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キャロル

 キャロルは戦闘科の生徒でジョブは【パラディン】だ。

 今日はルームメイトのティナに一緒に出掛けないかと誘われたけど丁重にお断りして、休日を一日ベースの練習に当てた。


 超インドア派のキャロルはティナのバイタリティにはついていけないというのもあったけど、少し練習しておきたかったのだ。

 親兄弟から「軍学校では娯楽が何もない」と聞いていたので一応持ってきていたのだけど……。

 部屋で弾くとティナは喜んでくれるけど、シャルの演奏を聞いた後では恥ずかしくて、今のままではとてもじゃないけど人前で弾く気にはならない。


「ただいまー」


 長い散歩から帰ってきたルームメイトは妙に浮かれた様子だった。


「おかえり。機嫌いいじゃない」

「フフーン……見て!」


 差し出されたティナの指には今朝にはなかった指輪が嵌められていた。

 桃色がかった鏡面仕上げのゴールドのリングで、小さなエメラルドが一つ彫り留めされている。

 それ自体もいい物に見えたし、何より色味が妙に似合っていた。


「わっカワイイ! どうしたのそれ」

「男の子がくれたの」


 天井のランプの光を弾いて輝く指輪をティナはご機嫌で眺めていた。


 キャロルは感嘆した。

 勇気のある男子がいたものだ。


 ティナは見た目はかわいい。

 かわいい……が、顔がかわいくても中身はモンスターよりモンスターだ。

 ティナがちょっと力加減を間違えたら人間の骨なんて簡単に折れる。首がちぎれても驚かない。


 キャロルが同室にされたのも獣人だからというだけではなく比較的防御力が高いジョブだからだ。

 それでももし『事故』が起こったら自分は死ぬだろうな、という確信があった。


(町の男の子かな)


 だって中身を知っていたらまずティナをたぶらかそうなどとはしないだろうし。

 実際ティナは戦闘科の男子たちには敬遠されていた。明らかに格上の相手は男として嫌なのだ、多分。

 それにこんな贈り物をするセンスの持ち主がここの学生の中にいるとは思えなかった。


 キャロルの想像の中のその彼は気取ったジャケパン姿でとんがり靴を履いていて、花束なんか抱えていたりした。

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