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舞はそれからも楽しそうに声をあげる。
「もうほんと兄貴のおかげだよ! 斧と槍のおかげで、めっちゃ火力上がったんだよ! 兄貴さまさまだよ」
「ていうか、装備できたのか?」
「結構ステータス偏っちゃってるけどね。あたしと、レイちゃん……あっ、槍使ってる子がメイン火力って感じなんだ。でも筋力にばっかりステータスを振っちゃったせいであんまり動けないんだけどね……」
それだと、確かにナイフモンキーとは相性悪そうだな。
あいつは敏捷を活かしたタイプなので、反応が遅れたら攻撃喰らいまくるよな。
必死に斧を振っている舞の姿を想像して微笑ましい気持ちでいながら、問いかける。
「じゃあ、この後の配信で次の街を目指す感じか?」
「うーん、今日は流石にそこまでは無理かな? とりあえず皆のレベル上げていこうって感じ。あっ、そうだった。兄貴についての質問が色々あったから、聞いておこうと思ったんだ!」
「は? なんで俺の質問?」
「今のあたしたちの配信でコメント欄に兄貴の名前めっちゃ出るもん!」
「ええ……武器を納品してるからか?」
嫌われていないだろうか?
舞の配信をざっと見たときに思ったが、結構男性ファンが多そうだったからな……。
それで舞の視聴者が減ったり登録者数が減ったりなんてしたら……ああ、俺が異世界で身につけたスキルを駆使して、全力でサブ垢を大量に作って補填しなければならない……!
「そうそう。兄貴トップ攻略組だし。あとなんか村でオーク討伐の依頼とか受けた? 村の人たちめっちゃ兄貴に感謝しててあたしは誇らしかったです」
ふふん、と胸を張る舞。
ああ……ここは天国だろうか? 舞に褒められて俺は天にも昇る気持ちだった。
若干昇天しかけたが、女神と再会したくないので現世に戻ってきた。
「まあなレベル1のときに討伐したらなんか称号手に入るかもって思ってやってみたらSランク称号手に入ったぞ」
「ええ!? レベル1で!? 凄い! そうそう、あと視聴者から、配信とかしないの? ってめっちゃ聞かれたんだよ! どうですか兄貴!」
「いや、別にやるつもりはないな」
「えー。今うちの事務所、男性ライバーの一期生を募集中だし、どう? 応募しない? あたしもみたいなー」
舞のためだけにやりたい気持ちが出てきたぞ?
いやでも、いくらトップ攻略組だからといって、新人がやってもそんなに視聴者はつかないだろう。
でも、お金が少しでも稼げるなら、舞の推し活費用を捻出できるかもしれない……。
一向の余地ありだな。
「そういえば、あの森抜けたらもう第二の街に着くの?」
「いや、山を越えていくか、ダンジョン突破のどっちかでいけるな」
「ダンジョン、あるんだ……脳内メモメモ」
「ちなみにそのダンジョンで槍の武器がドロップするんだよ」
「そうなんだ……そこで手に入る武器を二刀流してたら、そりゃあ強いよね」
「まあな。俺はこの後新しい武器を求めて旅立つんだが、あとの人たちは何の武器使ってるんだ? 拾えたらまた納品するぞ?」
「えーと、ホムラちゃんが刀で、セイナちゃんが杖だよ!」
「ほぉ、了解。見つけたら送っておくわ」
「ありがとね! 攻略組、頑張ります!」
敬礼する舞がとても可愛い。
俺はこの可愛い舞を甘やかすために魔王を倒した……。
ああ、これからもたくさん貢いでお礼を言われよう……。
俺がそう心に決意をしていると、舞も拳を固めている。
「あたしたちのとりあえずの目標は、兄貴に追いつくことだからね!」
「じゃあ、俺は追い付かれないようにしないとか?」
「ふふん、勝負だよ!」
……いや、舞には追いつかれたい気持ちはあるのだが、彼女らの目標として常に先にいたほうがいい気持ちもあるんだよな。
やる気満々の舞だが、俺はおそらく絶対に負けることはないだろう。
だって俺、睡眠取らなくてもいいんだもん。
……別に寝なくてもいいんだよな。
異世界転移してからの俺の体は不眠不休で活動できるようになっており、それは今も続いている。
もちろん、眠ってもいいのだが、眠らなくても魔法を使えば体を元気な状態にリセットできる。
あの女神のせいで、かなり人間離れさせられているが、まあ便利ではある。
別に普通に寝ることもできるわけだしな。
とりあえず、今夜のうちにやらなければならないことがあるため、色々と行動しておかないとな。
夕食を食べ、夜やるべきことを大体終えた俺は再び『リトル・ブレイブ・オンライン』の世界へとログインした。
……こっちの世界も夜になっているんだな。
掲示板とかを見てみると、どうやら夜で出現する魔物が変わるエリアもあるようだ。
……盗賊ゴブリンは大丈夫かな? いなかったら、武器の新調ができないんだよな。
さて、ここからやることは二つだ。
まず、俺の武器の新調。
そして、金策だ。
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