アイラ、心の叫び
アイラは昨日からウキウキしていた。
今日は久しぶりにシャルとお出かけだ。
休日のシャルはほとんど一日中楽器の練習をしているのだけど、今日は誘ってみたら一緒に行くと言ってくれたのだ。
(まず必要なものを買って……。シャルと一緒なら楽器も見たいし……。あ、お昼は何にしようかしら)
お金ならある。医者のところで治療のバイトをしているアイラの給料は大抵の学生よりも多い。
昔のことを思えば一日分のお小遣いにも足りない金額だがこの町で遊ぶには充分だろう。
朝食後、支度していたアイラはシャルの着替えた服が見慣れないものであることに気づいた。
今日のシャルは半袖のシャツに薄手のニットベストを重ねて、下はチェックのプリーツスカートだ。
チェックの色は青系統で、また首元を水色ベースの涼し気なストライプリボンが飾っている。
これまでのシャルの服と言ったらモノトーンの、ちょっとお堅い感じのものばかりだった。
シャルが着ていればそれでも似合うけれど、普通なら10歳は年上の女性が着るような服だ。
それが今日の姿はどうだろう。
学生らしい清冽な印象もあれば年相応の可愛らしさもある。
青はシャルのパーソナルカラーとしても良かったしこれからのシーズンにも対応できるだろう。
(シャルもとうとうファッションに目覚めてくれたのね!)
街の人たちにシャルの可愛さがバレてしまうわね、でも誰にもあげないけど──なんて考えながらニコニコ尋ねた。
「どうしたの? その服」
「変かしら」
「ううん、似合ってるわ。すっごく可愛い!」
「そう。ありがとう。これ、ウィルが選んでくれたの」
「……え?」
シャルが言うにはこの前の休日、コンサートの打ち上げで出かけた帰りにあのスケコマシテイマーは「服が欲しい」と言って古着屋に寄ったそうだ。
「そうしたら私に『制服しか持ってないの?』って聞くのよ。そういうわけじゃないけど似たような服ばかりって言ったら、あれこれ見立ててこれをプレゼントしてくれたの」
まんざらでもなさそうに言うシャルを目にしたアイラはその時怒りで全身が灼けつく音を聞いた。
怒りだ、嫉妬じゃない。これだけはハッキリしてる。
は?
何なのあのファッキンクソテイマーは??
女の子を自分好みにラッピングしてこの子は自分のものだと主張してるってこと???
後はプレゼント包装をほどくだけってわけ????
──絶対に許さない。訴訟も辞さない。
「シャル」
アイラはシャルににじり寄って手を取った。
「なぁに?」
「今日は私が服を選ぶから。今度からはそれを着て頂戴」
「え? ええ。でもこの服も──」
「それはいいから。私の服を着て」
「……やっぱり似合わないかしら」
「そうじゃないの! 似合ってるのはすっごく似合ってるの!」
(ただあのテイマーが選んだってことが気に入らないだけなの!)
その言葉を口に出せずに飲み込んだアイラは無言でシャルの手を引っ張って街へと繰り出した。
絶対にこれより可愛い服を選んで上書きしてやると心に誓いながら。
お労しやアイラ上




