6
……次の日。
昨日の夜は、大変だった。
父と義母が仕事から帰ってきたので、俺が「よっ」と出迎えると二人に泣きながら抱きつかれてしまった。
心配されて、色々と照れ臭かったものだ。
とりあえず、いつものように女神には愚痴をぶつけておいた。
まったく。あいつのせいでどれだけの人が俺の心配をしているんだか……。
ため息を吐きながらも、俺は今日サービス開始の『リトル・ブレイブ・オンライン』を始めるためVRカプセルに入った。
……このVRマシンが発売されたのは、俺が異世界転移をするちょっと前だ。
当時は感動したものだが、長らく操作していなかったので細かいことは忘れてしまった。
説明書が脇に置かれていて、俺はさっと目を通してすべて理解する。
異世界行ってからスペックあがったからな。
「VRMMOか」
昔はそれはもう期待していた。
ただ、異世界に転移してからは……それほどの憧れはないんだよな。
でも、舞が「あとで一緒にやろうね、兄貴!」とハイテンションだったのでそれはもう全力で楽しむつもりだ。
一年間、会えなかったのだからこれからはそれはもう舞を甘やかすつもりだ。
さて、そろそろか。
本物の異世界を経験した俺が、仮想現実を評価してやるとしようか。
俺はヘッドギアを装備して、目を閉じた。
まずは新規キャラクター作成からか。
なんか、過去の俺がVRカプセルに基本データを保存しているらしい。
それを基に、俺のデータを作り出す。
……性別は、変更できないのか。それは仕方ないな。
また、現実の体から大きく変化させると、現実に戻ったときに違和感を覚えることがあるらしい。
……なるほどな。
なら、まあ、体は弄らなくていいか。次いくか。
細かい設定が色々とあるみたいだな。
気になったのは、録画に関してというのだ。
詳しく見ていくと、どうやらプレイデータを録画しておけるらしい。
声あり、声なしバージョンで、俺の一人称視点のものと、俺の背後からの三人称視点のもので自動で録画してくれるらしい。
VRマシンの容量によってはできないらしいが、俺はひとまずオンにしておいた。
何かトラブルがあったときに証拠を残せるのは強い。
俺も異世界では、女神の「なんでもしていい」を拡大解釈して色々やってきたからな。
そのたびに、女神が人間界に謝罪をしていたものだ。
実際、注意書きにも書いてある。録画オンにしておいたほうがトラブルを避けられることもあるかもしれません、と。
そうして身体データを選び終えると、俺は見知らぬ白い空間へと飛ばされた。
……フラッシュバック。
まるで女神に召喚されたときと同じような空間だったため、ちょっとムカついてくるな。
『ようこそ、「リトル・ブレイブ・オンライン」の世界へ。異邦人様』
俺の眼前には美しい見た目の神様っぽいやつがいた。
……女神みたいな案内人だな。ついつい殴りたくなってきてしまったぜ。
とりあえずは、ここで職業などを選ぶ感じか。
最初から選べる職業はあまりないようだ。
……へぇ、わざと選ばない選択肢もあるのか。
備考を読んでみると、どうやら『リトル・ブレイブ・オンライン』の世界での活動次第で、解放される職業、スキル、称号などがあるようだ。
すべての人間が、その人の個性を発揮できる世界を構築する、というのがこのゲームの制作者の考えのようで、プレイヤーによって最適解が変わるようになっているらしい。
確かに、オンラインゲームとかだとステータス振りや使用スキルなど、すべてだいたい決まっているからな。
攻略サイトを見れば、ステータスやスキルポイントの振り方は大体わかるからな。
変なステータスやスキルの振り方をすると地雷認定されて、パーティーを組みにくくなるものだ。
こういったゲームで個性を出そうとしても、結局最適解より強くなるのは難しいことが多い。
なるほどなぁ、と思う。
転職するには一定のレベルまで上げる必要があるようで、最初からその隠し要素を狙いに行くという遊び方もできるのか。
そこは、サービス開始したてから遊ぶゆえの楽しみがあるよな。
今選べるのは戦士、魔法使い、盗賊、僧侶の四つだけ。
……まさか、オンラインゲームの職業がこんな少ないわけがないだろう。
ということは、隠し職業がいくつもあるんだろう。
……うーん、狙ってみたいな。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
「面白そう」「続きが気になる」と感じましたら、『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけますと嬉しいです!
皆様の応援が作者のモチベーションとなりますので、是非協力よろしくお願いいたします!