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「わかった。街でやることが済んだら行ってみるよ」
「お願いします! ありがとうございます!」
こう、快く応援されるとこちらとしても頑張りたい気持ちになるな。
異世界で勇者として活動していたときは、俺が助けても、「勇者らしくない」とかぶつぶつ文句を言われたからな。
現地人に、俺は恐らくたいそう嫌われていたことだろう。女神は俺が何かしら達成すれば、文句を言いつつもお礼や感謝をしていたあたり、まだマシだったかもしれない。
でも俺と舞を引き離した罪だけで許せない存在だ。
店、魔物の情報を手に入れた俺はギルドの隣にあった転職神殿へと向かう。
……アンタレスの街と比べると何やら見慣れない石像が増えているな。
近くにいた修道服を着たシスターらしき女性に、声をかける。
「この街でなら、スキルブックが購入できるって聞いたんだけど、それってどこで買えるんだ?」
「買う、ではありません。祈りの対価として、授かるものですよ」
微笑とともにシスターは言ってきた。
笑顔の圧が凄まじい。スキルを購入、ということがかなり無礼なことなのかもしれない。
「え? じゃあタダなのか?」
「多少のお金はかかりますが、購入、ではありません」
「いや、それは買うでいいだろ?」
「何か、言いましたか?」
「いやいや、買うでしょ?」
「……えい」
「えいじゃねぇよ! いきなりビンタしてくるな!」
「神の罰が、くだりましたね」
「勝手に神の代行してんじゃねぇよ!」
まあ相手が美少女だったからまだご褒美で済ませられるものの、男だったらこの場で戦闘開始だっての。
俺は逃げるように石像へと向かう。
石像の前に立つと、メニュー画面が出てきた。
「……おお、結構スキルあるな」
……ただ、どいつもこいつも高い。
一冊10000ゴールドからだ。スキルのランクが関係しているのか、20000、30000と値段が上がっていってるな。
チュートリアルボーナスのお金ももうそんなに残ってない。
魔石を売ったお金だけでは、なんとか一冊スキルが購入できるかという感じか。
どのスキル購入するかねぇ。できれば、【暗殺者】と相性のいいスキルがいいが。
いくつか見ていると、俺の戦闘スタイルと相性のいいスキルを見つけた。
格闘強化、投擲、パリィだ。
格闘強化があれば、今相手の動きを止めるために使っている足払いとか目つぶしとか、そういった物でもダメージを与えられるよな。
投擲も同じだ。今は短剣を投げて中距離の相手に当てているのだが、それもダメージ量が上がれば使い勝手があがる。
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パリィは別にスキルがなくても使えているのだが、スキルとして使えば確実に相手の動きを止められるようだ。
うーん、ただこいつらどいつも20000ゴールドだからなぁ。
一個買ったらお金がなくなる。そもそも、もっと上の値段のスキルには、筋力を強化する……みたいな汎用的に使い勝手の良さそうなスキルもあるしなぁ。
まあ、そのうちゴールドはいくらでも稼げるか。
この中でもっともよく使うのは格闘なので、俺は格闘強化を購入した。
これで多少は俺の格闘ダメージも増え、魔物を狩りやすくなるはずだ。
スキルブックに関してはひとまず金を作らないことには始まらないとわかったので、今後は金策を頑張っていかないとな。
最後に、俺はクラン不動産へと足を運ぶ。
ここで、異邦人たち用のクランハウスが売られているらしい。
中に入ると、恰幅の良い商人らしき男が笑顔と共に頭を下げてきた。
「いらっしゃいませー!」
「ここでクラン関連の受付をしているんだよな? 色々話を聞きたいんだけどいいか?」
「ええ、いいですよ。まず、クランを作るにはレベル30以上の方がリーダーになる必要がありますね。それと、クランハウスです」
「……30以上か」
クランハウスはともかく、そっちはレベル上げをしないことにはどうしようもないな。
「他の条件はあるのか?」
「最初の設立時には十万ゴールドが必要になりますが、それくらいですかね」
「……なるほどな。クランハウスってちなみにいくらくらいなんだ?」
「あっ、見ていきますか? クランハウス、という名称ですがパーティー単位での契約でも構いませんからね」
ニコニコと彼がカタログを渡してきて、俺はそれを確認していく。
詳細情報はカタログの家を確認すると、内部の情報までも事細かくみることができた。
……凄いな。二階建ての普通の家で、だいたい週20000ゴールドくらいでの契約か。
月だと70000ゴールドと少しお得になるのか。
これって……色々な使い方ができるよな?
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