外れジョブ?
オレたちは仲良くベルナたちのところに戻った。
四人はオレたちを見ると立ち上がった。全員でこちらを見つめている。
変な空気だ、ベルナが事情を説明したのかな?
レパードはベルナの前に立った。
「ベルナ!」
「なぁに?」
「その、えーっと……デ、デートしてくれないか? その、今度の休日に……」
いや今日行けよ、ノロマか。
ベルナはいたずらっぽくほほ笑んだ。ティナと同い年とは思えない妖艶な笑みだ。
「うーん……せっかくのお誘いだし、受けるわ。どこに連れてってくれるの? 期待してるから」
「お、おう! 任せとけ!」
女子たちはベルナを囲んで校舎へと戻った。
オレはバシンとレパードの肩を叩いた。
「何ですぐ行かないんだよ」
「何したらいいかわからん」
レパードの大きな体が目いっぱい縮こまった。
やりたいことしろよ……。
しょうがないのでオレはレインとレパードと三人で町に繰り出した。デートコースの下見会だ。
「お前金ある? 今日のじゃなくてデートの」
「任せろ。実はデート資金で溜めてた」
「そこまでするなら普通に誘えよ!」
「俺と同じことすんなよ! 身につまされるだろうが!」
「すまん……」
金は持ってそうなので昼食はレインのバイト先で食べてもらうことにした。
メニューはレインにお任せだ。
商店街の中を歩いていて、オレは二人を連れて果物屋に立ち寄った。
「おばちゃん、来たよ!」
「あらいらっしゃい。今日は男の子?」
「友達。いつもの作ってよ」
「はいはい。じゃあ好きなのを選んで」
お言葉に甘えてオレは店先に積まれた果物の中から良さそうなのを見繕った。
レインとレパードが後ろからオレをつついた。
「おい、何やってんだ?」
「ここは果物をその場でジュースにしてくれるサービスをやってるんだ。おばちゃん、オレは今日はこれとこれ!」
「まいどあり」
果物を渡すと店のおばちゃんはジューサーでミックスジュースを作り、スキルで冷やしてくれた。
コップの端に果物の切ったのなんか差したりして、ちょっとイイ感じだ。
「お待たせ」
「おばちゃんの店なら待つ時間も楽しみのうちだよ」
「いつも上手だねぇ」
「うん、うまい! ──な? 女子受けいいぞ?」
「な、なるほどー。お前よくこんな店知ってたな?」
「ちょっとな」
ティナと遊んでて見つけたんだ。
あちこち回って夕暮れ時、オレたちは湖畔の擁壁から湖を眺めていた。
森の彼方に沈みゆく夕日が湖面をオレンジ色に染めている。さざ波に弾かれた光がキラキラ岸辺を彩っている。
雰囲気はバッチリ、人の姿も少ないしいい感じだ。
「ここで愛を囁いてキスすれば完璧だな。練習しとくか? おいレイン、お前ちょっとベルナさん役やれよ。ほらレパード、レインの肩をつかんで、正面から向かい合って」
「おう」
「させるな!」
ついでに雨や曇りで夕日が出てなかった時のプランも練った。
ちょっと親切すぎないか、オレ。
それにしてもデートのプランまでおんぶにだっことか、仮に上手くいっても後が続かないと思うんだが。
さてその休日を越えて次の日、二人は朝からイチャイチャしていた。
上手くいったみたいだな。
……あれで上手くいくのか。多分どこに連れて行ってても上手くいってたんだろうなぁ。
「お、ウィル、おはよう!」
「素敵な朝ね」
うおっ、まぶしっ!
挨拶する二人は青春の光できらめいていた。
「お前のおかげで上手くいったよ!」
「ありがとう」
「どういたしまして」
一応はめでたしめでたし、だ。
男としては教官の方が魅力的だったかもしれないけど、教師と生徒は倫理的に駄目だもんな。向こうは遊びだったわけだし。馬鹿でもレパードの方がまだマシだ。
ちなみに教官の方はまだ教官をやっているが、先日からこっちはおとなしい。というか元気がない。
二度と生徒に手を出そうなんて考えられないように脳みそをいじって性的不能にしてやったからかな?
オレは今もほんのちょっとだけレパードとベルナの思考をコントロールしている──二人が少しだけ素直になるように。
しかし二人ともそうされていることに気づいていない。
ブラウニーの時と同じだ。多分やろうと思えば相当自由に思考を操ることができる。
テイムは事実上の洗脳スキルだ。
こんな恐ろしいジョブが何で今まで外れ扱いされてたんだろうな?
──まあ自問自答になるが答えは簡単だ。
こんなの、平均的な知能の持ち主ならもし自分の能力の正体に気づいても絶対秘密にしておくに決まっている。
……いや、違うな。
むしろ周囲の思考を操って外れジョブだと思い込ませるだろう。
だって、もしテイマーの真実が知られたら間違いなく危険視される。
抹殺されてもおかしくないくらいだ。
そりゃ手記にも書かないよな。
警戒されるよりは侮られている方がいい。




