モンスター集め
オレは今までにテイムした同期生たちの支配を解除した。
ティナと信頼の話をした以上、テイムしたままというのは気が引けた。
ジュリと教官はそのままだけどな。
あの二人は悪い癖が出ないとはまだ言い切れない。
他はまあ、大丈夫だろう。多分。
ベルナもウィズも変わらず恋人とイチャイチャしている。
ルークのところは女の子二人の間に何となく微妙な空気が流れてるような気がしないでもないけど、とりあえずは上手くやってる。
やっぱり凄いヤツだぜ、ルーク。
「すまん、ちょっと頼みたいことがあるんだけど、いいか?」
その日の午後の実習前、オレはそのルークたちのところに行って頭を下げた。
「何だ?」
「実は──」
オレは今のところ実習の時間が全然足りてない。
このままだと卒業すら怪しい。
だからといって居残り組でパーティーを組んで森に入るというのはちょっと無理がある。
やったら初日で死にそうだ。
いや、ルークのパーティーに入れて欲しいと言ってるわけじゃないんだ。
正直ついていけないし。
これから先冒険をやっていくためにオレはオレにできること──つまりテイムモンスターが欲しかった。
だがオレ一人ではどうにもならないのも事実だ。
オレはかくかくしかじかと事情を説明してお願いした。
「それでだな、モンスターを捕まえるのを手伝ってくれないか? そっちの得には全然ならないのはわかってるんだが」
さすがに厚かましくてテイムしてる状態だと逆にお願いし辛かったんだが……。
ルークとレパードは一瞬顔を見合わせて、左右からオレの肩を叩いてきた。
「……何だ、そんなことか。もちろん手伝うとも」
「お前のためならいくらでも力を貸すぜ!」
快く引き受けてくれた。
やったぜ。
持つべきものは頼れるフレンズだな!
しばらく後、オレはルークたちのパーティーに前後左右を囲まれて森の中を歩いていた。
護送船団方式だな。
先頭を行くのはマルス、オレの前にレパードがいて左右にはウィズとリサ。
リサは召喚したよくわからんもの──羽の生えた真紅の宝石?──を森の側に飛ばしてる。
「それ、何?」
「カーバンクルって召喚獣。敵の発見と防御をしてくれるの」
「いいな、それ! オレもそういうの欲しいな」
「ふふ、あげないから」
後ろにはベルナとミュールがいてしんがりはルークだ。
全員それぞれに可能な限りの重装備で、特に頭はキッチリガードしている。
ただの迷彩服なのはオレだけだ。
ところで出発前にようやく気付いたんだが、ルークの髪は長い。マルスとレパードは短いんだが。
こいつらに限らず前衛は──女の子たちも──髪の長い子と短い子が半々だ。
髪が長いと引っかかったりして不便じゃないのかな、と思ったんだが、何でもナイト系だと髪の毛にも防御力があるそうで、伸ばしてる方が実は有利なんだそうだ。
そういえばキャロルさんも髪が長かった。
ファイターやソードマンの女の子は泣く泣く短くしている、らしい。
オレたちはとりあえずキールの泉に移動してのどを潤した。
リサが言うにはキールというのはこの泉を発見した昔の生徒の名前なんだそうだ。
そこから左側、南の方へと足を踏み入れた。
こっちは行ったことがないな。
しばらく進んだ頃のことだ。
マルスが右手をさりげなく動かして、パーティーメンバーにそれとなく注意を促した。
見ないようにしてそちらの方をチラッと見ると、オレたちと大して身長の変わらない大きな猿が五、六匹、枝の上に見え隠れしていた。
あれはキッドナッパーだ。通称クソ猿。女子供をさらって食べてしまうというとんでもないエテ公だ。
見つけ次第駆除することが推奨されている。
このパーティーは女の子が多いから寄ってきたのだろう。
リサが肘だけ曲げて小さく指さして聞いた。
「あれ、いる?」
「いや、いらない」
そう答えた瞬間マルスの投げナイフとレパードの抜き打ちの斬撃スキルと、それからウィズの遠距離攻撃スキルとリサの召喚獣が飛んでいた。
瞬く間に2匹のキッドナッパーが打ち倒されて枝から落ちた。
「ケーッ!」
「ギェェーッ!」
残りのクソ猿共はギャーギャーけたたましい声で騒ぎながら逃げて行った。
うわー、こいつら強いな! さすがトップパーティー。
これは頼もしい。安心してキャリーされていよう。
「そっち行ったぞ!」
「逃がすな!」
森の奥でオレたちは一匹の巨大な犬を取り囲んでいた。
ヘルハウンドだ。赤い目をした黒犬で大きさは仔牛ほどもある。
ヘルハウンドは五、六匹の群れをなして木の陰を隠れるように迫ってきた。
しかし[エンチャントサンダー]の乗ったマルスのナイフとウィズのスキルに蹴散らされて他は逃げてしまって、突出した一匹が取り残された。
「ガウッ! ガウッッ!!」
剣を振りかぶったレパードが前からプレッシャーを掛け、シールドスキルでガチガチに固めたルークが後ろから迫る。
大音量の咆哮をものともしない。本当に頼もしいな。オレが女なら惚れちゃうね。
追い詰められたヘルハウンドはひとところに留まって吠え続けていたが、突然足元から伸びた蔦にがんじがらめに捕らえられた。
多分リサの召喚獣だ
「捕まえろ!」
「オラァッ!」
すかさず駆け寄った男たちが寄ってたかって取り押さえる。
「今だ! やれ!」
「サンキュー! ──テイム!」
オレはわざわざ口に出して言った。
別に言わなくてもできるんだけど、ルークたちにテイムしてると教えてやろうかと思って。
「クゥーン……」
テイムが入るとヘルハウンドはにわかに大人しくなった。
序列型だな。
「おすわり」
オレの命令に従ってヘルハウンドは尻をぺたんと地面につけた。
パーティーの面々が拍手で祝福してくれた。
「おお、やったな。おめでとう」
「ありがとう。みんなのおかげだ」
「しかしこんなモンスターが本当に言うことを聞くんだな。すごいな、テイムって」
顎の下を撫でるとヘルハウンドは気持ちよさそうに目を細めた。
「よーしいい子だ。お前の名前はヘルハウンド……ヘル……ベルだ!」
名前を付けるとヘルハウンドは完全にオレのものになった。
ウンディーネのときからわかってたことだがオレはテイムした相手のジョブやスキルがわかる。
こいつは【ハーダー】というジョブだった。




