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銀剣のルフィナⅠ

 特異点とは、異なる力を操る者に与えられるこの世界の異端だ。


 何が切っ掛けで誰に目覚めるかは分からず、世界を管理する者はその予兆を予期することしか出来ない。


 ルフィナという少女も、特異点と呼ばれる者の一人だ。


 もう一人の特異点である母親のルセナと共に特異点による異なる力に目覚め、その力を暴走させることとなったが一人の冒険者と、一匹の金色の鳥によってその暴走は抑えられる結果となった。


 本来なら暴走を起こした時点での処遇は排除が妥当だと管理者によって決められていたが、その冒険者によって処遇は保留とし、金色の鳥の預かりとなった。


 銀色の髪、少し痩せた細い身体がルフィナの容姿である。


 互いに木剣を構え、ルフィナと相対する蒼い髪の男はルフィナに対していつも厳しい。


「間合いだ」


 蒼い髪の男が蹴り上げた足元の砂を全身に被り、ルフィナは目を瞑ってしまった。


 ルフィナの頭を撫でるように触る木剣の感覚、ルフィナが目を開けると蒼い髪の男はルフィナに致命の一撃を放てる位置に立っていた。


「砂が目に」


 そう言ったルフィナに対して蒼い髪の男は木剣を引き、呆れながら溜め息を吐いた。


「相手は待たない、殺す気でくるだろうし、殺されればそれまでだ。身体を抑え込まれればルフィナに自由はない、慰みものになるだけだ」


「わかってる」


 ルフィナはそう言って距離をとって木剣を構え直した。


「食事の準備が出来ました」


 母親のルセナが二人に声を掛けた。蒼い髪の男がルセナに対して応答していると、ルフィナはその隙を狙って蒼い髪の男に木剣を横凪ぎに振る。


 蒼い髪の男はその横凪ぎを見ずに受け、更に上段から仕掛けるルフィナの木剣を受けていく。


 打ち込みの緩い箇所を見つけた蒼い髪の男がルフィナの木剣を絡め取り、そのまま致命の一撃を寸止めする。


「攻撃が連続するとそれだけ隙が生じる」


 そう言った蒼い髪の男がルフィナの頭をわしゃわしゃと撫でる。


「食事にしよう」


 蒼い髪の男がルフィナに背を向けて歩いていく。


 ルフィナは撫でられた頭を押さえて恥ずかしそうに赤面している。これは好意ではなく、頭を撫でられた経験があまりないために慣れていないためだ。


 ルセナとルフィナはこの世界とは異なる世界で言わば奴隷のような存在だった。


 母親のルセナは王族の奴隷であったために王族の子を孕みルフィナを産んだ。


 奴隷の身でありながら王の側仕えをしていたが、王は何者かに殺害されてしまう。


 それを見ていたのは宰相とルセナのみだったために、宰相はルセナを口封じのために殺さなければならなくなった。


 母親がいなくなれば悲しかろうと不憫に思った宰相はルセナとルフィナ、親子共々を死地に送った。


 その死地にてルセナとルフィナは特異点と呼ばれるとなり、異能に目覚めてしまった。


 というのが、二人がこの世界に来訪することとなった理由である。


 母ルセナの特異の力は【創造】、在りもしない存在を創り上げることが出来る。


 娘ルフィナの特異の力は【増幅】、あらゆる事象を増大させることが出来る。


 この能力は世界の管理者によって厳しく管理されているために使用する場合は相応の代償が発生する可能性がある。


 容易に使えないが、暴走させないために訓練は行わなければならない。


 蒼い髪の男、母ルセナ、娘ルフィナ、三人で食卓につく。三人の関係は蒼い髪の男が雇い主で、母ルセナが住み込みの使用人、そして娘ルフィナは蒼い髪の男に剣を教わる弟子だ。


 蒼い髪の男の家族である赤い髪の姉妹は外出していて、しばらく帰ってきていない。


 妹の方はいつの間にか居なくなっていて、数日おきに帰ってきている。


 姉の方は喋る鳥と旅に出たまま帰らない、もう三年になるだろうか。


 その間、ルフィナは蒼い髪の男に剣の扱い方を習っている。


 強くなるためである。


 蒼い髪の男は時折、装備を整えて二、三日外出をする。


 その間はルフィナにとって退屈な時間だ、蒼い髪の男に着いていきたいと言っても母ルセナがそれを許してはくれない。


 ルフィナの剣技はそれなりに使えるようになったが、蒼い髪の男には遠く及ばない。


「2、3日したら帰るよ、留守を頼む」


「分かりました」


 そういった蒼い髪の男とルセナのやり取りをルフィナは何度も見ている。


 まるで夫婦のやり取り、母は蒼い髪の男とこのまま結婚してしまうのではないかと思うくらいに仲が良い。


 滅私、それがルセナという女性の長所であり、短所でもある。


 言い換えれば自分がそこにはない、自由がどこにもなく、ただ仕えて自分自身を殺すことだけだ。それは仕事としての在り方としては間違いではない。


 母ルセナも、娘のルフィナも今や他世界の漂流者、奴隷の民であった過去はもうない。


 奴隷ではないのだ、母ルセナは身に沁みついた奴隷から抜け出せそうにないが、娘のルフィナは違う。


 もっと外に出たい、遊びたい、色んな所に行きたい、色んな人と話したい。


 そんな風に考えると母ルセナと自分をこの世界に連れてきたエイリーという鳥と、リックという女性を思い出す。


「私もいつかあんな風に旅が出来たらなぁ」


 そんな風に考えていたところで蒼い髪の男の背中が目に入る。


「ついて行ってもいいかなぁ、お母さんに怒られないかなぁ」


 怒られるだろう、だがルフィナも14歳の少女だ。自分が子供だとは思わない、それに蒼い髪の男について行けば危険は少ないだろう。


 ルフィナは母親のルセナに簡単な書置きを残した。


『シックさんについて行ってきます、ルフィナ』


 それだけの書置きを残してルフィナは家の裏口から愛用の木剣を抱えて出て行った、走ればすぐに蒼い髪の男に追いつく距離だろう。


 切り倒された木々の道を真っ直ぐ行けば王都への道に出る。それまでは木の影に隠れて蒼い髪の男を追えば簡単に追える。簡単だ。


 ルフィナにもそう思っていた瞬間はあった、ただの一瞬だけだ。


 蒼い髪の男は木々に囲まれた道を真っ直ぐ歩いていただけだったが、ルフィナが瞬きした瞬間に姿を消した。


 すぐに駆け寄って周囲を見渡したが、ルフィナの目では蒼い髪の男を捉えきれない。


「ルセナさんを置いてきたのか」


 声を掛けられてルフィナはびっくりしてその場で倒れてしまった。


「あ、あの、私も」


「ダメだ、帰りなさい」


 そう言った蒼い髪の男が驚いて倒れたルフィナに手を差し伸べる。


 尾行にいつ気付かれたのだろうか、ルフィナは森の歩き方を知らない。自分自身が踏んだ枯れ木の枝や足音や動物が逃げる音、鳥の鳴き声、そして風向きが蒼い髪の男に報せてくれたのだ。


「家に居ても退屈で、私も役立つと思うの」


 蒼い髪の男がルフィナを立ち上がらせ、困ったような顔をして溜息を吐く。


「俺がやってるのはギルドや王国からの依頼で対象の暗殺を請け負っているに過ぎない、言わばただの殺しだ。正直、ルフィナに殺しの手伝いが出来るとは思えない」


 言い聞かされてルフィナはしゅんとしている。


 蒼い髪の男としてはこのままルフィナに家にお帰り願いたいところだが、これまで母の言いつけを必ず守ってきたルフィナがそれを破って家から離れることを選んだというのは反抗期、つまり成長期であると言うことだ。


 もちろんリックにも同様の反抗期なるものがあった、それが蒼い髪の男を探す旅、それ自体だ。


 さて、どうしたものかと蒼い髪の男は後ろ髪を掻く、いまここで連れ帰ればルフィナが外に出る機会もなくなるだろうからだ。


 まあ、いいかと蒼い髪の男は溜息を吐いた。それにびくついたルフィナに言う。


「今回は連れて行く、ルセナさんには手紙を出しておけばいいか、とりあえず来い」


「本当に!?ありがとう師匠!」


 師匠という言葉を蒼い髪の男はルフィナからたった今初めて聞いた。やれやれとルフィナの持っている木剣を見やる。


「木剣じゃ少し見てくれが悪い、か。荒くれ共に舐められるのも困る」


 そう言った蒼い髪の男は右手を空間に突っ込んでガサゴソと空間内を探す。


 違う世界の人物の傀儡だった冒険者が行える特権のようなもの、アイテムリュックだ。それを持たないルフィナにとっては蒼い髪の男が何を行っているのか分からない。


 蒼い髪の男がアイテムリュックから取り出したのは黒革の鞘と銀の剣。


「んー、これでいいか、剣士だしなぁ」


 そう言って蒼い髪の男はルフィナに銀の剣を手渡した。


「これは?」


「木剣だと王都で馬鹿にされて変なのに絡まれそうだからな、お守りだ。代わりにその木剣は預かっておく」


 ルフィナはそう言われて自分の手に持っていた木剣を蒼い髪の男に手渡し、代わりに重量のある銀剣を受け取る。


「ちょっと重いかもしれないけど慣れとけ、手に馴染むようであればあげるから使いこなしてみるといい」


 そう言った蒼い髪の男がルフィナに黒革の鞘と銀剣を装備させる。


 少し重量感があるが、なんか良い。


 ルフィナが銀の剣を抜いたり、納めたりしてその銀の輝きを見ている。


「振り回すなよ、誰かに怪我をさせたら返してもらうからな」


 そう言った蒼い髪の男の言葉を聞いて、黒革の鞘に納まった銀剣を抱きしめるルフィナ。


「身を守る時にだけ抜いていい」


 蒼い髪の男はそう言って歩き出すが、ルフィナは剣に見惚れて歩こうとしない。


 立ち止まった蒼い髪の男がルフィナに言う。


「いくぞ、ルフィナ」


「は、はい!」


 ルフィナは嬉しそうに蒼い髪の男の後ろに駆け寄った。


 蒼い髪の男は王都へとルフィナを連れ、王城へと入り、そうして自室でルフィナを待たせて手紙を母親のルセナ宛に書く。本日中に届くだろう、内容はルフィナを連れて行くことと急に決めた事による謝罪だ。


 そうして手紙を王兵に賃金と共に託し、自分宛ての手紙を4通受け取って、それらを読み込む。


 内容を確認して燃やし、ルフィナを連れて王城にある自室から出て行った。


 彼の仕事は王国特務暗殺部隊の傭兵だ、いわゆる王国からの依頼を受けて単独で動く暗殺者。


 14歳の少女という未熟な剣士を連れながらこなせるような楽な仕事はない。


 しかし、四件中三件の依頼は魔物の暗殺だ。魔物相手であるならば蒼い髪の男であってもルフィナを連れて行動できる。


 一件目は、王都古代地下水路に出没している大きな蟲の駆除だ。


 王都古代の地下水路は外から自由に行き来できるが、まず人間が立ち入ることはない。人の大きさの蟲が闊歩し、それらが素早く動き、人間をも捕食する。


 魔物は殺せばその場から消えるが、人間の遺品などはその場に残る。


 行方不明となった人間の捜索も兼ねた、ただひたすらに殺すだけの仕事だ。


「うわぁ、こんなとこ本当に入るんですか?」


「ああ、入り口で待っていてくれてもいいが」


 蒼い髪の男がそう言ったが、ルフィナは貰った銀剣を構えてやる気ではある。


 カタールを装備した蒼い髪の男が王都地下の古代地下水路の崩れた入り口から瓦礫の山を踏み越えて入る。一つの水路はそこまで広くはない、人が二人ほど並んで通れるような路だ。


 猫ほどの大きなネズミもいる、そんなネズミに対して蒼い髪の男はクナイを投げて一撃で殺していく、ただひたすら殺すだけだ。


 死骸は霞へと消えていく、この世界の死は生命活動の停止後からすぐに霧へと変わる。冒険者も例外ではないが、元々のこの世界の住人の死体は消えない。


 人の子供ほどの大きさの蟲をルフィナと蒼い髪の男が視認すると、それが最初は一匹だったものが二匹、三匹、四匹と増えていく。


「し、師匠」


 ルフィナもさすがに危険を察したのか、黒革の鞘から銀剣を抜く。


「向かって来るなら殺せ、頭を潰せばいい」


 蒼い髪の男がルフィナを一瞥して、蟲の群れの中へと走り出した。


 クナイを投げ、一匹を殺した瞬間に蟲がわらわらと蒼い髪の男へと向かっていく。


 それを左手のカタールの突き出しと、右手のカタールの突き出しを交互に振って一撃で頭ごと切り潰していく。


「【波動剣】」


 更には固有の能力で波動の刃を生み出し、一つの所作が連なる波動の刃へと変化する。


 ルフィナに向かって来る蟲はその波動の刃で悉く切り裂いていくが、討ち漏らした小さい蟲がルフィナに向かって飛んで来る。


 ぎゃーとは言いたいがルフィナも元々は奴隷の民の子、見知らぬ世界の蟲程度に気後れすることはない。


 冷静に銀剣を急所に向かって振るい、蒼い髪の男に習った剣術を確かめながら斬り払っていく。


 蒼い髪の男の周囲には最早、大型の蟲はいないがルフィナの周囲には小さい蟲がどんどん向かって来る。


 波動剣の構えを蒼い髪の男がとってそれらを駆逐しようとするが、ルフィナは小型の蟲に対して剣術を駆使して斬り伏せていく、その表情は嬉々としていて悪くはなさそうだ。


 蒼い髪の男が周囲を見渡しているのをルフィナが見つけて、蟲を斬り払いながら言う。


「し、師匠、助けてください師匠」


「喋る元気があるなら大丈夫だ」


 そう言った蒼い髪の男の目の前に一際大きな蟲が現れる、もはや車ほどの大きさだ。


 これほどまでに大きく育った蟲を蒼い髪の男は観たことがない、大したものだと感心している。


 小型の蟲を全て斬り払ったルフィナが超大型の蟲を見て大きく口を開けている。


 蟲を相当な数切り伏せたはずだが、ルフィナは息を切らしてはいない、基礎は十分の様だ。


 蒼い髪の男は後ろにいるルフィナのために超大型蟲の突進に対して、自分の仕事をするかと右手のカタールを突き出して波動剣を穿ち抜く。


 超大型の蟲の全身を波動の剣が駆け巡り、切断した全てを霧に変え、突進を止めた超大型の蟲を霧に変えた。


 周囲を見渡し、蟲に食われた人間の残骸を蒼い髪の男は回収する。


 ボロボロの衣服に、くまのぬいぐるみ、木彫りの玩具、そして指輪に動きを止める。


「終わりましたね、師匠」


 そう言ってルフィナが銀剣を振って汚れを飛ばし、黒革の鞘に納めた。


 蒼い髪の男はカタールの装備を解除し、アイテムリュック内にカタールを納めて指輪を拾って丁寧に布袋の中に仕舞う。


「何ですか、それ」


「とある領主の指輪だ。まあ、王国内の揉め事だな、最後に片付けようと思った仕事だったが・・・・・」


 ルフィナは分からない顔をしている。蒼い髪の男はそんなルフィナの顔を見て少し悩みながらも言う。


「王国領は国王によって管理されているが、周辺の領地は王国に連なる領主が支配している。領主というのは土地を持つ貴族や王族のことを差す、ここまでは分かるか」


 頷くルフィナ、蒼い髪の男はそれを見て頷き、そうして続ける。


「貴族はそれぞれ領地を持っているが、王国ほどの武力は持たない。そこで貴族は血の繋がりを求めて親族を王都の貴族学校に通わせるが、ここでこのような問題が起きる」


 蒼い髪の男が亡くなった人間の衣類などを指差し、そうして持っていた布袋から指輪を取り出してルフィナに見せた。


「これは王国から領地を預かる貴族の指輪だな、おそらくは行方不明になっている女性のものだろう。魔物から食われれば遺品は残っても死体は残らない、雑な殺し方だ。外から来た冒険者ならば霧に還るが、この世界の住人は消えることがないからな」


 蒼い髪の男が指輪を大事そうに布袋に入れ、そうしてアイテムリュックの中に仕舞い込む。


「それで、私はどうすればいいの?」


 ルフィナがそう聞くと、蒼い髪の男は言う。


「そうだな、人を殺したことがないルフィナにはこの仕事は荷が重いだろうからな」


「お留守番は嫌」


 そう言ったルフィナの目が輝いている。


 やれやれと蒼い髪の男は頭を抱え、そうして溜息を吐いた。


 王都地下にある古代地下水路から出て、蒼い髪の男はルフィナを連れて再び王城に報告へと戻る。


 ルフィナを自室で待たせて、蒼い髪の男は隣の別室で報告をする。


 貴族夫婦のぶつけようのない怒りとすすり泣く声がルフィナの耳に届く。


 報告を終えた蒼い髪の男が戻ると、ルフィナが何とも言えないような顔をしている。蒼い髪の男はそのルフィナの顔を見て溜息を吐き、わしゃわしゃとルフィナの頭を撫でた。


「で、どうするの?」


 ルフィナがそう言って青い髪の男の顔を見上げると、蒼い髪の男は頭を掻いて悩みながら言う。


「そうだな、古代地下水路に出入りしている組織の目撃はあるが探ってみないと分からない。夜になったら動く」


 それを聞いてルフィナは頷き、装備を外して座っていたソファに横になる。


 そのまますぐに目を瞑ると、それを見ていた蒼い髪の男がルフィナに毛布を掛けた。


 最近のルフィナの寝つきは良く、すぐに眠れるようになった。もはや特技である。


 蒼い髪の男は眠るルフィナに対して、一つの懸念をしなければならない。


 ルフィナを特異点たらしめる力である【増幅】が暴走しないかどうか、という点だ。


 特異の力はこの世界の力を扱うのではなく、別世界から特異点となる対象に注ぎ込まれる“何か”を扱える能力だ。


 故に、暴走すればこの世界を簡単に壊してしまうことも出来る。


 母親のルセナの【創造】、娘ルフィナの【増幅】という、親子二人を抱えているという事の重大さはこの世界に住む住人抱える問題の比ではない。


 暴走させてしまえば親子の命に関わる事態になる。何しろ世界の管理者の監視付きだ。


 この世界には管理者が居て、創造と破壊、秩序と混沌、この世界の安寧のためにそれらを管理して維持している。


 エラーがあれば削除されることもある。削除とは言っても自らが動くかエイリーのような利用価値のある特異点をぶつけるかだ。利用価値があれば特異点だとしても保留されることがある。


 蒼い髪の男はしばらく休息をとることにした。


 黒化病という病を自身の娘であるリックと、黄金の鳥エイリーの活躍によって治すことの出来た蒼い髪の男の身体は代償として老いるようになった。


 体力も日に日に落ちて、三日三晩回復薬で誤魔化して身体を動かせる体力は今はもうない。


 歳の頃でいうと40代後半か、50代だろうか、これが自然なのだろう。


 対して弟子のエウリュアレ、娘のリックはエイリーの時空間転移暴走の影響を受けて年齢がある一定以上から進まないようになっている。


 蒼い髪の男は元々この世界の住人ではない、作られた空っぽの存在を扱う持ち主がいなくなっただけのただの抜け殻だ。


 対してエウリュアレやリック、エイリーはこの世界の住人だ。


 外から来た冒険者は老いてこの世界から消えていくことが正しい、とも考える。


 少なくとも残り20年猶予ある、エウリュアレやリックにとっては余りある時間だろう。


 時間を見計らって蒼い髪の男が目を覚ます、闇夜も月明りが僅かに窓から漏れているが程良い闇だろう。


 蒼い髪の男が装備を整えて部屋から出ると、隣室のソファーで眠っていたルフィナが装備を整えていた。


「師匠」


 ルフィナの服装は銀剣に白いシャツとスカートに二―ソックスにシューズと闇夜でも目立つ、蒼い髪の男は自分の持っていた大きな黒いフード付きのマントを持ってきてルフィナにそれを渡した。


 ルフィナが黙ってそれを着ると服装は完全に見えない、すっぽりと黒いマントに覆われた。


「ここからは襲撃と奇襲の連続だ、遅れをとることはないだろうが・・・・・・」


「大丈夫、出来る」


 自信満々に笑顔を向けるルフィナ、怪しいがルフィナ自身が死なない程度には剣を教えたつもりだ。剣の腕は娘のリックと同様に問題はない。


「よし、行くぞ」


 闇夜の中に溶け込むように二人は王都城下の裏街へと足を運ぶ。裏街は王都城下街と比べて貧民が多く生活しており、その貧民を囲うように組織が自警団を組んでいる。


 王国は自警団の創設を許可していないが、目に見えるカタチで問題も起きていないので放置されてきた。


 今回はその自警団が領主の娘を拉致して殺害と隠滅を行ったとし、蒼い髪の男が王命を受けて動く運びとなった。


 内容は自警団の壊滅と、首謀者の捕縛。


 蒼い髪の男にとってそれは単独で容易に行える任務だ。


 裏街に一際大きな建物と敷地を持つ場所がある。その場所から王都地下水路への道へ出入りできるが、周囲は自警団によって取り囲まれ厳重に守られているように見える。


「この敷地内で向かって来る人間は斬っていい」


 蒼い髪の男がルフィナにそう言うと、ルフィナは狼狽えて言う。


「え、でも敵かどうか分からないんじゃ・・・・」


「斬れなければ引き返して王城で待っていろ」


 それを聞いたルフィナは思考を巡らせ、息を呑んだ。


 ルフィナの様子を見て、蒼い髪の男は右手のカタールの調子を確かめるようにカチャリと刃を重ねてルフィナと目を合わせて言う。


「俺はお前が死ななければそれでいい、生きてルセナさんと共に暮らせるだけでいい。ここで引き返しても何の問題もない」


「ううぅ・・・・・」


 蒼い髪の男にとっては稼業であるこの仕事は怨嗟が付き纏う。


 ルフィナがこの稼業を背負う必要はない、娘のリックには暗殺職の適性があったがルフィナには殺しの才能はない。


 救いがあるとしたら剣を扱う才は友人である冒険者のレイラの技量と遜色ない、経験値の差はあるだろうがいずれレイラに師事して貰う機会を模索するつもりだ。


「ここから先は好きに動いていい、先に帰るのもついてくるのも自由だ」


「・・・・・わかりました」


 ルフィナの物怖じする顔を見やって、蒼い髪の男は頷いて言う。


「じゃあ俺は行く」


 月夜で照らされた蒼い髪の男の身体がその場で煙のように消えてなくなり、敷地の壁を蹴った瞬間には壁上へと登っており、そのまま壁の向こうへ姿を消した。


 剣士である以上、ルフィナに蒼い髪の男の動きは真似できないが、どうにかついていける程度だろう。


 最早、その背中も見えなくなってしまえばルフィナには追えない。


 ルフィナが頭いっぱいに逡巡していると、蒼い髪の男の背中を見失ったことにようやく気付いて動き出す。


 リックやエウリュアレ、蒼い髪の男に聞けばこの世界でも人間は変わらず悪心を抱く人間もいるという、ルフィナにとっては残念なことではある。


 そういう人間は必ず斬るとルフィナも心に決めている。


 飛び出したルフィナが壁を蹴り上がり、壁上から敷地内と建物を見下ろすと既に蒼い髪の男の姿は見えなかった。


 月に照らされ、闇の中で毒に苦しみ悶えて死に絶えていく私設兵の姿を見つけるも蒼い髪の男の姿はなく、ばたばたと切り伏せられていくだけだ。


 波動剣を使っていないところを見るに、使うまでもない相手というわけだ。


 壁上のルフィナの目が届く範囲の人間が地に伏し、それを見届けてしまったルフィナが我に返って敷地内に飛び降りた時には既に蒼い髪の男は屋敷内に潜入した後だった。


 完全に出遅れたルフィナは気合いを入れ直して、蒼い髪の男の背を追って走り出した。


 そのルフィナに対して追随する一筋の光がルフィナの背を切り裂こうとした瞬間、ルフィナはその光に対して銀の剣を抜いた。


 パキィッン!と銀の剣と何かがぶつかり合って火花が散る。


「へえ」


 女がルフィナの対応を見て感心している。


 女の剣に対して、ルフィナの銀剣が離合の瞬間に一つ、二つ、三つと打ち合って火花を鳴らした。


 ルフィナは距離をとって銀剣を静かに構えた。


「お前、冒険者か?」


 女がルフィナに対してそう問うたが、ルフィナは答えられずに黙るだけだ。


「ふーん、なるほどこれは拾い物か」


 そう言った女は目の前のルフィナに対して剣を構える。


 ルフィナは喋る余裕がない、剣の技量も強さも遥かに目の前の女が上だ。


 小手調べをするように女は手に持つ剣をぷらぷらと振りながらルフィナに対して斬擊を打ち込んだ。


 ルフィナはそれを銀剣で弾き、さらに女から距離をとって後ろに下がる。


「距離を取る、か。誰がそんな弱腰戦法を教えた?」


 女がルフィナにそう問うが、ルフィナは対応に精一杯で言葉を返せない。


「答えねぇなら殺すだけだ!」


 殺意が垣間見えた瞬間、ルフィナと女の間に蒼い髪の男が立った。


 女がそれに気付いて持っている剣を構え直し、蒼い髪の男に言う。


「お前は・・・・!」


「堕ちたなリズ、小遣い稼ぎで雇われたか」


 蒼い髪の男がそう告げると、女は嬉しそうに蒼い髪の男に剣で切り付ける。


 その剣を蒼い髪の男はカタールで弾く、それを二度、三度と斬り合って火花を散らす。


「雑魚が!」


 そう言った女に剣で圧倒され、蒼い髪の男は後ろに下がって女から距離を取った。


 ルフィナは剣を構えてその様子を観ている。


 女が剣先をルフィナに向けて蒼い髪の男に言う。


「シック、お前には荷が重いんじゃねーか?」


「さて、どうだろうな」


 蒼い髪の男が両手のカタールに波動の力を込める。


 分が悪い相手だな、と言い蒼い髪の男は両手のカタールの掌を上に指先を開く。


「【波動剣】」


 ルフィナが知っている蒼い髪の男が繰り出す波動の剣は重なっても四擊の折り合う波動しか知らない。


 しかし、蒼い髪の男が見せたその波動剣は全くの別物。


 両手のカタールの指先の刃から溢れ出す波動の剣は微細に細かく斬擊を刻んでいる。


 蒼い髪の男にとってその技は隠していた奥義、仲間にも見せない秘中の秘だ。


 リズと呼ばれた女がその波動の剣を垣間見て、蒼い髪の男から距離を取った。


「【堕天血(ブラッドフォールン)】」


 そう言ったリズの手にある剣から血のようなものが滴り落ちる。


 血のようなものが地面に触れた瞬間に爆ぜて赤い炎を生み出し続けている。


 蒼い髪の男が放つ波動の剣と、リゼが斬擊と共に放つ血飛沫が互いにぶつかり合い、その場で敷地と建物を吹き飛ばす威力の大きな爆発が起きる。


 思わぬ威力の爆発の瞬間、ルフィナは蒼い髪の男に抱えられその場から離脱する。


 蒼い髪の男の放った波動剣はその場に留まり続けて、幾重にもリズに斬擊を放ち続けるが、その度にリズの堕天血とぶつかり続けて爆発が何度も起き続ける。


 全てを焼け野原にした後、その真ん中で無傷のリズが剣を鞘に納めて溜め息を吐いている。


「くそが!」


 波動剣の真骨頂はその場に延々と波動の刃が残り続けることにある。


 そのために一度放たれれば標的に対して命中し続ける。


 カタールの刃から放たれる微細な波動剣を溢れんばかりに放出してしまえばその波動は盾、もしくは霧雲のように蒼い髪の男を見えなくしてしまう。


 更にリズの堕天血は触れれば爆破と炎上を引き起こしてしまうために更に視界を悪くする。


 そうして蒼い髪の男は左腕の欠損と引き換えにルフィナを抱えて逃げることができた。


 命からがらに王城まで辿り着き、ルフィナを抱えたまま倒れ、欠損した左腕に回復薬を振り掛ける。


 腕が生えるわけではないが、出血を抑えて体力を回復できる。しかし無くなった血は戻らない。


「強かったな、情報も一緒に消し飛んだから任務は成功とは言えないな」


「師匠・・・・腕が」


 そう言ったルフィナが蒼い髪の男の腕を見つめている。


 蒼い髪の男は鼻で笑ってルフィナに言う。


「気にするな、相手が強ければこういうこともある」


 王城前の広場の向こう側に影が見え、蒼い髪の男はその影を確認して立ち上がろうとすると、ルフィナが自分の鞘を納めるベルトを取り外して蒼い髪の男の左腕にベルトをきつく巻く。


「痛っ・・・!」


「師匠、私が出ます」 


 ルフィナが銀剣を取り出し、鞘を蒼い髪の男に渡して立ち上がる。


 ゆっくりと追いかけて来ていたリズが剣を振り回しながら近づいてくる。


 蒼い髪の男は異常を感じて近づいてくる王城の兵士達を下がらせ、代わりに助けを呼ぶようにと伝える。


 ルフィナの剣先が震えている。


 リズは容赦なくルフィナを屠るだろう、終いには蒼い髪の男に対してトドメも刺す。そういう手合いだから、としか理由がない。


 深呼吸と共にルフィナの剣先の震えが止まり、リズがそれを見てニヤつく。


「対人初心者を盾にするとは情けないねえ!」


 そう言ったリズは蒼い髪の男の顔を見やる。


「剣術ならその子はレイラにも勝る」


 蒼い髪の男の言葉を聞いてリズの顔が曇る。


 その瞬間に覚悟を決めたルフィナの剣閃がリズの反応速度を越えて頬の肉を皮一枚切り取った。


 先程の剣を交えたルフィナとは思えない速度で、リズはルフィナの二擊目に反応する。


「くっ!」


 ルフィナの剣の威力は肉を断ち骨を切るほどだが、それ以上に疾い。


 反応した二擊目に対応していると、三擊目、四擊目の連擊が同じ音として重なる。


 それにはリズも追い付けないため、後ろに下がるが追撃と猛攻が激しく七擊目には右手の指を落とされ武器を弾かれた。


 ルフィナの剣はリズの額で止まり、ルフィナはリズに対して言う。


「もうこれ以上は」


 リズはそのルフィナの剣先を見て赤面し、肩を震わせている。


 蒼い髪の男がナイフをリズに対して放つも、リズはそれを左手で受け、肩を震わせルフィナに問う。


「なんで剣を止めた……?」


「あ、あなたも命は惜しいでしょう?」


 ルフィナがそう言うと、その言葉を聞いたリズは左手に突き刺さったナイフを握り締めてそのまま破壊する。


「ちゃんちゃら甘くて反吐が出るぜ・・・この俺に情けだと!?」


「不味いな・・・・」


 蒼い髪の男がリズの様子を見てそう言い、立ち上がろうとするとその蒼い髪の男の肩にショコラが手を置き、蒼い髪の男を座らせる。


 リズの怒号がルフィナに襲い掛かると同時にルフィナがリズから距離を取ると、その瞬間にリズに対して稲妻が落ちる。


「がが・・・!」


 その一瞬、リズの動きが止まり、ショコラは杖を振るって龍を象った魔力の塊をリズにぶつけて空の彼方へとリズを吹き飛ばした。


「やれやれ、変なのに絡まれたの」


「ああ、まさかリズを雇っているとはな」


 蒼い髪の男とショコラが話している。


 ルフィナはショコラの放つ魔法を目の当たりにして目を丸くしていたが、我に返って蒼い髪の男の傍に駆け寄る。


「し、師匠」


 蒼い髪の男は欠損して無くなった左腕でルフィナの頭をぺしぺしと叩く。


「敵と定めたのなら仕留めきれる時に仕留めないと、かえって逆上させて奥の手を引き出されたらここ危なかったんだぞ」


 あうあう、とルフィナは頭を叩かれながら言い訳を言う。


「だ、だって殺してしまったら冒険者は」


「だって、じゃない。殺された娘さんの親御さんの嗚咽を忘れたのか」


「で、でも……」


 やれやれとショコラが二人の様子を見て溜め息を吐いた。


 この王城にはショコラという冒険者の宰相も居れば、王騎士であるユンもエスキも居る。


 治安を維持するためならば引退した冒険者も含めて数多く出張るだろうが、急には命のやり取りは出来ない。


 蒼い髪の男の任務は失敗、リズの介入により組織は霧散したため証拠も残らず消えた。


 治療師であるマミに怪我を診て貰ったが、回復魔法で傷は防げても左手は生えないらしい。


 エイリーのイグドラシルフィールドがなければ完全に元通りとはいかないので、蒼い髪の男はしばらく休暇を取らねばならなくなった。


 日が明けて、その足でルフィナを連れて帰路につく。


 ルフィナは説教を食らってかなり凹んでいるためか、落ち込んだまま蒼い髪の男の後ろを付いて歩いている。


 覚悟が鈍く未熟の一言だが、どうにも剣術の才はある。


 特異点の【増幅】は使われていない、使われていれば力の増幅によってリズの右手どころか身体が吹き飛んでいただろう。


 あの力は危険過ぎる。


 今回は使われなくて幸いだったが、蒼い髪の男が瀕死であるのならばおそらく躊躇なくルフィナは特異点の力を解放していたかもしれない。


 そのことを考えるとルフィナには大きく反省して大人しくしてもらわねばならない。


 そう考えた蒼い髪の男はルフィナを家に連れて帰った。


 その後、母親のルセナにルフィナはこっぴどく叱られていた。


 それから数ヵ月、ルフィナも蒼い髪の男も大人しく過ごしているとリックとエイリーがひょっこりと家に帰って来た。


「ただいまぁ、あれ?お父さんそれどうしたの?手がない!どうしよう!エイリー!」


 そう言ったリックが蒼い髪の男の左手を見て泣き叫んでいると、エイリーのイグドラシルフィールドが周囲を囲み、蒼い髪の男の左手を元通りに修復する。


「ありがとう、エイリー」


「珍しく大怪我したね、シック」


 そう言ったエイリーは蒼い髪の男から山ほどのイグドラシルの実を貰って喜んでいる。


「俺より強い冒険者が雇われていてな、この様だ」


 リックがそれを聞いて気に入らなそうに蒼い髪の男に言う。


「誰なの?その冒険者」


「ふむ」


 リックに伝えてしまえば無茶をするかもしれない、戸そう考えた蒼い髪の男は教えるかどうか悩んでいる。


「リズという冒険者でした」


 ルフィナがリックにそう伝えると、ルフィナはしょんぼりしている。


「私がついて行ったから・・・・」


 蒼い髪の男がしょんぼりしているルフィナの頭を左手で撫で、にこりと笑って言う。


「強かったな、あいつ」


 リックは蒼い髪の男とルフィナの様子を見つめて、溜息を吐いて装備している剣二本を外した。


「お父さん私、冒険者辞める」


「え!?」


 そのリックの発言に一番驚いたのはエイリーだ。


「エイリーと色んな冒険してきたけど、お父さんに怪我したりして欲しくないし、何年も離れればその分一緒に居られなくなる」


 驚愕しているエイリーとは違って、蒼い髪の男はそれを聞いて後ろ頭を掻き、納得したように頷いて言う。


「まあ、リックが辞めたいなら・・・・しかしまあ」


 言い終わりに蒼い髪の男がエイリーをちらりと見やる。


 しょんぼりしているルフィナも見やり、蒼い髪の男は一考した後に言う。


「エイリーはまだ冒険したい」


 エイリーがそれを聞いて頷く。


「リックは冒険者を引退」


 リックがそれを聞いて頷く。


「ルフィナ、お前にとってはいい話かもしれない」


「へ?」


 きょとんとしたルフィナが三者を見つめていた。


 蒼い髪の男は内心に、いつルフィナが家を飛び出すかその胸中は不安の種でもあった。


 特異点として【増幅】の異能を持っており、若く無謀で剣術の才があるルフィナは家に引きこもっているだけの人間ではない。かと言って特異点が暴走してしまえばルフィナ自身の命すらも危うい、母親のルセナも同じく【創造】の異能を持っているが自分の置かれた状況を理解していて使うことはないだろう。


 エイリーは何と言うだろうか、と蒼い髪の男がエイリーを見やると視線に気付いたエイリーは言う。


「シックがボクと別れた際には名前を一字取られたね」


「ああ、そんなこともあったな」


 蒼い髪の男とエイリーがそんな話をしてリックを見やると、リックはふふんと鼻を鳴らして得意げに言う。


「じゃあ私は・・・・Eを取ってエイリーの名前をイールにしてあげる」


 蒼い髪の男はそれを聞いて頷き、エイリーに聞く。


「だそうだ、エイリー」


「ボクは構わないよ、今日からボクの名前はイールだ」


 そう言ってエイリーは改名を受諾し、自身の新たな名前をイールとした。


 そこから三者の視線はルフィナに注がれた。


「え、えっと・・・」


 ルフィナは色々と考えを巡らせて、後はどう動いたらいいのかをほんの数秒で考えて三者に告げる。


「私!お母さんにお願いしてきます!」


 嬉しそうにその場から駆けていく姿はエイリーと旅をする前のリックそのものだ。


「・・・・後はルセナさんが何と言うかだな」


 蒼い髪の男はそう呟いて駆けていくルフィナの後ろ姿を見ていた。



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