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キンッと金属音が響き、矢を弾き落とす。
「……え!?」
弓使いの男が驚いたような声をあげている。
俺がそちらに視線を向けると、突っ込んできた男が剣をかまえる。
「よそみしてんじゃねぇぞ!」
見てなくても、分かるんだよ。
動きに無駄がありすぎて、音が聞こえる。足捌き、剣を構えたときの挙動。
……この程度、耳さえあればいくらでも対応できる。
短剣で受け流しながら,インベントリからもう一本短剣を取り出す。
近場で撃ち合ったのは数秒。男の剣を弾き飛ばし、その首を交差させた短剣で切り裂いた。
男は倒れ、体が消滅する。
俺が視線を弓使いに向けて微笑むと、
「ひ、ひぃぃぃ!」
悲鳴を上げ、背中を向けて走り出す。
逃すと思っているのか?
その背中を追いながら、俺はそのふくらはぎに短剣を投げつけた。
「ぐあ!?」
一撃で仕留めきれなかったが、男は派手に転んだ。
リアルならば、足の腱にダメージがあるだろう場所を狙ったので……まともに動くことはできないだろう。
俺は涙を流しながら震えている弓使いににこりと微笑む。
「おまえ、配信してんのか?」
「……は、はい……っ」
「おっ、それならちょっと使わせてくれ。そしたら見逃してやるからよ」
俺はそう言って弓使いの腹を踏みつけながら、ひょっとこの顔を弓使いに近づける。
なんか、めっちゃ怖がっているようでガタガタ震えている。
「ああ、どうも視聴者さん。ひょっとこ兄貴です。そのうち俺も配信するから、よろしくな。あと、キリキリマイっていうVTuberがいるんだけど、俺の妹で超絶可愛いから登録しておけよ。んじゃ、宣伝できたんで、じゃあな」
「……え? み、見逃してくれるって!」
「え? そんなこと言ったっけ? じゃあ前言撤回で!」
にこりと微笑んでから、俺はその首をはねるように短剣を振り抜いた。
よし、これで宣伝には十分だ。
俺はドロップしたアイテムとたんまり手に入ったゴールドを回収し、満足していた。
「お兄様……すごかったです……! ばーってやって、首が飛ぶところとか、興奮しました……っ」
「え? 首が飛ぶところに?」
「はい……っ! 綺麗でした!」
「……」
首が飛ぶ、といっても斬りつけた瞬間に消滅するようになっているのだが……ルルラは興奮した様子で叫んでいる。
そこで興奮するのは、危険な匂いがするが俺は触れないでおいた。
「さて……えーと、空城院? 大丈夫か?」
「……うえ? う、うん。大丈夫、だけど……」
なんだか彼女は呆けた様子でこちらを見ていた。
もしかして、ビビられてる?
「大丈夫だ。PKKはするけど、PKはしないからな。安心してくれ」
「……あっ。ありがとね……助けてくれて。友達と一緒にやってたんだけど、その……先にやられちゃって……」
「あ? 友達とやってたのか?」
「う、うん……その私たちも、VTuberで『メニーフレンド』っていう事務所に所属してて……二人で配信してたんだけど、さっきの奴らに襲われちゃって……」
なるほどなぁ。
さすがに話題のゲームだし、みんなやってるんだな。
そんでもって、配信しながらやってるもんだから、ああいう輩に狙われる、と。
「不運だったな、狙われて」
「……売名目的、だったんだと思う、かな?」
「まあ、何もなくて良かったな」
いや、何かはあったか。
お友達はやられてしまったわけで、もしかしたらドロップしたアイテムの中にあるかもしれないな。
「この中にその子の装備はあるのか? ゴールドはどんくらい取られた?」
「……え? あー、これかな?」
剣と盾が一つずつだ。まだ始めたばかりではあるが、魔物からドロップしたのかちょっといい装備ではある。
あと、ゴールドも10000ゴールドほど。恐らく、チュートリアルクリアでもらったあと、スキルブックを購入して残った分とかだろう。
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エロゲー世界のただのモブに転生した俺に、ヒロインたちが押し寄せてきます
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