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 おい、クソ女神。何が、「地球にいるあなた――佐久間悠斗はそれまでの佐久間悠斗と同じように生活していますから安心してください!」だ。


 めちゃくちゃ大問題になってるじゃねぇか!

 舞を泣かしてんじゃねぇぞ!


 異世界にいたときは怒鳴ればすぐに出てきてくれたのだが、今は日本に戻ってきたからか、まるで反応がない。

 あるいはクレーム対応を拒否して、電話線でも切ったか。俺の親父の新卒の子がそんなことをして問題になったことがあると聞いたことがある。

 とにかく今は、確認とともに舞を宥めるために全力で謝罪をする。


「わ、悪かったな色々と問題かけて……ずっと部屋に引きこもっちゃっててさ」

「べ、別にいいんだよ。兄貴が引きこもっちゃったのは、あたしにも原因があるんだしさ……」


 はい、引きこもりは確定。女神への怒りがアップしましたよ。


 でも、引きこもっていたのはどうやら確定のようだが、それには舞が関わっている?

 舞が可愛すぎて家に引き篭もる選択をしてしまったのか?

 だとしたら少し納得。


 今の俺も同じ心境である。このまま、舞を抱きしめたまま一生を過ごせればどれだけ幸せなのだろうか……。


「舞は悪くないだろ? えーと……仕方ないんじゃないか?」

「……でも、あたしがあそこであいつらに絡まれなかったら……あいつらをどうにかできてたら、兄貴が引き篭もる必要もなかったし……」


 あいつらに絡まれなかったら?

 ……舞が誰かに絡まれて、それが俺の引き篭もる原因になってしまった?


「でもまあ、舞は関係ないだろ?」

「あたしが塾なんか行ってなかったら、兄貴があんな不良たちに絡まれなくて済んだでしょ? 全部、あたしが悪いんだよ……っ!」


 わーん! ともう一度泣き出してしまった舞を、俺は優しく受け止めた。



 それから、泣いてしまっていた舞を宥めつつ、俺はそれとなーく、舞から情報を引き出した。


 まとめると、俺が引きこもった理由は簡単だ。

 1、舞が通っていた塾の帰り道、不良に絡まれる。

 2、帰りが遅くなる日、俺は舞を迎えに行っていたのだが、そこで不良に絡まれている舞を助けに向かう。

 3、ボコられる。

 4、そこで色々と精神的苦痛を受けさせられ、俺引き篭もる。


 らしい。

 よく勇者補正のない体で舞を守ったな、俺と思いつつも、色々女神に不満もある。

 とにかく、そんなこんなで一年ほどがたち……舞の受験も無事終了。

 今はちょうど春休みらしい。


「まあ、もう気にしてないから。泣くなって」

「……兄貴ぃ」


 まだ舞はぐすぐすと泣いていた。

 ……ちなみに、舞がヤンキーみたいな見た目になっているのは、舐められないようにらしい。

 いや、それはそれでそういう不良みたいなやつに絡まれるのでは? とは思ったが今のところは問題ないそうだ。


 あと、舞も志望校にちゃんと合格しているらしい。今年から俺と同じ学校に通うことになっている。

 ていうか。


 おい! 女神!

 俺がそんな程度のことで引き篭もるかボケがァ!

 舞が悲しむようなことは絶対にしないってんだよ! ふざけんな! 俺の一年間をちゃんと管理しやがれ!


 舞にヨシヨシしながら、内心ブチギレておいた。

 あの女神のことだ。俺を引きこもりにしておくのが何か都合が良かったんだろう。


 確かに、丸々一年引きこもっていたのなら、学校に籍を残していれば、留年にはなるが無事日本の生活に戻せるわけではあるので……まあ、悪くないのかも?


「あっ! そういえば、兄貴! 今日『リトル・ブレイブ・オンライン』の発売日だよ!」

「……『リトル・ブレイブ・オンライン』?」

「そうだよ! ほら、VRMMOの! 忘れちゃったの!?」


 ……あー、確か俺が異世界転移させられる前にそんな話があったかもしれない。

 今となっては、リアルで異世界を体験してきたので、それほどVRMMOに興味はなかったのだが、


「あたし、配信でめっちゃやるって話してるからさ! お兄ちゃん一緒に買いに行こうよ!」

「よし行くぞ!」


 配信かぁ。そういえば、舞は中学生のときから配信活動をしていたなぁ。

 まだ困惑していることはあるけど、舞の頼みを断るわけにはいかない。

 俺は笑顔の舞とともに家を出たのだが。


「おう……久しぶりじゃねぇか」


 家を出てすぐ、俺たちの背後からそんな声が聞こえてきた。

 振り返ると、そこには明らかに不良っぽい見た目の男二名がいた。

 誰だこいつら?

 疑問に感じていると、手を握っていた舞から震えが伝わる。

 舞を震源地とした地震でなければ、彼女が恐怖によって震えているわけで……誰の舞を怯えさせてやがんだって話だ。


「あ、兄貴……こ、こいつら……兄貴をボコボコにした……」

「俺が引きこもった原因の奴らか?」

「う、うん……少年院に入ったとかって聞いてたけど……」


 舞がガタガタと震えながらそう言った。

 不良たちはニヤリと笑みを浮かべ、拳を鳴らす。


「ああ。てめぇのせいで、しばらく自由がなくってよぉ」

「ちょっと、鬱憤ばらしに付き合ってくれよ」


 ……なるほどね。

 こいつらが原因で舞は今も、怯えているんだよな。

 俺は小さく息を吐いてから、ヤンキーたちを見る。

 隙だらけすぎるな。

 こいつらが原因で俺が一年間も引きこもっていたとか聞いたらムカついてきてしまった。


 異世界で一番弱いというゴブリンのほうが、まだこいつらよりも強いだろうな。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

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[一言] 女神「引きこもりの原因をつき出すので許してください」 とかな運命を感じる
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