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「プロローグ前編」

 人は突然、超能力に目覚めたらどうするだろうか?

 ヒーロー気取りで人を助けをするか。それとも超能力を駆使して太陽系を散歩するか。

 この僕こと相沢真昼(あいざわ まひる)は一時間かけて東京ヘ買い物をしてきたところだ。しかも乗り物を使わずに空を飛んで。

 買った物は今日発売のゲームソフトだ。他にも買いたかったが、財布の中が寒いからゲームソフトしか買えなかった。

 僕が今住む場所は都会と田舎の中間のような福島にある町だ。そのゲームソフトを買いに近所の店に行ったら既に売り切れだったので東京ヘ足を伸ばした。

 そして会計を済ませて家へ帰って来ている途中だ。家に着いたらそのゲームソフトで遊ぶつもりだ。


 何も取り柄のない男子中学生の僕は一ヶ月前に超能力に目覚めた。

 ある日のこと、僕はボッチの日常を過ごして来たら、突然に超能力に目覚めた。

 その日の朝はすごく調子がよく念力で昨晩読んでいた漫画を浮かせられると何故か思った。(現在中二病中)漫画に浮かべと念じたら漫画が勢い良く窓を突き破って空の彼方へ飛んでいった。やった本人である僕が何が起きたかわからなくなった。窓が割れた音を聞きつけた両親が僕の部屋に入ってきた。

 両親には寝ぼけて窓を割ったと説明してしこたま怒られたが、漫画が空の彼方へ飛んでいったことに対して自分でも信じられなかった。

 そして今日まで自分が何ができるのか試してきた。

 念力にテレポート、飛ぶことから予知まで何でもできた。

 そのことを友達に自慢したかったが、あいにく僕には友達と呼べる人いない。言わばボッチだった。

 学校の休み時間は静かに読書して過ごす悲しきボッチなのだ。大事なことなので二回言った。友達とか凄く羨ましいとか思ってないんだから。

 テレポートを使わずに空を飛んでいるのは気分的に風を感じたかったからだ。


 目覚めたばかりのこの超能力を私利私欲で使った。と言っても思い浮かぶのは自室で一人寂しく物浮かせて遊んだり、学校から家までテレポートで帰る程度で超能力を殺人や窃盗で使う気はない。

 外国に不法入国を何回かしたが、超能力を悪用するにもその程度だ。その国の金が無いので何しないでそこら辺をウロチョロしていただけなのだが、現地民からしたら凄く怪しく見えたのだろう。怖いオジサンに話しかけられたが、何を言っているのか分からなかったから逃げるように日本に帰った。今思い返してみると制服を着ていたから警官だったと思う。

 そんなことは置いといて目覚めた超能力のいろいろなコツを掴んだ。念力のコントロールも見たい未来の予知も今や簡単にできてしまうようになってきた。

 そして超能力がある便利な日常に少しづつ慣れて、現代人の若者が電子機器ないと生きていけないように、僕も超能力なしでは生きられない体になってしまった。テストは答えを予知して満点。学校は誰にも僕の存在を認知されないように気配を消して、体を半透明して学校生活をやり過ごす。それでさらに友達ができにくくなったが、クラスメイトから睨まれたり、キモがられるよりはマシだ。

 ボッチでも全然寂しくない。


「早くやりたいな。楽しみ過ぎて八時間しか眠れなくなったんだよな」


 ゲームっているのは人間のとって最高の娯楽だ。この世からゲームが消えたら僕も死ぬかもしれないってほど大好きだ。特にアクションゲームが好きだ。リアルで味わえない絶望を非日常をゲームの主人公が体験しているとプレイヤーである僕も体験していると錯覚できる。

 そして読書ラノベも好きだ。ラノベの主人公を自分と重ねて、主人公が活躍する場面を読んでいると気分がよくなる。


 ワクワクしながら飛んで自宅に向かっているとドンと鈍い音が地上から聞こえた。

 被害者と思われる少女が車に跳ねられたみたいで、どうやら交通事故が起きたようだ。

 僕は止まり、目を凝らして地上を見た。

 少女から流れる血はどんどんアスファルトを赤く染めていく。少女の手足が普通では曲がらない方向に曲がり、心拍数が弱まっていく。悲惨な状態と言えた。

 一方、加害者の男性はパニックになっているようであたふたして救急車を呼ぶ気配がない。それどころか居合わせた人も救急車を呼ぼうとしない。


「これは助からないな」


 少女の未来を予知して彼女が死ぬ光景を見た。このままだと誰も救急車を呼ばれずに彼女は確実に死ぬ。そして彼女が死んだことで彼女の両親や友達と思われる女の子が泣く未来が見えた。

 口の中いっぱいに嫌な味が広がる気がした。


「しゃーない。このまま見殺しにするにも後味が悪くなるし、楽しみにしてたゲームもつまらなくなる。ここは助けてやるか」


 僕は地上に降り立ち、死にかけている少女に触れた。

 触れた途端、彼女の怪我が時間を巻き戻るように治っていく。


「へ、ヘルメスさん?」


 と彼女は呟いて意識を落とした。

 ヘルメスさんというのは僕が人助けをしている中で野次馬が撮影した僕の写真がSNSで拡散されて、そう呼ばれるようになった。海外でもニュースや新聞記事になったけど今となっては都市伝説扱いだ。

 ヘルメスという名前の意味はわからないが、力を使うときは必ずフルフェイスのヘルメットを被っているからヘルメットさんが訛ってそうなったと思う。北欧の神話の神に似た名前があったと思うがそうじゃないと思うけどどう呼ばれようと興味ない。

 ちなみにヘルメットをかぶって超能力を使う時は姿を偽っている。中学生の僕が少し年を取った身長175センチの青年の姿にしている。これでヘルメスさんの正体が僕と見破られることはないだろう。

 青年の姿でいろいろやっている。パチンコを楽しんだり、バーで酒を楽しんだりと普通の中学生ではできないことをやったりした。


 少女の怪我も治ったことだし、野次馬が集まってきたから帰るか。

 再び飛んで家に帰る。

 僕が飛ぶ姿を野次馬達がパシャパシャと写真を取る音の中にピーポーピーポーと救急車のサイレンが聞こえた。野次馬の誰かが呼んだのだろう。彼女は怪我が治って必要ないのに。


 僕は家に帰り、今日買ったゲームを一晩中全クリするまで遊んだ。


【事故の被害者の少女の視点】

 今は何が起きたかわからない。

 数秒前まではスマホの弄りながら学校から自宅に帰っている途中、体に強い衝撃を感じた。

 身体中が痛くて、意識が徐々になくなっていくのを感じる。

 消え去る意識の中で私が見たのはどこかで見たことがある趣味の悪いフルフェイスのヘルメットを被った男性が私を見下ろしていた。しかもその男性は空を飛んでいた。

 この人が死神なのかと思って自分が死ぬんだと人生を諦めた時、死神さんは私に触れた途端に痛みが消えた。その瞬間に思い出した。この人が都市伝説になっているヘルメスさんと。

 私は意識を失った。

 病院で目覚めた。自分が生きていることに驚いていた。


 交通事故の被害者の少女は真昼が去ったあと、病院に運ばれて一晩入院したが、次の日には目立った怪我もなく退院するのだった。

 しかし、彼女は事故の時の記憶はあやふやながらもヘルメスさんに助けられたことを覚えており、恋の病になってしまったのは彼女以外誰も知るよしもなかった。

 彼女はヘルメスさんについて鬼のように調べてその正体に近づこうとするのは別の話。


 次の日には久方ぶりにヘルメスさんが現れたとニュースになった。SNS上では事故の野次馬達が撮影したヘルメスさんの写真が出回り、話題になった。

 ヘルメスさん本人である真昼にとってはいい迷惑だ。

 ヘルメスさんについての記憶を世界規模で消去を考えたが、世界で何億人の記憶を消さなくなるので、そこまで労力を割り当てる気はないのでヘルメスさんの一件は放置することにした。


 ☆


 それから月日が流れ、太陽が真っ盛りの季節、夏がやってきた。

 今日は夏休みが始まり五日は過ぎた。中学二年生である僕も夏休みを満喫する方法を考えている中で自室で怠惰にゴロついていた。


「快適だ。さーて今日は何をしようかな。夏休みの宿題は最初の二日間で終わらせたし、何して遊ぼう」


 夏休みなのにやることが無いボッチは自室で堕落した生活を送っていた。僕の周囲は快適な温度に保っているから夏の暑さを感じない。大気をコントロールして部屋の温度を氷点下にできる。冷気が漏れて家族に迷惑がかかるからやらないけど。

 ボッチだからやることが無い。遊び相手の友達もいないし、夏休みになれば必ずついてくる夏休みを満喫する学生の宿敵の夏休みの宿題はすべて終わらせてしまった。

 僕は暇を持て余していた。

 最近は超能力を使うにも超能力を使った遊びの方法が思いつかない。海外に行って、その国の言葉を母国語のように話せるようになっても人の目を見て話すのが苦手なコミュ障だから人とうまく話せないし、予知で物事のオチを見れてしまう。ヘルメスさんモードで念力を使って怪力自慢も散々やってきて飽きてきた。

 超能力でなんでもできるようになってから日に日に面白みを感じなくなってきた。退屈と感じる日々が続くようになった。


「お兄ちゃん!夏休みだからってダラけないの!」


 今日やることを考えていたらうるさい我が妹が僕の自室に侵入してきた。その名も夜乃(ヨルノ)

 我が妹は熱い中ダラダラしている僕に小言を言いに来たのだ。当の僕は汗一つ掻いてはいないのだが、他から見たら暑くてダラダラしているように見える。


「夏休みに入ってからずっとおうちに籠ってゴロゴロばかりじゃん。やることないの?」

「やることが思い浮かばないからこうしてダラダラしているんだよ。お前の兄はすっごく退屈なんだよ。助けてくれよ」

「そんなに暇なら出かければいいじゃないの。お兄ちゃんがダラけているとこっちは気が散って宿題に集中できないじゃないの。あと音楽がうるさいわよ」


 妹の部屋は僕の自室は隣で、僕は今大好きな音楽をスピーカーで垂れ流していた。それで我が妹は僕の部屋から流れ出る音楽がうるさくてクレームを言いに怒鳴り込んできたようだ。

 大きめの音量で流していた僕も悪いが、この曲は最近のはやりの曲なのにな。人それぞれ趣味が違えば好き嫌いが出るか。


「もう静かにできないなら遊びに行ってよね」


 プリプリ怒る夜乃は強く扉を閉めて宿題を再開するために自室へ戻っていた。

 まだ夏休みが始まったばかりで惰眠を貪るだけでも三日も経過した。今年の夏は超能力に目覚めて初めての夏休みだ。学校が始まればゴミみたいな時間を過ごさなくてはいけない。

 その分夏休みを満喫しようと心に決めていたのに現状の体たらくは何なんだ。宿題もすべて終わらせて残りの夏休みは自由に過ごせるはずなのに今の僕は自室でゴロゴロダラダラと時間を無駄に過ぎている。

 決して大きな額ではないが、大人モードで宝くじで稼いだ金もあるからなんでもできる。ただ、欲しい物もないし、何かを買う購入意欲もわかない。やりたいこともない。

 思いつくことは何も考えずに脳死でスマホでYouTubeを見るだけだ。youtubeは見たい動画から類似する動画やおすすめ動画が流れてくるから無限に時間を消費できる。暇を潰せるがそれはそれで時間がもったいない気がする。

 夜乃の言う通りに気分転換としてどこかに遊びに行くのはいいかもしれない。

 普段なら都会へ遊びに行くが、都会で遊ぶのも飽きた。遊園地とかは面白いけどあれは金がかかるし、一人で遊びに行くのは寂しい。

 今日は逆転の発送で田舎の方へ遊びに行こうかな。


 家から飛び出して山の方へ向かった。

 山の方は人の手が入っておらず、動物達が木々の陰で静かに潜んでいる。その中に小学生くらいの女の子が二人で遊んでいた。


 二人は姉妹だろうか?なんでこんな山の中に子供だけで?

 女の子達から二百メートル離れた位置に農村があるからそこの子供だろう。流石に迷っているとは思えない。

 暇だし、話しかけてみようかな。超能力を使っているところを見れても関わらないようにするだけだしね。


 僕は地上に降り立ち彼女達に話しかけてみることにした。


「ねぇ。君達!村の子供?」

「っえ?誰?」

「お、おねえちゃんしらないひとがいるよ」


 話しかけた途端にビクっと体を震わせた。

 僕がいきなり現れて話しかけてきたから驚かせてしまったようだ。


「いきなり話しかけてごめんね。遊んでいたら君達を見かけてね。それで村の子供なのかなって」

「ち、違います。私達は夏休みの間、おじいちゃん家に泊まりに来ているだけで村の子供じゃないです」


 なるほど。親は仕事かなんかで子供の面倒を見られないから祖父母に預けられたパターンか。

 二人は顔が似ているから姉妹かな。


「それにここはおじいちゃんが持っている山だから知らない人は入れないはず。フェンスで囲っているからって言っていた」

「おそとからくるひとははいれないって。おにいちゃんはどこからきたの?」

「私有地だったか。町の方から来たけど、普通には入れたよ?」


 空からだけどね。しかし、空とは言え、こえは完全に不法侵入だね。誰が所有する山とか知らなかったからしょうがないよね?ノーカンでいいよね。

 お姉ちゃんの方は言葉に少し距離を感じるな。知らない人に話しかけられたら、誰だって身構えるよね。


「そうなの?」

「そうそう。そんなことより遊ばない?めちゃくちゃ暇なんだよ」


 中学生男子が知らない小学生の女の子を遊びに誘う。新手のナンパだなって思いながら女の子達の返事を待つ。


「あそぶってなにするの?ここなにもなくてつまんないよ?」

「そこはおにいさんに任せて、で?君達はどこに行きたいの?どこでも連れて行ってあげるよ」

「うみ!」

「ちょっと知らない人についてっちゃダメって言われているでしょ」

「でもこのおにいちゃんはおとなじゃないよ。こどもだよ?」

「そうだけど」


 妹を頑張って説得しているな。でも妹の方は姉の言葉の意味を理解していない。

 しかし、お姉ちゃんの方は僕のことを凄く警戒しているな。僕がいくら子供とは言え怪しいのだろう。


「海だね。今すぐ行くよ」


 話し合っている姉妹の間に割って入って海までテレポートする。

いつか後編も書きます。



いつになるかわからないけど。

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― 新着の感想 ―
いきなり万能な力を持つ最強超能力者登場ですが、本人にあまりやる気がないところのギャップが面白いですね。 私なら、予知能力を使って株で荒稼ぎして、そのお金で世界中の孤児を集めて育成して、自分の帝国を作り…
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