011 紅姫に会おう(3)妖刀斬 紅丸
ボクは紅丸から短刀を受け取った。
短刀を良く見ると、短刀の鞘の根本部分の近くに分厚い金色の金属板が一周巻いてあった。
剣の鍔を眺めると、鞘の入り口の部分に丸い突起部分は、抜刀するときに、敵に当てるためにあるのだろう。
ボクは、剣の柄を左手で握って、剣の鞘の金属板を右手で握った。
ルナ
「与える左手から、奪い取る右手へと性魔力を流す。」
紅丸
「な、なにをなさるのですか?」
声は出ているが、赤い髪の男性の唇は動いていなかった。
ルナ
「おなかが減って苦しいだろう。
2、3日は満腹状態を味わってみたくないか?」
紅丸
「な、それは、どういう意味でござるか?」
ルナ
「能力向上呪文 【トゥート】。
思った通りだ。
ほとんど、空っぽだったみたいだな。」
紅丸
「こ、これは、この感覚は。
空っぽの水瓶に大雨《大雨》が降り込むような?
いや、滝の水が注ぎ込まれるような?」
ルナ
「よし、もう少しだな。
これが、10回目の能力向上呪文 【トゥート】。
ふう、良かった。
これで満タンみたいだ。
ありがとう、紅丸の短刀を返すよ。」
紅丸
「短刀が長刀になった。
ここまで大きくなるなんて、信じられませぬ。」
紅丸のくちびるは、やはり動いていなかった。
ルナ
「紅丸、あなたは妖刀だろう。
つまり、性魔力を生きる糧とする刀で、意思があるのだろう。」
紅丸
「はっ、仰せの通りでございまする。」
ルナ
「次は、あなたの所有者を治したい。
かなり、弱っているよね。」
紅丸
「ですが、ご遠慮いたしまする。」
ルナ
「わからないのかな?
そのひとは、もうすぐ死ぬよ。
妖刀に生命力を吸われすぎたからね。」
紅丸
「そ、そんな、拙者のせいで。
たしかに近頃元気がなかった。
この館の主殿、お名前をお聞かせ下され。」
ルナ
「ルナだよ。」
紅丸
「するな とは、命乞いをするなとのことでござるか?」
ルナ
「そんなことは言っていない。」
紅丸
「ご無体な、オマカセダのご慈悲をくだされ。」
ルナ
「ああ、たんに聞きなれない名前ということかな。
またの名は、月の夜と書いて、月夜と言います。」
紅丸
「月夜殿、この者が治ったら、忠誠を誓わせますので、何卒よろしくお願い申し上げます。」
ルナ
「忠誠は、いらないよ。
男性は信用できない。
どうせ、ボクを嫌って、仲間外れにしたり、イジメてくるからね。」
紅丸
「左様でございますか?
ご苦労されたのですな。」
ルナ
「だから、元気になったら、出て行ってほしい。
それだけでいい。」
紅丸
「分かり申した。
お約束いたします。」
ルナ
「じゃあ、治すよ。」
ボクは、体力回復呪文【トゥベルサ】をとなえた。
赤い髪の男性
「う、ううん、ここはどこ?
紅丸?
どこにいるの?」
紅丸
「おお、気が付かれましたか?」
ルナ
「よかったね。 というか、男性にしては声が高い気がするな。
仕草もなんとなく。
いや、気のせいだろう。」
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