007 月夜と書いてルナ誕生 (7)受付嬢にムカついた
ルナは、町のギルドに受付にたどりついた。
受付嬢
「いらっしゃいませ。
なにかごようですか?」
ルナ
「初めてです。
登録お願いします。」
受付嬢
「ここに手をおいてください。
はい、そうです。
過去の登録はありませんね。
地面《Ground》を意味する Gランク からのスタートです。
ギルドへの貢献度が高まれば、ランクが上がります。
あなたが現在、優れた能力があっても、飛び級はありません。
年功序列方式をギルドでは採用しています。
ご質問は?」
ルナ
「いただいた冒険者証のどこに名前を書けばいいですか?」
受付嬢
「プレートを両手で温めれば、あなたの名前が浮かび上がりますよ。」
もらったプレートに、「ルナ Luna」 という文字があらわれた。
光元国語と栄語が使用されているという話は本当だった。
ルナ
「もう1つお願いしたいことがあります。」
受付嬢
「なにでございましょうか?」
ルナ
「来る途中に、おいはぎに襲われた。」
受付嬢
「うそは困りますね。」
ルナ
「本当のことです。」
受付嬢
「おいはぎにあって、生きて帰ったものはいません。
ルナ様が生きて、ここにいるということが、おいはぎに遭っていないという動かぬ証拠です。」
ルナ
「ここに、おいはぎから奪ったプレートがある確認してくれないか?」
受付嬢
「落とし物を拾われたのですか?
確認しますね。
プレート再発行代金の10%を謝礼として、受け取れますよ。」
ルナ
「ひろったんじゃない。 戦利品だ。
戦って奪ったんだ。」
受付嬢
「くすくす、はいはい。
格好を付けなくても大丈夫ですからね。」
駄目だ。 聞く耳を持ってくれない。
馬鹿にされて、見下されているな。
受付嬢
「このプレートは、まさか、そんなことって。
12星座がそろっているなんて、ありえない。
しょ、少々お待ちください。
マスター、ギルドマスター、これを見てください。」
ギルドマスター
「これこれ、はしたない。
受付嬢は優雅に上品に!
を忘れたのですか?」
受付嬢
「この12枚のプレートを見ても、おなじ言葉をはけますか?」
ギルドマスター
「なんと下品な言葉づかいですか?
どれどれ?
げえーーーーーーーー
これは、本物なのか?」
受付嬢
「本物だから、あわてているのですよ。
わかりましたか?」
ギルドマスター
「わ、わかった。 取り乱して当然だった。
ごめんなさい。」
受付嬢
「わかれば、よろしい。」
ギルドマスター
「それで、こちらの姫様が倒されたのですか?」
ルナ
「やっと、話が通じたようだな。」
ギルドマスター
「どうやって、倒したのですか?」
ルナ
「わたしの荷物をちからづくで取ろうとしたから、返り討ちにしただけだ。」
受付嬢
「12回も、おいはぎにあうなんて、大変でしたね。」
ルナ
「おいはぎにあったのは一度だけだ。」
ギルドマスター
「とすると、あとの11回は不意討ちで倒したのですか?」
ルナ
「いいや、正々堂々と正面から戦っただけだ。」
受付嬢
「いいですか?
ルナさん、良く聞いてくださいね。
ここにいるギルドマスターでさえ、1対1で戦って引き分けることが限界です。
連中が12人もいなければ、ギルドが総出で倒しています。
あ、ああ、そういうことですか?
強い御仲間がいらっしゃって、一番弱いあなたが使い走りとして報奨金を受け取りに来たということですか?」
ルナ
「どこまでも失礼なことを言うな。
わたしがひとりで、12人全員を一度に同じ場所で倒したんだ。」
受付嬢
「それを証明してくれるひとはいますか?」
ルナ
「いないな。
わたしはひとりだからな。
報奨金を払いたくないから、わざと怒らせようとしているのか?」
【怒気当て】を放ってやりたくなってきたな。
ギルドマスター
「大変な失礼をしました。
おゆるしください。
ほら、おまえも謝るんだ。」
受付嬢
「どうしてですか?
事実確認は大事ですよ。」
ギルドマスター
「いつから、不感症になったんだ?
この御方がその気になったら、このギルド内にいる全員が3分と待たずに八つ裂きにされてしまうぞ。」
受付嬢
「じゃあ、本当だというのですか?」
ギルドマスター
「信じたくなければ、おまえひとりで戦ってくれ。
わたしは嫌だからな。」
受付嬢
「ひい。 し、失礼しました。」
ルナ
「こんな問答を続けることは、この1回でたくさんだ。
報奨金は払うのか? 払わないのか?」
ギルドマスター
「金庫から、有り金を全部持ってこい。」
受付嬢
「わ、わかりましたあ。」
受付嬢は奥へ走っていった。
金庫に報奨金を取りに行ったのだろう。
ギルドマスター
「良かった。 なんとか、12人分の報奨金があった。
ひとり 100万バーシルです。
12人で1200万バーシル。
全員撃破特別加算金が 300万バーシルです。
合計で、1500万バーシルです。
お受け取り下さい。」
ルナ
「ありがとう。
さて、今回のように待たされると暴れたくなるなあ。
ランクをあげて欲しいなあ?」
ギルドマスター
「もちろん、あげます。
しかし、Cランクまでが限界です。」
ルナ
「不思議だなあ?
おいはぎの12人は、Aランクがひとり、Bランクが4人、Cランクが7人ですよね。
Aランクより強くても、Cランクどまりなのかあ?」
受付嬢
「恐れながら、申し上げます。
ランクは強さだけでは上がりません。
ギルドへの貢献度で決まります。」
ルナ
「ようするに、金を払えということか?
それなら、一番上のSランクまで買いたいなあ?
上手くやってね?
お金を儲けるチャンスだよ?」
ギルドマスター
「それでしたら、特別加算金の300万バーシルをギルドに寄付して頂けませんか?
それで、Aランクにできます。」
ルナ
「ダメだ。 一番上でなければ意味が無い。
わたしはなあ、ひとからグダグダと文句を言われることが一番イヤなんだ。」
受付嬢
「恐れながら、申し上げます。
Sランクになれば、ギルドからの依頼を受ける義務が生まれて、命令されることになります。
それは、嫌ではないのですか?」
ルナ
「国益に関することならば、どの道、断ることができないだろう。」
ギルドマスター
「では、300万バーシルで、Sランクにします。
だから、こまったときは助けてくださいね。」
ルナ
「ああ、状況を聞いてから考えることにする。
わたしには、だれかの犠牲になる義務はないからだ。」
ギルドマスター
「それで、構いません。
どうぞ、よろしくお願いします。」
ボクは、300万バーシルを払って、Sランクになった。
受付嬢
「300万バーシルをありがとうございます。
あの、わたしの発言に無礼があったことは、おゆるしください。」
ルナ
「ああ、わすれることにする。
おたがいに記憶から消すことにしましょうね。」
ボクは、圧のある笑顔を見せた。
ギルドマスターも、受付嬢も、怯えているような気がするが、ボクの考えすぎだろう。
ルナ
「さあ、上手いものでも食って帰るか?
お薦めの料理屋と、おすすめメニューを教えてください。」
ギルドマスター
「となりにある冒険者食堂の日替わり定食がいいだろう。
デザート付きで、2,000 バーシルだ。」
ルナ
「ありがとう。」
ボクは、報奨金の中から、2,000 バーシルずつ、合計で4,000バーシルを出して、ギルドマスターと受付嬢に渡した。
ルナ
「今回は、予想外のことが起きて、お互いにイライラしてしまった。
これで、おふたりも、美味しい日替わり定食を食べて、気分をリセットしてくれたら、うれしいな。
じゃあ、これから、よろしくね。」
温厚なボクが腹を立てたくらいだ。
平均的なひとたちである受付嬢とギルドマスターも腹が立ったはずだ。
美味しいものを食べて、気分をリフレッシュしてほしいと思った。
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