表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/99

お引越し

 ヒーラージョブが三人もいて良かった。

 腰を抜かしたアイラをベルナのところに引きずって行って治療してもらって、次にウィズ。

 何とか動けるようになった彼女たちは手分けしてパーティーメンバーを癒していった。


 致命的な怪我がなくて良かった。

 応急的に処置しただけだったがルークたちは動けるようになった。さすが。


 ただ女の子たちはまともに足が立たなかったのでテイムモンスターに乗せて連れて帰った。

 シャルとアイラは引き続きベガに、アメリはベルに無理矢理乗せた。ベルナとウィズはそれぞれの恋人が背負った。


 ルークは二人からせがまれてリサを背負ってミュールを抱きかかえたけどさすがに無理があった。

 二人にはグリフォンに乗ってもらった。

 怖がってたけどそこは我慢して欲しい。


「オッ、オワアアアアアッ!」

「ギィエァアアアアアッッ!!」


 グリフォンが姿を現すと訓練場がパニックになった。

 まあそりゃそうなるよな。




 教官たちが飛んで来て武器を構えた。やめて。

 しょうがないのでレインが走って事情を説明して、グリフォンはともかくとしてルークたちを医務室に運んでもらった。


 ルークたちを引き取りながらさすがの教官たちも警戒していた。


 グリフォンは学校中を巻き込んだ喧々諤々の議論になった。

 探索活動のために有効活用すべきとか逃がしてしまえとか、いろんなことを言われた。


 処分しろという意見もあった。

 バカ言うな! せっかくテイムした大物を何で殺さなきゃならんのだ。

 こいつは今後のオレの生命線だ。


 意見はちっともまとまらなかったがグリフォンを学校や寮の近くで飼うことは拒否された。そこだけは一致した。

 管理人には「元いたところに戻してきなさい!」なんて言われた。捨て犬じゃないんだから。


 オレはテイムモンスターたちの世話をしながら結論を待った。

 グリフォンには自分の餌は自分で調達してもらったけどね。こいつを養える量の肉なんてとてもじゃないけど用意できない。


 そして長い協議の結果──


「ウィル、君には退寮してもらう」


 ……え?


「いくらなんでもグリフォンを寮の近くで飼うのは勘弁してほしい」

「テイムされているとは言っても懸念は拭えない。イメージも悪いしな」

「それにだな、グリフォンがいるせいで学校の周りからモンスターが逃げてるんだ。これじゃ授業にならん」


 寮の管理人と学校長と教官たちがオレに告げた。


「退寮って、退学ですか?」

「そうじゃない、学校は辞めなくていい。だが寮からは出て行ってもらう」

「オレはどうしたらいいんですか?」

「引き続き寮に住みたければグリフォンを処分することだ。そうでなければ──」




 その日の午後、オレは教官に連れられて郊外のボロ屋の前に立っていた。


 ここは湖の北側、町を挟んで学校の反対側だ。

 元は開拓村だったそうだが今は森に埋もれてしまって放棄されている。オレの故郷と同じだな。


 民家なんかはもう跡形もない。森に飲み込まれてしまっている。

 この建物は元の村の位置からすると外れの方にあったのだろう。そのおかげで一軒だけ残っていた。


 教官は玄関の鍵を開けながら言った。


「市役所が紹介してくれたぞ。格安で売りに出ていたから学校で買い取った。寮の別棟の扱いだ」


 オレは教官と中を見て歩いた。


 小さいが一階は吹き抜けのホールになっていて、テーブルとイスがいくつもある。食堂かな?

 その奥の厨房は一人暮らしにはちょっと大きい。トイレはもちろん、並びでなんと浴室まであった。

 厨房のさらに奥に居住部が、それとは別に二階に同じ造りの部屋が五つある。

 外には厩なんかもついている。


 建ってる場所や造作からして元は宿屋か何かだったのだろう。多分。

 放棄されて数年は経っているようだ。あちこち痛んでいる。


「ここなら学校からも町からも離れてるからグリフォンを飼っても大丈夫だ。修繕や改造は学校に許可を得るように」


 教官はオレに鍵を渡して帰って行った。

 ……とりあえず今日の寝床だけでもなんとかしないとな。


 オレは建物中の窓を開け放ってシルフで換気した。

 シルフは空気が【風霊】のジョブを得た状態だ。以前道端でテイムしたんだ。

 舞い上げられた埃がどんどん外に吹き出されてゆく。


 それからベガで町に行って安いパンを買ってきた。しばらくこれで凌ごう。

 厨房の奥の居住部をオレの部屋に定めた。オレはパンを部屋の片隅に置いて掃除はブラウニーに任せた。


 オレは再びベガに乗って飛び立った。後ろにはグリフォンもついてきている。

 それで元の男子寮に戻って少ない荷物を積み込んだ。布団がないとベッドの板で眠る羽目になるし。

 ついでに掃除道具も貸してもらった。


 湖面の上空を飛びながら後ろを振り返ってみた。

 寮って言っても湖の反対側だ。オレにはベガがいるから何とかなるけど普通の生徒が学校に通うのは大変だな。


 戻ったら部屋の掃除は終わっていた。

 ここが当面のオレの家だ。自宅と呼ぶことにしよう。


 さて、他の部屋の掃除もしないとな。

 食堂に厨房にトイレに浴室に客室に、もちろん廊下も。


 おっと、その前に厩の掃除だ。

 オレだけじゃなくてオレの可愛いテイムモンスターたちの寝床も確保しないとな。


 多分客が馬を付けていたんだろう。厩は馬なら五、六頭は停められるほどの広さがあった。

 オレは中に吹き込んだ枯れ葉やら枝やらを掃き出して、わずかな草を抜いて、天井中に張った蜘蛛の巣を払った。


 厩にはグリフォンもベガもベルも何とか納まった。マルは梁の上に自分で巣を作った。

 今日はこれで我慢してもらって、明日はバイト先の運送屋に行って寝藁を分けてもらおう。


 多分元の村では牧場もやっていたのだろう。野生化したまぐさがそこらじゅうに生えている。

 ベガの餌だけはとりあえず何とかなりそうだ。


 それから建物をチェックして歩いた。

 うわ、屋根の板が一枚腐って雨漏りしている。おかげでその下の床板も腐ってる。これは早めに直さないとな。


 あちこち片づけてたら汗をかいた。風呂入りてー……。

 しかし浴室はジメジメしてとても使う気にならなかった。ここも掃除しないとな。

 今日はウンディーネでたらいに水を張って何とかした。暑い頃で良かった、冬なら死んでた。


 そうだよ、湯を沸かすにはかまども掃除しないと。それに水源はあるのか?


 探したら厨房の外に井戸があった。

 でも覗き込んだら枯れ葉やら何やら入り込んでいる。これも掃除しないと使えそうにない。

 厨房の流しや浴室の排水も詰まってないかチェックしないと。


 そうだ、外も掃除しないとな。周りは草ボーボーだ。


 あー、やることがいくらでもある!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ