032 青紫の商才(12)モンテマニー公爵は良いひとだった
モンテマニー公爵
「青兵衛殿、建設予定地と道の整地、誠にありがとうございます。」
青兵衛
「お目に掛かれて光栄です。
こちらが区画の予定図です。」
モンテマニー公爵
「見せて頂こう。」
モンテマニー公爵は区画の予定図を見ながら、青兵衛に質問していた。
モンテマニー公爵
「すばらしい。
ただ、3つほど、修正したい点がある。
1つ目、入口側の道だけでなく、反対側にも出口側の道を作りたい。
2つ目、トイレが男性用と女性用の距離を離してある点が実に良い。
ただし、もう1組欲しいな。 出口側にも作りたい。
3つ目、女性は用を足している音が聞こえたら嫌らしい。
女性用のトイレの中に、滝のように水が流れる噴水を作りたい。
いかがかな?」
青兵衛
「素晴らしいお考えでございます。
感服いたします。」
モンテマニー公爵
「おお、ありがとう。
そして、報酬とは別に2つの区画を、パーティ名: 可愛いお茶屋さん に渡す件だが、この図に書かれている希望の位置で許可しよう。」
青兵衛
「ご厚情に感謝します。」
モンテマニー公爵
「うむうむ。
ところで、店や家を建てる業者は手配済みなのだろうか?」
青兵衛
「いえ、まだにございます。」
モンテマニー公爵
「それなら、わたしと関わりのある業者に仕事をやりたいのだが構わないだろうか?」
青兵衛
「もちろんで、ございます。」
モンテマニー公爵
「おお、ありがとう。
青兵衛殿。
あとは、こちらで引き継がせてもらいたい。
もちろん、当初に約束した30万バーシルはあなたのものだ。
そして、あなたが希望する2つの区画の店と家も、こちらの費用で建てておく。
それで、納得いただけるだろうか?」
青兵衛
「もちろんで、ございます。
願ってもないことです。
ありがとうございます。」
モンテマニー公爵
「では、1か月後の町開きの式典で演説をするから聞きに来て欲しい。」
青兵衛
「ご招待いただき、光栄です。
楽しみにしています。」
モンテマニー公爵
「では、また会おう。
荷造りが済んだら、町で休んでくれたまえ。」
青兵衛
「ありがとうございます。」
◇
ボクたちは、ひと目がないことを確認して、家を呼び出した。
ルナ、紅丸、黄庵、青兵衛
「「「「ママ、ただいま。」」」」
家の中では、月夜、紅姫、黄花、青紫と呼び合っている。
紅姫
「あれで、良かったのか?
大変な下準備だけさせられて、美味しいところというか成果は取られたのだろう?
しかも、青紫の区画予定図に手直しまでされたんだ。
よく冷静でいられたな。」
青紫
「引き継いだ金持ちの息子が自己顕示欲を見せつけれられるように、わざと分かりやすい欠点を3つ残したのよ。
完璧な町を作っても、無理やり変えようとするからね。
賢い馬鹿が活躍する余地を作ってあげることが重要なのよ。」
青紫は少し寂しそうだった。
青紫
「でも、これで、2区画はもらえたんだから、表向きの店舗と住居としては合格よね。
まさか、建物まで立ててくれるとは期待していなかったわ。」
月夜
「まあ、気前が良いひとだったと思うよ。
言葉遣いも丁寧だった。」
黄庵
「これで、表の住居も商売もできるから、上等よね。」
紅姫
「それなら、わたしも喜ぶことにするわ。」
◇
1か月後、モンテマニー公爵は、式典で見事なスピーチを行った。
長すぎず短すぎず、聞きやすい明瞭で活舌が良い発音だった。
公爵の執事
「パーティ名: 可愛いお茶屋さん。
だんな様が昼食をご一緒したいと、御呼びです。
来ていただけますか?」
青兵衛
「よろこんで、お伺いします。」
ボクたちは、町にできた公爵の屋敷内にある食堂に通された。
モンテマニー公爵
「よく来てくれた。
まずは、飲み物を出そう。
わたしが好きなグレープフルーツジュースだ。
気に入ってくれるとうれしい。」
ルナ
「おいしいです。」
モンテマニー公爵
「さて、うちの執事だけでなく、わたしも気付いていることを、青兵衛殿に伝えたくて来てもらった。」
青兵衛
「なんでございましょう。」
モンテマニー公爵
「お礼を言いたいことと、わたしの自尊心というかプライドのためだな。」
青兵衛
「と、おっしゃいますと?」
モンテマニー公爵
「町の区画予定図に、わざと不備を、いや改善余地を残してくれたことが1つだ。」
青兵衛
「なんのことでしょう。」
モンテマニー公爵
「とぼけなくてよい。
とは言え、そういうしかないだろうな。
青兵衛殿の配慮のおかげで、わたしが金だけ出した金持ちの息子だと言われなくて済む。
次に、店や家を建てる業者を決めないでくれたことだ。
そのおかげで、関係先へ大きな顔で恩を売ることが出来た。
最後に、青兵衛殿の配慮に気付くくらいには賢くて、お礼の1つは言えることを示したくて、来てもらった。
本当にありがとう。
ただ、貴族として、頭をさげることができないことは大目に見て欲しい。」
青兵衛
「お見逸れしました。」
モンテマニー公爵
「そして、勲章を受け取って欲しい。
いや、会員バッジという方が良いかもしれない。」
執事が大きな盾がはまった板を持ってきた。
下の方には、小さな盾が4つ 埋められていた。
モンテマニー公爵は、それを外して、布が貼られたトレーに載せた。
執事がトレーをルナの前に置いた。
ルナ
「これを、くださるのですか?」
モンテマニー公爵
「それを見せれば、執事がいないときでも、わたしに取り次いでもらえる。
なにか困ったときは、わたしを頼って欲しい。
もちろん、わたしもギルド経由で依頼するが、優先的に仕事を受けて欲しい。
まあ、御縁を目に見える形にしたものだ。
そして、バレると思うから事前に話しておく。
その会員バッジの位置は、この本体で確認することができる。
位置を知られたくないとき以外は、許可を選んでくれると助かる。
近くにいるときは依頼がしやすいからな。」
青兵衛
「ネコに鈴を付けたいわけですね。」
モンテマニー公爵
「もっと高度なものだぞ。
遠く離れた状態で会話もできる。
横のボタンを押し込めば、声を届けることができるぞ。」
ルナ
「このグレープジュースを、お土産に欲しいです。」
ボクは、会員バッジに向かっていった。
モンテマニー公爵
「うむ、持たせてやろう。
夜ご飯用にも弁当を持たせるから、味わってくれ。」
モンテマニー公爵は、盾に向かって言った。
モンテマニー公爵
「では、昼食にしようか?」
ボクたちは、心地良い雰囲気で昼食を楽しんだ。
その後、執事にボクたちの新しい店と家の中を案内されて、説明してもらった。
執事
「だんな様が案内したがっていたのですが、いろいろと予定がございまして、自ら案内できないことを申し訳ないと申しておりました。」
黄庵
「あのう、執事さんは私たちが、モンテマニー公爵とお近づきになったことを、うっとうしく思ったりされないのですか?」
執事
「すこしは嫉妬しますが、嫌ではないですね。
だんな様のすばらしさを理解できる仲間が増えたと思っています。
もちろん、だんな様の一番のお気に入りが私だという自信があればこその余裕ですね。」
黄庵
「それを聞いて安心しました。」
執事
「黄庵殿は、ご苦労されたようですが、だんな様のように気配りができる方が頂点におられるからこその余裕です。 私は特例とお考え下さい。
ほかの貴族の執事だったら、あなたたちに冷たい態度をとるでしょうね。」
ルナ
「モンテマニー公爵は、素晴らしい御方なのですね。」
執事
「その通りでございます。
だんな様との出会いは・・・」
執事さんの話は、30分も続いたのだった。
でも、ボクたちは、拠点を手に入れて、ご機嫌だった。
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