第3話 異能vs魔法①
馬車から外へ出てきた二階堂は、遠くにいるローブの男と対峙する。
自ら死地へと足を踏み入れた二階堂に対し、男は口角を上げ笑みを溢す。
「フッ、観念して出てきたか。諦めも時には肝心だといういい例だろう」
ローブの男に挑発されるも、二階堂は沈黙のまま男へと近づいていく。
「おい、そこで止まれ。これ以上近づいてくればマジックアローで消し炭にするぞ」
男の警告に彼が従うはずもなく、二階堂は次第に歩行スピードを上げる。
「っ!こいつ正気か?お前ら構わん、この馬鹿を殺してしまえ!」
男が周囲の仲間に合図し、魔法の杖で二階堂を襲うよう指示する。
その瞬間、二階堂は懐から”何か“を取り出し、勢いよく男に向かって投げつけた。
「!?何!?」
男は咄嗟に投擲物を手で掴み、二階堂の遠距離攻撃を阻止する。
男の手の中に握られていた投擲物の正体は、ボロボロになった鉄屑だった。
「フッ、なんだこれは?こんなくだらないボロクズを投げるために、
お前は我々に刃向かってきたのか?全くガッカリだ…」
男がやれやれと呆れ顔を浮かべると、二階堂はニヤリと口角を上げ笑う。
「その鉄屑は、元々“お前ら野盗共の物”だ。森の中で倒した三人組の一人から、ちょいとくすねてきたのさ。
もっとも“ただの鉄屑”ってわけじゃないけどな」
二階堂は手をかざし、静かに言葉を呟いた。
「能力、解除」
次の瞬間、男の手の中にある鉄屑が、突如鋭利なナイフに変化し、包んでいた彼の手を深々と貫いた。
突然の出来事にローブの男は驚愕し、血を垂らしながら激痛に悶え苦しむ。
「ぐああああ!!こ、これは一体!?」
「お前が握ったその鉄屑は、俺が“能力で風化させた野盗のナイフ”だ。
原型を留めないほどボロボロになったそのナイフを、今能力解除で元に戻したんだよ」
その場で立ち尽くすローブの男に対し、二階堂は好機を逃さず肉薄する。
先程まで遠く離れていた両者の間合いは、至近距離まで近づいていた。
ローブの男は血を流しながらも、仲間達に声を荒げ指示する。
「な、何をしている!!早くこのガキを集中砲火しろ!!」
「出来ねえよ、俺とお前は同じ場所にいるんだ。俺を集中砲火したらお前もタダじゃすまねえ」
二階堂は拳を硬く握り、男の顔面目掛けて振り放つ。
勝負は遠距離戦から、接近戦へと切り替わった。
すると二階堂の拳が顔へ接触する寸前、男は小さな声でこう唱える。
「…マジックアロー」
次の瞬間、大きな発射音と共に、二階堂の腹部へ焼けるような痛みが走った。
「あ…が…!」
二階堂は口から血を噴き出し、音を立てて膝をつく。
腹部からの出血はさらに著しく、一撃の重さを物語っている。
見下ろすかのようにローブの男が、不敵な笑みを浮かべこう言った。
「“魔法使いは接近戦に弱い“そう高を括って近づいてきたのだろうが、アテが外れたな。
私のマジックアローは近距離、遠距離のどちらでも猛威を振るうんだよ」
負傷した二階堂に対し、男はトドメにかかろうとする。
しかし咄嗟に魔法の杖を掴んだ二階堂が、息を切らして言葉を吐いた。
「こ…この杖で攻撃してんだろ?なら…コイツをぶっ壊せばいいだけだ!」
すかさず二階堂は手に力を込め、能力を使用する。
たちまちローブの男が持つ杖は、ボロボロの木屑と化して、地面にバラバラと崩れ落ちた。
攻撃の手段を奪ったと確信した二階堂は、痛みに顔を歪めながら立ちあがろうとする。
だがそんな彼の視界の前にあったのは、手をかざして詠唱を試みるローブの男の姿だった。
「別に杖なんてなくても魔法くらい打てるぞ?コイツはただ威力を高めたり、
魔力消費を抑えたりするのに使ってるだけだ。この世界の常識だろ」
「な、なんだと…?」
二階堂に向けられた男の手が、青く光を帯び始める。
彼がここまで追い詰められた要因は、この世界の魔法について知識がなかったことであり、
異世界からの転生者だったことも、理由の一つに挙げられるだろう。
異能力者二階堂はここに来て、魔法という存在に苦戦を強いられることになる。




