060 モンテマニー侯爵の尋問(熱血教師)
モンテマニー侯爵の応接室にて。
モンテマニー侯爵
「ルナ殿、紅丸殿、黄庵殿、青兵衛殿。
骨を折って頂き、感謝している。」
メクバール執事
「ルナ殿たちのおかげで、侯爵様は用事ができました。
2時間ほど、お待ちいただけますか?
御不自由が無いように、メイドをお付けします。
なんでもお申し付けください。」
モンテマニー侯爵
「メクバール、用意はできたのか?」
いつもと違って、低い声を出している。
メクバール執事
「できまして、ございます。」
モンテマニー侯爵
「呼びつけておいて失礼するが、わたしは熱血教師と話をしなければならない。
戻ってくるので、今夜は泊っていってほしい。」
ルナ
「ありがとうございます。
お言葉に甘えます。」
モンテマニー侯爵
「うむ。 失礼する。」
彼はまるで戦場に行くような恐ろしい顔をしていた。
◇
モンテマニー侯爵の地下室
熱血教師が椅子に縛られている。
モンテマニー侯爵
「起きろ! いつまで寝ている!」
ルナたちの前では温和だった彼が、ものすごい顔で怒っている。
熱血教師
「はっ? ここは?」
モンテマニー侯爵
「このわし、モンテマニーの屋敷だ。」
熱血教師
「モンテマニー?
はっ? モンテツワモ侯爵は?」
モンテマニー侯爵
「去年、永眠したよ。
美しい女性から、毒をもらってな。
あの父にふさわしい最期だったよ。」
熱血教師
「それでは、あなた様に忠誠を誓います。」
モンテマニー侯爵
「要らぬよ。
それよりも、洗いざらい吐いてもらう。」
熱血教師
「ひいっ。」
モンテマニー侯爵
「まずは、【2位興国大学】では、いったいなにを教えている?」
熱血教師
「生徒を導くものとして必要な知識です。」
モンテマニー侯爵
「ほう、それは、それは。
その結果、いじめを止めようとした者を【教師資格】試験で不合格にしたのだな。」
熱血教師
「それは、生徒の自主性を侵害したからであって・・・」
モンテマニー公爵は、なにかをしたようだ。
熱血教師
「ぎゃあ、な、なにをなさるのですか?」
モンテマニー侯爵
「メクバールよ、わしは何かしたか?」
メクバール執事
「公爵様、お話に熱中するあまり、お茶をこぼしてしまわれるなんて。
お気を付けください。 冷めてなかったら火傷をするところでしたよ。」
モンテマニー侯爵
「おお、すまぬ。 カップは割れていないな。」
メクバール執事
「お代わりを用意しますので、しばらくお待ちください。」
メクバール執事は、お代わりのお茶を用意するために、席を外した。
熱血教師
「えへ、えへ。」
モンテマニー侯爵
「なにがおかしい? わたしはお笑い芸人ではないのでな。
笑われても、うれしくないぞ。
おや? どうしたのだ? 顔色が悪そうだ。
もうすぐ代わりのお茶が来るから、温まってくれ。
なあに、お茶くらい安いものだから、何杯でも、ごちそうさせてもらおう。」
熱血教師
「いえ、ご遠慮します。」
モンテマニー侯爵
「まあ、そう言うな。 それから、いじめが有ったと論文試験の答案用紙に書いて、報告した者もいたなあ。」
熱血教師
「いえ、記憶にございません。」
モンテマニー侯爵
「思い出す手伝いをしようか?
そのとき、あったいじめを再現すれば思い出せるかもしれんな。」
モンテマニー侯爵は、熱血教師に、【おてて】と【あんよ】をプレゼントした。
熱血教師
「しばられて身動きできない者を、殴ったり、蹴ったりするとは、人の風上にも置けませんよ。
それが、公爵様のすることか?」
モンテマニー侯爵
「ほう? 二人がかりで一人を押さえつけて、殴ったり、蹴ったりすることは良いのか?」
熱血教師
「なにか誤解があるのでは有りませんか?」
モンテマニー侯爵
「いいや、わたしがこの目で見たからな。誤解も間違いも無いぞ。」
熱血教師
「証拠があるのですか?」
モンテマニー侯爵
「わしの友人、いや、信頼できる仲間たちが見ておったからな。」
熱血教師
「公爵様は、その仲間にだまされているのではありませんか?」
モンテマニー侯爵
「その仲間とは監察官ルナじゃよ。 赤いプレート、【モンテマニーの紋章】を見なかったのか?
見たよな?
「この【モンテマニーの紋章】を、よーく見てくれませんか?」
と言われたよな?
そして、熱血教師殿は、こう答えていたな。
「ごっこ遊びは、他所でやれ。
おかしな連中を、叩き出せ!」
とな。」
熱血教師
「ま、まさか?」
モンテマニー侯爵
「質問するのは、ワシだけだ。 答えるべきは、あなただよ。 熱血教師殿。」
コンコンとドアがノックされて、メクバール執事が戻ってきた。
メクバール執事
「大変お待たせしました。
熱々を持ってきましたので、絶対にこぼさないでくださいね。 火傷したら、完全には治りませんからね。」
モンテマニー侯爵
「おお、ご苦労だったな。 良いタイミングで戻ってきてくれた。
熱血教師殿は寒さで身体が震えているようだ。
さっそく、一杯お飲みいただこう。
さあ、遠慮することはない。 わし自らがコップに注がせてもらおう。
どうぞ、熱いから気を付けてくれ。 よし、持ったな。 では、手を離すぞ。」
熱血教師
「わたしが間違っていました。」
モンテマニー侯爵
「なんの話かな?
すべてにおいて正しい、熱血教師殿の言葉とは思えぬな。
やはり、気付けに熱いお茶を飲んで頂く必要がありそうだ。
さあ、遠慮せず、ワシが入れたお茶を受け取ってくれ。」
ナレーション
「椅子に手足を縛られた熱血教師は、恐怖で気を失ってしまった。」
メクバール執事
「起こしましょうか?」
モンテマニー侯爵
「いや、いい。 だいたい分かった。 ルナ殿が【モンテマニーの紋章】を通じてワシに見せて聞かせてくれたからな。 そして、メクバールの事前調査が正しいことも証明された。
ほかの者に対する聞き込みの結果は、どうだった?」
メクバール執事
「良太郎のように、いじめられたくなければ、言うことを聞けという脅しというか見せしめがあったことが分かりました。 証言する様子を魔道具で録画して、署名付きで報告書を書かせました。」
モンテマニー侯爵
「それで、現在の【教員資格】の所有者は、北の Cunning侯爵領からの移住者で占められているのだったな。」
メクバール執事
「おっしゃるとおりです。」
モンテマニー侯爵
「つまり、我が領民たちは、他の領地から捨てられた者たちに【仕事と収入】を奪われただけでなく、次世代に対して、【正しい教育をする機会】まで奪われてしまったのだな。 ずる賢いカニングがやりそうなことだ。
もし、ワシが、カニング公爵の半分程度でも良い、美形であったならば、好きにはさせておかないものを。」
メクバール執事
「公爵様の容姿は、それなりです。
しかし、ルナ様たちという美形のお仲間が4名様もいるではありませんか?」
モンテマニー侯爵
「メクバールを入れたら、5名だな。 なんとか対抗できるかもしれないな。」
メクバール執事
「良いご縁が出来て良かったですね。」
モンテマニー侯爵
「確かにな。 どこまで本気かは分からないが、【正義の代行者】として少しでも長い期間、わしにチカラを貸して欲しいものだな。」
◇
ルナたちが、くつろいでいる食堂に、モンテマニー公爵とメクバール執事が帰ってきた。
モンテマニー公爵
「おお、お客人を長い間、待たせてすまなかったな。
ワシの熱い想いを話したら、熱血教師が感動してくれてな。 いろいろと話してくれた。」
メクバール執事
「ルナ様たちへの御礼の給金をお受け取りください。
また、彼らの裏金を回収してくださった分も多めにお支払いいたします。」
ルナ
「ありがとうございます。 つつしんで頂戴します。」
モンテマニー公爵
「うむうむ、遠慮は要らぬからな。
では、腹を切りながら話そうか?」
メクバール執事
「公爵様、そこは、腹を割って本音を話そうか? というべきです。
ルナ様たちの冷たい視線を感じませんか?」
モンテマニー公爵
「ああ、凍えそうなくらいだな。
では、真面目に話そうか?
そして、問題を解決する見込みが出てから、いつものような雰囲気で、いっしょの時を過ごそうか?」
ルナ
「ええ、ぜひ、その順番でお願いします。」
ルナとモンテマニー公爵の関係は、孫娘と祖父のような関係だったが、このときだけは互いが得る利益について妥協はしないという冷酷な雰囲気が漂っていた。 だから、メクバール執事、紅丸、黄庵、青兵衛も、人生で一番真剣な表情をしていた。
つづく
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