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「た、助けて……っ! PKに追われてて!」
「……PK、ああ。あいつらやっぱりそうなのね」
例の初心者狩りか?
こちらの女性はもちろん、向こうの男たちも何やら配信をしているようだな。
「さあ、視聴者ども! みてくれ! ここにあのひょっとこ兄貴がいまーす!」
「これからぶちのめして、金と武器を巻き上げたいと思いますので、チャンネル登録よろしくな!」
……ほぉ、何やら調子のいいことを言っているな。
あんな生意気な奴らでも、配信とかで結構稼げるのかね?
「えーと、あんた名前は?」
俺は近くにきた女性に声をかける。
「わ、私は空城院なつみって言うんだけど……」
「死にたくなかったら、俺の後ろから出るなよ?」
「……え?」
俺はそれだけを空城院に告げ、両手に短剣を構えた。
向こうもこちらのやる気に気づいたようで、ニヤニヤと笑みを浮かべてくる。
「知ってるか? ひょっとこ兄貴。このゲームはレベル差があってもプレイングでカバーできるんだぜ?」
「オレたちは、他ゲーのVRで瞬間一位をとったこともあるプロなんでな?」
「そしてこの数の差だ。相手が、悪かったなぁ!」
三人が叫びながらこちらへ突っ込んでくる。
二人は、後方にて待機している。魔法使いと弓使いか。
三人の前衛は全員戦士か? 皆、もれなく目は赤いので、空城院以外ですでにPKしたことがあるのだろう。
PKKを行っても、特に罪にはならないらしいので……心置きなくやれるな。
つっこんできた三人に合わせ、矢が飛んでくる。
こんな攻撃、異世界で散々見てきたな。
軽く短剣で弾く……だけじゃない。その矢を打ち上げるように弾き、即座に左手の短剣で撃ち返す。
「え?」
矢は、近くに迫っていた戦士の腕に突き刺さる。
前衛二人が驚いたように目を見開いている間に、俺は持っていた短剣を【投擲】する。
「当たるかぁ!」
迫っていた男の顔を狙った俺の短剣は、かわされた。
「かわして良かったのか?」
俺が不敵に笑いながら言ってやると、遅れて彼らの背後から悲鳴が上がる。
俺の投げた短剣は、魔法を構えていた男の胸に突き刺さっていた。
男が壁になっていたのと、魔法チャージ中で油断していたのだろう。
「く、そが!」
迫ってきていた男二人が、同時に剣を振り抜いてきた。
……連携、というほどの連携じゃないな。
俺はインベントリから取り出した短剣を握りしめ、それらの攻撃を捌いていく。
「どうした! 防戦一方じゃねぇか、【スラッシュ】――」
男が放ったスキルに合わせ、俺もスキルを合わせる。
――パリィ。
「が!?」
攻撃を弾いてやった。この程度、初見でも余裕でカウンターできるな。
やはり、攻撃系のスキルは挙動がわかりやすいな。
パリィによって弾かれた男が、隙だらけとなったので仕留めようと短剣を構えると、
「こっちに、まだいるぞ!」
まだ無事な一人が背後から剣を突き出してくる。
俺はそれをギリギリまで引きつけてから、かわした。
突き出された剣を、男は慌てて止めようとしたが俺は笑顔とともにその背中を押した。
「ぐあああ!?」
結果。同士討ち。仲間の剣を胸に受け、パリィで行動不能だった男は倒れた。
「おっ、 PKKおめでとう!」
「てめ……っ!」
怒りに任せて振り抜かれた剣を、短剣の腹で撫でるように上方へ弾き、左の短剣で喉をかっさばいてやった。
【致命的な一撃】で見つけた、急所だ。一撃で仕留めると、最初に矢を受けた男が突っ込んできた。
さらに、矢を構える男がいた。家を構えている方角は、俺ではなく空城院のほうだ。
あー、対人戦が楽しくてついつい離れちゃったな。
「せめて、あいつだけでも……!」
そう言いながら、矢が放たれる。
俺はその軌道に合わせて短剣を放り投げる。
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