街歩き
土産の蜂蜜を四次元空間へ入れて、田舎町をタマコと並んで歩き出す。
休日なのか小学生くらいの女の子達は無邪気に走り回っていたり、老婦人が散歩をしている姿が見える。凄く平和な日常で、これからもこの街はこんな感じで日常が永遠に続いて行く気がする。
「ほんとうに男の人見かけなくなったよね?」
「そうだね。このまま大事件とか起きれば人類の絶滅危機になったりしてな」
謎の組織が暴走してテロを犯したり、別次元から侵略者が現れて人類を滅ぼしたりとかね。非現実的なことのはずなのに何故かありえそうな気がしてきた。世界中の男性が半分以上いなくなった要因としてある組織が世界にウイルスをバラ撒いたせいであるから人類の滅亡の因子はそこら中に転がっているのかもしれない。
現在ではフェミニストが大喜びそうな社会になりつつあるが、誰かが要因となる出来事を地べたに転がる小石を蹴れば人間社会が崩壊するほど脆いのかもしれない。別世界から数人がウイルスを持ち込んだだけで世界がこんな風になってしまったからあり得る話だ。
今までに似たようなことがあって誰かが未然に防いでいたのかもしれない。案山子達の街で出会った男のが所属している組織が世界を守っているのかもしれない。
「そんな冗談やめて。そんなこと言って本当に起きたらどうするの?マヒルが頑張るの?」
「誰かが未然に防いでくるんじゃないのか?俺が銃乱射事件を無くしたみたいにさ。未来を予知できる人が災害とか予知して避難誘導とか要因を排除したりしてね」
俺が知らない能力者達の組織があるみたいだし、案外世界中の人が大勢死ぬような事件を解決している組織があるかもしれない。スーパーアルティメット団が他の組織と協力してウイルスのワクチンを作成したみたいに世界中の組織が普段いがみ合っている組織が何か事件とかを解決する時だけ、手を取り合って協力する熱い展開がいくつも人類の歴史の中にいくつもあったりしてな。
「そんな他人任せな。そんなヒーローみたいなのはマヒルしかいないよ」
「ん?なんか言った?」
「なんでもない。ただの独り言。それよりもほら見てよ。あそこ山鳥が飛んでいるよ。尾羽長いね」
タマコが俺の腕を抱き込んで空を飛んでいる鳥を指さして誤魔化したけど、ボソッと聞こえたようなヒーローみたいなのがどうだか言っていたみたいだけど、本人が誤魔化したから気にしなくていいか。
どこに向かう目的も無く、しばらく歩いているとスマホが鳴った。SNSアプリの通知で画面を見るとミキミからのメッセージだった。内容は「マヒルちゃん今どこにいるの?」だった。
返信として隣に歩くタマコの姿を写真で納めてミキミへ送って「タマコとお出かけ中」と返した。電話がくると予想してすぐさまスマホの電源を切った。
「どうしたの?」
「ミキミからのメッセージでどこにいるって聞かれたからタマコの可愛い写真を送っただけ」
俺の奇行に首を傾げたタマコの問いを素直に答えたら、タマコは顔を赤らめてそっぽを向いた。
少しイラってきたのかな?ちょっとデリカシーのかけることを言ったつもりはなかったけど、勝手に写真を撮ったことに不快感を感じたのか?
「キャッ」
少し沈黙した空気で歩みを進めてるとリクルートスーツを着た女性が派手に転んだ。手提げタイプ持っていたビジネスバッグをぽーいって感じで明後日の方向に投げ出されたので念力を使って、女性の近くに置いといて、タマコと共に駆け寄る。
「大丈夫ですか?」
「いたた。心配させてすみません。私は大丈夫なのでお構いなく。えーと鞄は」
「そこにありますよ」
「あった。では私はこれで。すみません」
転んだことがよほど恥ずかしかったのか女性はうつむいたまま、鞄を抱きしめるように抱え込んで俺達二人にぺこりと頭を下げてそそくさと行ってしまった。靴のサイズが合ってないのか遠くで転ぶ姿が見られてすぐに立ち上がる。
なんとも落ち着かない姿で去っていった。
「なんだったんだ?」
「さあ」
女性の背中を見送った俺達は互いの顔を見合わせて首を傾げた。
突如現れた女性のおかげで俺とタマコの間にあった沈黙は消え去り、次はどこへ行くと質問が俺の口から出てそれから他愛ない会話が続いた。
俺達は何かに導かれるように、転んだ女性の後を追うように、足を進めていった。もし道に迷ったらテレポートで地元に戻れると踏んでいたから迷いなく道を進むと温泉宿のような廃墟にたどり着いた。
いや、駐車場には車が3台停まっているから営業しているのか?
「温泉宿みたいだけど記念に入っていく?」
「マヒルが入りたいなら私はいいけど」
今はお互い違う性別だから温泉に入るのであれば別れてしまうのに気付いたのだろうタマコはあまり乗り気ではないようだが、あえて入ることにした。
まずは温泉だけ入れるかどうか確認してからか。




