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テイム

 休みが明けたら森の探索が解禁された。

 一応警戒のために教官たちも森に入っているから安心だ。


「でも私、また訓練……」

「残念だな……」


 オレはティナと一緒にパーティーを組もうとしたんだ。

 でもレインとアメリが怯えてしまってメンバーが集まらなかった。


「森怖い!」

「あの子も怖い!」


 おかげでオレはいつも通り待機(ギターの練習)。

 ティナもまた戦闘技術の訓練だ。この子に戦闘訓練なんて必要なのか疑問だが。


 聞いてみたらティナは人差し指の先を顎に当てながら小首をかしげた。うーん、仕草も可愛い。


「先生たちはね、私は大抵の相手はスペックでゴリ押しできるけど、それだけだともっと強い相手と出会ってしまったときに勝てないって言うの。その時のために技術が必要なんだって」

「なるほどな」

「でも、バイトしていいって言われたの! たまにだけど」

「そりゃよかった! どうして急に風向きが変わったんだ?」

「教官がこの前の戦いを見て『ちょっとくらいならいいだろ』って言ってくれたんだ。昨日さっそく面接受けてきたよ」

「どうだった?」


 ティナはにっと笑った。


「おめでとう! どこに決まったの?」


 尋ねるとティナは町の中のレストランの名前を教えてくれた。


「よかったら来てね」

「絶対行くよ。ティナは可愛いからすぐに人気になっちゃうな」

「もー、そんなことばっかり言うんだから!」


 バイトが決まってはしゃぐティナは何と言うか、メチャクチャ普通だ。

 身長は平均未満だし体型だって、まあスレンダーだが女の子だ。腕も足も細いし。


 何より中身がすっごく普通だ。

 この国で一番の都会で生まれ育って、戦闘なんて行為とは全く無縁の生活を送ってきて、戦うことも自分の【超獣】というジョブも本気で嫌がっている、どこにでもいる普通の女の子だ。強いけど。


 人懐っこくて、寂しがり屋で、例えるなら──


「ティナって動物でいうと犬っぽいよね」

「え、なに急に」

「可愛くってフレンドリーで、子犬みたいだよね。耳は猫だけど」

「えー、私って犬系彼女?」


 笑いながら耳の端を持ってピコピコたれ耳みたいに下げている。


「そうそう、ワンコワンコ。テイムできそう」

「もー、いくらなんでもできるわけないじゃん!」

「いーやできる。できるね」

「じゃあやってみてよ。もしできたら木の下に埋めてもらっても構わないよ!」

「よし、じゃあ行くぞ! テイム!」


 お互い冗談のつもりだった。オレもティナも笑っていたんだ。


 ……テイムが成功した感触があった。


 ティナの表情が消えた。いやノリでやってるんだよな? 何だか不安になってきた。


「ティナ、ジャンプして」


 ティナはその場で跳ねた。ジャンプ力すげー。


「控えめに」


 ティナは注文通りに、オレが頭の中で想像した通りの高さで飛んだ。

 オレはCカップでも揺れるんだななどとぼんやり考えていた。


「穴掘って」


 地面を指さすとティナはババババババッと犬みたいに足の間から土を掻き出した。あっという間に大穴が開いた。


「埋まって」


 ティナは穴に入って、土を戻して、本当に埋まろうとした。


「……やめろ!」


 ティナは元の位置に戻った。やはり無表情のまま。


 待ってくれ、もしかして本当にテイムできているのか?

 不安が強くなってきて落ち着かないぞ。


「名前は?」

「……ティナ」


 表情を失ったティナは無感動に答えた。


「年齢は?」

「15歳」


「風呂入ったときどこから洗う?」

「顔」


「恋人とかいたことある?」

「ない」


「……しっぽの付け根見せて」


 ティナがスカートを脱ごうとしたのでその手を押さえた。


「すまない、嘘だ。見せなくていい」


 心臓がドッドッドッと早鐘のように動悸している。

 俺はテイムを解除した。テイムが解ける感触と同時にティナはニコッと微笑んだ。


「──ほら、かかるわけないし!」

「あ、ああ」


 覚えてないのか……?

 ようやくタイトル回収……。

 うわっ…私の展開、遅すぎ…?

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