲れーっ!」
落成式代わりにオレたちは玄関の前で万歳した。
明日は休日だ。
手伝ってくれた連中のうち彼女がいるやつらは帰ってしまったが残りのやつらは泊って行くつもりだ。
まあ部屋ならあるしな。
ちょっとベッドが足りないけど添い寝してくれ。男同士だけど。
オレは手伝ってくれた野郎共のために風呂を沸かした。
普通なら水汲みは重労働だがオレにはウンディーネがいる。
綺麗にした井戸にウンディーネを沈めてたっぷりと水を含ませた。
そして浄化した水でボイラーのタンクを満たす。
バラした廃材を燃やして、さらにサラマンダーに魔力を送って火力アップ!
ボイラーをガンガン焚いた。
しばらく頑張ると浴槽は湯でいっぱいになった。
「よしみんな、一番風呂を楽しんでくれ」
「ヒャッホーゥ!」
男たちは大騒ぎしながら風呂に入っていた。
風呂上がりにゾロゾロ食堂に行くと何だかいい匂いが漂ってきた……。
レインのやつ、今日は両手に鍋釜と食材を抱えてやってきて、昼からずっと厨房に引きこもっていたんだ。
「オレの実家は食堂だぜ?」
とか言って。
それでレストランでバイトしてたのか。
「おおお……」
その光景をみた全員から感動の声が上がった。
すごい、見ただけで美味そうな料理がテーブルの上いっぱいに並んでる!
「やった、すげえ!」
「よし、こいつの出番だ!」
叫びながら出て行った手伝い連中が樽を運び込んだ。
どこに隠していたんだか。こいつら酒を持ち込んでやがった。オレたちは学生だぞ?
……まあいいか!
オレたちはそれぞれカップになみなみとビールを注いだ。
「えー、皆様のご尽力によりまして無事住居が完成いたしました。みんな、昨日今日と本当にありがとう! 酒も料理もありがとう!! せっかくレインが作ってくれたんだ、存分に楽しんでくれ。それでは──乾杯!」
「「「「「乾杯!!!」」」」」
オレたちはビールを一気に飲み干した。
うーん、美味い! 多分。味はわからんけどこういうのが美味いんだろう、多分。
そしてメシは最高だった。
飯が旨いと酒も進むな。
オレはギターを取ってきた。
下手なギターを弾くと酔っ払ったマックが喉を唸らせた。
オレも一緒になって歌う。食堂に下手な歌の二重唱が響くと他の奴らはそれに合わせて踊り始めた。
下手なダンスが滑稽なパントマイムみたいで、オレたちは歌いながら、また踊りながら爆笑した。笑いすぎて喉が痛い。
なんだこれ、メチャクチャ楽しい!
子供の頃の村祭りを思い出す。
大人たちが一生懸命飾りつけをしていたなぁ。
ギターが上手い爺さんが一人いて、やはり酔っ払った村人たちが今と同じように伴奏に合わせて広場で踊っていた。
そうだ、有志一同で演劇もしてたな。
貧乏村の唯一無二の楽しみで小さなオレは祭りを心待ちにしていたものだ。
村が潰れる前の数年間は祭りどころじゃなかったからかれこれ五、六年ぶりか。
あークソ、楽しい!
引っ越して良かった。
引っ越す原因になったのはグリフォンだったわけで、テイムして良かった。
それも本を正せばこの学校に来たからだ。
入学して良かった!
注:この世界では未成年の飲酒は特に禁止されていません。




