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転職神殿へにいくと、いつものシスターさんがいた。
「今って転職できるのか?」
「ええ。神官様はお休みなので、私が代行しますね」
「……寝なくていいのか?」
「気持ち寝ましたから大丈夫ですよ」
「気持ちってことは寝てなくない?」
「気持ちでも寝るというのは大事なことですよ。気持ちで寝たら寝たってことになるんです」
「やっぱブラック――」
「えい」
ノルマのビンタを受けたところで俺は転職を進めることに。
「転職についてですが、詳しいことは知っていますか?」
「そんなに何か特別なことあるのか? 【暗殺者】を強化してくれるんじゃないのか?」
大抵のゲームが、そんな感じではないだろうか?
例えば、【戦士】が【魔法戦士】になるみたいな?
俺が首を傾げていると、シスターはニコリと微笑む。
「その認識でしたら、少し話したほうがいいかもしれませんね。今回の転職で、ユート様は二つの選択肢があります。一つは、今の職業をさらに極めること。あるいは、別の職業になることです」
「……別の職業も選べるのか?」
「はい。どちらにしますか?」
……ふむ。
メニュー画面が出てきて、詳しい情報を見ていく。
なるほどな。別の職業を選んでも、第一職のスキルも使えるのか。
今の俺はまた色々と職業が出ているのだが、例えば【暗殺者】と【戦士】のスキルを選んだとするとこの二つのスキルが使えるようになるらしい。
自分の戦闘スタイルに合わせ、様々な強化が可能というわけだ。
こうなると、最初に無職にしておいて隠し職業を見つけていないと、最初の職業は四つのどれかに固定されてしまうのか。
でも、職業同士の組み合わせ次第で新しい職業が出現することもあるらしい。
もしかしたら、そのうち職業入れ替えとかもできるようになるかもしれないし、なんとも言えないな。
職業、どうするかな。
今後、攻略情報が出てくるとオススメの職業の組み合わせとかも出てくるのかもしれないが、その職業自体かなりの数みたいだからな……。
さらにここに汎用スキルを合わせ、汎用スキルと職業スキルを組み合わせることなどもあるんだよな……?
もう、やれることが無限にあるな。
戦士と魔法使いを習得すれば、魔法戦士、のようなこともできるわけで、これは強いかはともかくとして人気が出そうだな。やっぱどっちも使えるのは憧れるし。
ただ、俺としては……やはり【暗殺者】のスタイルが合っている。
一つを極めていこうか。それもまた、一つの選択だろう。
同じ職業を選ぶと、また別のスキルが手に入るようだし、悪くはないだろう。
「それじゃあ、【暗殺者】で頼む」
「分かりました」
シスターがそう言った次の瞬間、俺の転職が終わった。
獲得したスキルは、新たに三つか。
【偽装者】:一定時間、姿、名前を偽れる。
【暗殺の一撃】:敵に気づかれていない状態での威力アップ
【変化への耐性】:すべての状態異常への耐性が上がる。
どのスキルもいいが、パッとみた瞬間【偽装者】が一番便利そうに思えた。
ただ、どれも必殺スキル、という感じではないな。
便利そう……ではあるのだが、あまり俺自身を強化するスキルがないんだよな。
あれ? もしかして【暗殺者】ってハズレ職業?
ただ、どれも必殺の一撃ではないんだな。
まあ、【暗殺者】が派手なスキルを使っていたら、それはそれでちょっと違うという感じもするし、いっか。
「同職業を選んだボーナスとして、すべてのスキルがわずかに強化されますね」
シスターがそういった。
……へぇ、そういう効果もあるのか。
そうなると、やはり一つの職業を極めた方がいいのだろうか?
難しいな。
さらに称号も手に入った。
第二転職者(Sランク):すべてのスキルの効果があがる。
これはいいな。ただ、どれほど上がるのか分からないが、合って困るスキルじゃない。
ひとまず、新しく解放されたスキルブック三つを購入したところで、俺はクランショップへと向かった。
30レベルになったらできることは、もう一つある。
それはクランハウスの作成だ。別にクランに興味はないのだが、作っておけば何かしらの称号が手に入るかもしれないからな。
そういうわけで、再び不動産屋へ来た俺は、出迎えてくれた太った男に声をかける。
「レベルが条件を満たしたんで、クランを作りたいんだけど、いいか?」
「製作には十万ゴールドとクランハウスが必要になります。クランハウスの契約料も追加でいただきますが、よろしいですか?」
「ああ、もちろんだ。クランハウスはここで頼む」
俺は一番小さいやつをひとまず契約しておいた。小さい、といってもそこらの一軒家くらいはあるのだが。
初めはアパートタイプの一室でもいいかと思ったが、一人で騒ぐときには使いにくいと思ったからな。
こちらも、予想通り称号が手に入った。ステータスポイントがうまうまだ。
これで……予定は全部達成したな。
朝までにやりたかったことを全て終えた俺は、舞の用意してくれた朝食をいただくため、一度ログアウトしておいた。
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