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グリフォン

 オレたちはそれから数度の戦闘を挟みつつ岩にタッチ、さらに森の奥へと進んだ。

 調子に乗り過ぎかな? でも今のところ誰も怪我なくアイラの出番もない。


 オレのモンスターたちはただのチームじゃない。

 俺の意志に従って有機的に連動する一個の生命体だ。

 この程度の『狩り』なんて朝飯前だ。


 レインが戻ってきたのでオレはマルを先行させた。

 まだ慣れてなくて、いっぱいに増やしてあちこちに飛ばすと目と頭が割れそうに痛い。

 今はレインと交代で一つだけ前に飛ばしている。


「……ん?」


 オレは、というかマルは森の先で人が倒れているのを見つけた。誰だ?

 よく観察すると知った顔だった。


 ルーク、レパード、マルス、ベルナ、ウィズ、リサ、ミュール──みんな倒れている。


 バカな、こいつらメチャ強いのに!

 ここはロープの内側だぞ? あの地竜じゃあるまいし、こいつらが負けるようなモンスターがいるのか?


 オレたちは慌てて現場に駆け付けた。


「うう……」


 ルークが呻いている。怪我の具合はわからないが意識はあるようだ。

 アイラが慌てて治療スキルを使った。


「どうした、何があった?」


 オレはルークを抱き起こして聞いた。

 ルークは苦しそうに胸を押さえて──鎧が大きくへこんでる──やはり息苦しそうに答えた。


「グ、グリフォンと、遭遇した……。獲物を引きずってて、戦闘になった……」


 ルークの指さす先にグリフォンがいた。


「────ッッ!!!」


 心臓がドッキーンと跳ねた。


 ビックリしたレインがピョンと小さくジャンプした。何だそのポーズは。

 アメリが声なく絶叫した。

 シャルはベガの上で固まって、アイラはシャルに駆け寄って足にしがみつき、やはり硬直した。


 もっと早く言えよ!


 グリフォンは頭は鷲だし体はライオンだけどライオンなんかよりずっと大きい。

 立ち上がったら多分オレよりデカい。巨大な馬くらいある。


 竜を捕食するようなモンスターだ、オレたちだろうとこいつらだろうとかなうはずがない。

 こんなところにいるはずのない強力なモンスターだ。いたら学生なんてただの餌だ。


 オレのテイムモンスターたちもブルッてしまって役に立ちそうにない。

 ベルはしっぽを股の間にキュッと挟んで縮こまっているしマルはオレの肩の上でカチーンと固まっている。

 ハローは何を考えているのかその場でコマのように回転し続けている。


 グリフォンの足元に力を失った鹿がいて、お腹の中身をついばまれていた。

 一心に鹿をむさぼっていたグリフォンは食事を邪魔されるとでも思ったのか頭を上げてこっちを睨みつけてきた。


「ベガ、逃げろ!」


 シャルたちだけでも逃がさないと──


 ところがベガは全然動かなかった。

 いや動かないというか動けない。生まれたてのバンビみたいに足をプルプルさせている。

 涙を浮かべて気絶寸前だ……あ、小便まで漏らしてやがる。

 そういえばグリフォンって馬を食べるんだっけか。


 小舟以下じゃん、オレ!

 ど、どうしよう? ってオレにできることは何もない。


 できることがあるとすれば、オレでなく──


「シャル──」

「な、なに?」


 シャルの声は消え入りそうだった。


「落ち着く曲を頼む。オレもだが、あれにも掛かるように」


 オレはこっちを警戒しているグリフォンを指さした。

 少なくともその警戒は解いてもらいたい。


「やってみる……」


 シャルは震える指でピッコロを構えた。吹き出した音も震えている。

 しかし音楽を奏でだすとすぐに震えが止まった。


 聞いた事がある──そうだ、これはずっと練習していた、あの古い楽譜の古い曲だ。


 グリフォンの動きが止まった。

 ベガもボーッとして足の震えが止まっている。ベルもマルも、ハローまで。


 何が起こった?


 ──思い当たることが一つある。

 これは……もしかして[奪魂]スキルが効いてる!?


 今ならイケるか……?


 オレはグリフォンに近づいた。刺激しないようにゆっくりと、力の入らない足で少しずつ……届いた!

 テイムは入らなかったが、くちばしの下を撫でると心が伝わってきた。


 ……怯えている?

 何故だ。こんな強力なモンスターが。


 グリフォンは何か心が、体が奮い立つようなものを欲しがっていた。


「シャル、バフだ」


 声を掛けるとシャルは一瞬(え?)という顔をしたが、曲を変えた。

 景気のいい行進曲だ。[ステータス上昇]スキルが乗っている。


 グリフォンの全身に力がみなぎっているのがわかる。

 オレはテイマーの全能力を傾けて必死で心をつないで語り掛けた。


「オレについて来ればまたこの感覚を味わわせてやるぞ──」


 心が揺らいだ。

 そうだ、俺に従え──


 ──テイム!


 …………


 ……通った。


「おすわり」


 グリフォンは言葉ではなくオレの意志に従って後ろ足を畳み、地面に尻をつけた。


「ふぅー……」


 ベガじゃないが膝がガクガクしている。

 全身の力が抜けてオレは後ろにペタンと座り込んだ。


 あー……死ぬかと思った。

 見るとベガは腰を抜かしてその場にへたり込んでしまっていて、転げ落ちたシャルも一緒に転んだアイラも立てないでいた。


 シャルもこっちを見た。

 目が合うと喜びが心の底から湧いてきた。


「オレたちって最高のコンビだよな!」

「私たちって相性ピッタリだと思わない?」


 同時にそんなことを言って、オレたちは同時に笑った。

 ヤックデカルチャー

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