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第30話 最終決戦

成長した二階堂は、散っていった鬼灯のために、織江凛へ立ち上がる。

接近してくる彼に対し、凛は杖を向けて爆発魔法を唱えた。


瞬時にその場が爆破すると察知した二階堂は、高く跳び上がり攻撃を避ける。

すかさず焼け焦げた天井を蹴り飛ばし、凛の元へと再度飛びかかる二階堂。


凛は光線魔法を撃ち、肉薄する二階堂を迎え撃つ。


すると二階堂は、鋼鉄のナックルダスターを嵌め込み、凛の光線に拳を叩きつけた。

光線は鋼鉄の表面に弾き飛ばされ、屋敷の壁へと着弾する。


「へぇ!!中々やるわね!!」


感心する凛の至近距離まで近づいた二階堂は、拳を思い切り振り放つ。

しかし後方へ飛翔する凛に、彼の攻撃は虚しく空を切った。


「私に飛翔能力がある限り、あなたの攻撃は通らない。羽を生やして出直してきなさい!」


攻撃を外した二階堂の近くを、凛は容赦なく爆破した。


「ぐあああああああ!!!!」


爆破魔法をくらい、後方の壁まで叩きつけられた二階堂。

強い衝撃を受けた彼は、意識を失いかけてしまった。


次の瞬間、両肩に優しく手を置いた仲間二人が、二階堂の意識を引き留める。


「諦めちゃダメよ二階堂!私たちがついてるわ!」


「鬼灯ちゃんが命懸けで頑張ってくれたんだ!諦めるわけにはいかないよ!」


立ち上がったノアとエットに鼓舞され、二階堂は再び構えを取った。


「…ありがとな二人共、よっしゃあ!行くぜ!!!」


「覚悟しなさい!!織江凛!!」


二階堂とノアが突風の如く飛びかかり、凛はすかさず魔法で迎撃しようと試みる。

すると二人の後ろからエットが、勢いよく鉄の矢を放ってきた。


「ちっ!今さら通ると思ってんの!?こんな矢なんかさぁ!!」


光線で飛んでくる矢を撃ち落とした凛は、瞬時に接近する二階堂とノアを、爆破で仕留めようとする。

二人のいる場所が発破する寸前、巻き上がった突風を利用して、エットが魔法で風を操作した。


「ウィンドコントロール!!爆風を二人から引き離せ!!」


エットが爆破魔法を横に移動させ、二階堂達に被害が及ばないよう、離れたところで爆破させる。


「っ!!盲目の彼にそんな力が…!」


驚愕する凛へ肉薄した二人は、攻撃態勢に入る。

すかさず凛はアンデットを盾にし、彼らの近接攻撃を無効化しようとした。


だがガーゴイルと化したノアの前には無力であり、大きく強力な彼女の拳が凛を捉える。


「ぐっ…!ご…!」


被弾した凛が態勢を整える間もなく、二階堂がすかさず拳を振り放った。

能力を成長させた彼の攻撃が、ついに織江凛へと叩き込まれる。


「ぐああああぁぁぁぁ……!」


全身を干からびさせながら、地面に吹き飛ばされる凛。

攻撃の成功した二人に間合いを詰められ、彼女は取り乱して声を上げる。


「い…いい気になるんじゃなわよクズ共!!あなた達と戦わずとも、私は国を滅ぼせるんだから!!」


次の瞬間、織江凛は天井を突き破り、屋敷の上空まで飛翔した。


「死霊術網羅書と飛翔能力がある限り!!私は好きな場所を地獄へと変えられる!!

 あなた達は地べたで指咥えて見てるがいいわ!!!」


屋敷から逃走しようとする凛を、二階堂は見上げることしか出来なかった。


「くっ、くそ!!奴に空へ逃げられたらどうすることも出来ない!!あと少しだったのに…!」


すると悔しがる彼に対し、少し考え事をしていたノアが話しかける。


「…二階堂、アンタ触れたものを成長させられるのよね?ちょっと私に考えがあるんだけど」


ノアは元の姿に戻ると、翼を大きく羽ばたかせ、辺りに風を巻き起こした。


「私は飛べない吸血鬼よ。でも今飛べないだけで、いつかは飛べるようになるかもしれない。

 その“いつか”を成長で早めてほしいの!お願い!私の翼を成長させて、空を飛べるようにして!!」


気迫を纏わせ懇願するノアに、二階堂は眉を顰めて答える。


「い、いいのか?飛べる保証はないし、飛べても奴に落とされれば助からない。かなり危険な賭けだ」


「そんなことで日和ってる場合じゃないわ、私は命を賭して織江凛を止めなきゃいけないの!」


ノアの決意を受け取り、二階堂は頷いて翼に触れる。

二階堂は能力を大きな翼に流し込み、飛翔出来るよう全力を尽くした。


そして突如、天井の空いた書斎の空気が一変し、大きな音と共にノアの翼が成長を始める。

メキメキと形状を変えた大きな翼は、ノアを一瞬で空に誘うほどの姿に変形した。


「っ!!こ、これは…!」


「行ってくるわ、任せて。奴を叩き落としてくるから」




上空に飛翔した織江凛は、逃走方向を見定めると、飛行能力を使用し屋敷を去ろうとする。


「ふ、フフフ!!中々やるようだけど、私はあなた達に構うほど暇じゃないのよ!

 また場所を変えて、王都を襲ってやるわ!!見てなさい!!この国はもう終わりよ!!」


邪悪な笑みを浮かべる織江凛、すると彼女の元に一人の吸血鬼が牙を向いた。


「待ちなさい!!絶対に逃さないんだから!!!」


翼を靡かせ上空へと接近するノアに対し、凛は驚いた表情を浮かべる。


「ば、バカな!?あの中に空を飛べる奴がいるなんて!!」


突如自身の領域である空中に、敵が足を踏み入れ、凛は杖を向け迎撃態勢に入った。


「フフッ!!だからなんだってのよ!!空中戦で私に勝とうなんて思い上がらないことね!!」


空飛ぶノアに向かって一直線に光線が放たれる。

彼女は回避を試みるも、ギリギリで足に接触してしまった。


「くっ!今初めて飛んだ私と、飛行能力を使いこなすアイツじゃ、実力に差がありすぎる!

 …いいえ、諦めちゃダメ!なんとしても織江凛を仕留めるのよ!!」


軽傷を負いながらも、構わず接近するノア。凛は彼女を撃墜させる為、再び杖で魔法を唱えた。


「さっきあなたを一撃で黙らせた爆破魔法よ!!今度こそ木っ端微塵にしてあげるわ!!」


爆破魔法がノアへ襲う刹那、彼女の目前で発生した爆風が、

突如横に移動し、離れたところで爆破する。


「っ!?なっ!?」


驚愕した凛が屋敷を見下ろすと、穴の空いた天井から、

エットが両手を掲げ、魔法を唱えていた。


「空いた天井から室内へ、風は十分吹いてるよ。

 君がノアちゃんを爆破しようとしても、僕の目が黒いうちは不発させてやる!」


「ちっ!余計なことを__


凛が口を閉じる前に、攻撃を次々と潜り抜けたノアが、ついに至近距離へと近づいた。

必要な高度まで浮上したノアは、姿をガーゴイルへと変化させ、巨大な拳を振り放つ。


「くらいなさい!!織江凛!!」


気迫を纏い攻撃するノア、しかし凛は不敵な笑みを浮かべていた。


「フフッ、バカね。言ったでしょ?空中で私に勝とうなんざ思い上がるなって」


凛は横に移動し、ノアの攻撃を容易く避けてしまう。

攻撃を外したノアは、ガーゴイルになった自身を翼で支えきれなくなり、突如滑空能力を失った。


「残念だったわね。迎撃を掻い潜って私へ近づいてきたのに、渾身の攻撃を避けられたんじゃ意味ないわ。

 デカくて重たい化け物の姿のまま、醜く哀れに墜落しなさい」


「そうね…!私が人間の姿で飛んだのは、ガーゴイルの姿だと重くて飛べないと思ったからよ。

 そして攻撃時にガーゴイルへと変形したのは、攻撃威力を最大限上げるため、

 ガーゴイルになったら飛行能力を失うことも、承知の上で空中で変身したのよ」


すかさずノアは大きな体を広げ、凛の頭上から勢いよく落下した。


「逆になんで落ちるのを承知の上で、ガーゴイルに変身したと思う?」


「っ!!ま、まさか!?」


ガーゴイル状態のノアが、全体重を凛に乗せ、凄まじい速度で屋敷へと降下する。


「ぐぶっ!!わ…私を道連れに墜落する為に…!わざと重い巨大形態へ変身したのね!!」


「そういうこと!さあ一緒に地面まで付き合ってもらうわ!」


二人は最高速を維持したまま、真下の屋敷内部へと墜落した。

巻き起こる煙をかき分け、二階堂とエットが様子を確認する。


「ノ、ノアちゃん!!」


エットが声を上げた瞬間、煙の向こうから彼女に向かって、鋭く光線魔法が放たれた。


「っ!!がはっ!」


「調子に乗るんじゃないわよ…!あなた達風情が私を倒そうなんて、痴がましいのよ!」


二階堂はエットを撃たれ、怒りを織江凛にぶつける。


「くそっ…!この野郎!!」


勢いよく突撃する二階堂へ、凛は魔法で迎撃しようとする。

次の瞬間、彼女の背後からノアが奇襲を仕掛け、力いっぱい凛を羽交締めにした。


「今よ二階堂!!コイツに拳を叩き込んで!!」


「ちっ!邪魔よ吸血鬼!!雑魚は引っ込んでなさい!!」


凛はすかさずノアの横腹に光線を撃ち込み、彼女の捕縛から解き放たれる。


「うぐっ!!く…!」


体の自由を取り戻した凛は、素早く杖を向け、二階堂に魔法を唱えた。


「今度こそあなたの脳天に光線をぶち抜いてやるわ!!死になさい!!能力者ァ!!」


凛の杖に光が灯る刹那、地面に倒れたエットが力を振り絞り、魔法で風を操る。


「か…風よ…落とされた矢を…敵の元へ…!」


すると凛の光線に叩き落とされ、地面に転がったエットの矢が、

風で上に舞い上がり、凛の腕へと突き刺さった。


「うぐっ!?な、なに!?」


被弾した腕に杖を持っていた凛は、衝撃で杖の向きを動かしてしまう。

あらぬ方向へ向いた杖の先端から、光線魔法が発射されるも、二階堂を捉えることは決してなかった。


「っ!!しまっ__


一瞬の隙をついた二階堂が、凛へと思い切り拳を叩き込んだ。

攻撃を食らった織江凛は、みるみるうちに老婆のような姿へと変貌を遂げる。


「ぐっ…!よ、よくもぉ…!よくも私をこんな醜い姿に変えたなァ!!!!

 殺す!!殺してやるわ!!ゴミクズ野郎!!!」


地面から立ち上がった凛は杖を突きつけ、二階堂に全力で魔法を使用する。


「魔法も使えないただの能力者が、色んな魔法を使いこなす能力者の私に、勝てると思ってるの!?

 完全上位互換だということを認識した上で、逆らったことをあの世で後悔しなさい!!」


二階堂に向かって、四方八方から光線魔法が唱えられた。

全方位から来る攻撃に対し、彼は被弾を覚悟する。


彼の胴体を光線が貫くに見えた次の瞬間、


“体に触れた光線魔法”が“一瞬で全て消滅”した。


「なっ!?なんですって!?」


「こ、これは…」


度肝を抜かれた織江凛と同じく、唖然とする二階堂。

凛はそんな彼に恐怖を覚え始め、感情をかき消すが如く、次なる魔法攻撃を仕掛けた。


「くっ!も、もう二度とあんな奇跡は起こらないわ!!苦しむ間も無く消し炭にしてあげる!!」


二階堂の目の前が音を立てて爆発し、凛の爆破魔法が炸裂したことを知らせる。

しかし湧き立つ煙の中から、擦り傷一つ付いていない二階堂が姿を現した。


攻撃魔法を受けたはずの自身が、無傷なのを見て、二階堂はふとギルドで起こった現象を思い出す。


(あの時俺の能力は、ギルド試験官の召喚した魔法を消すことが出来た。

“召喚時間に制限のある魔法を、時間進行でリミットまで加速させた“からだ。


もし仮に“唱えた魔法が術者の元を離れた後、時間経過で消滅する”のだとしたら…?

俺の能力はギルドの時と同じ原理で、魔法を消すことが出来るんだ!!)


二階堂は自身の能力に、新たな可能性を見出し、希望を浮かべた眼差しを凛に向けた。


「成長した俺は、全身のどこに触れても能力を発動出来る。

 お前がどこから、どんな、どれだけの魔法を撃ってこようが、通用することはない」


「は、ハァ…?冗談言わないで!!私の魔法が通用しない奴なんてこの世に居ないわ!!」


「今もう実践して見せたろ、これでお前と俺の差は無くなったわけだ」


構えを取り突撃態勢に入る二階堂へ、凛は殺意と共に杖を向ける。


「私との差がなくなったァ?思い上がるんじゃないわよ!!魔法も覚えてない下級能力者がああ!!」


二階堂に光線が放たれるも、彼は頭部に接触させつつ、魔法を消して飛びかかった。

攻撃が無効化された凛は、すかさず爆破魔法を唱える。

激しい爆発を起こし、巻き上がる黒煙の中から、無傷の二階堂が突撃してきた。


「な、なんで…なんで魔法が効かないのよぉ!!」


肉薄する二階堂を隔てるように、アンデットを盾にして防御する織江凛。

アンデットを殴り飛ばし、至近距離まで近づいた二階堂へ、凛は胸元に光線を打ち込んだ。

だが能力を使用した彼には、いくら貫通力の高い光線魔法も、無力と化してしまう。


「っっ!!!きょ、距離を…!」


すかさず後方へ飛び上がろうとした凛の胸ぐらを掴み、二階堂は勢いよく拳を叩きつけた。


「ぐ…!ごっ…!」


ミイラへと着実に近づく凛は、全身から力が抜けていく。

地面に倒れ込む彼女に対し、二階堂は冷たい声で語りかけた。


「もう、終わりだ」


ゆっくりと歩み寄る二階堂へ、凛は最後の力を振り絞り、魔法を放つ。


「何が終わりよ…!お前を殺して…!私はこの国を支配してみせる…!

 我らの野望はここで終わるものかアアアアアア!!!!!!」


杖から唱えられた爆発魔法は、二階堂の頭上にある天井を爆破し、崩れ落ちた瓦礫が彼を襲う。


二階堂は冷静に手を上に掲げ、迫り来る瓦礫に触れると、能力で木っ端微塵に風化させた。


「能力者のお前が犯した悪事は、能力者の俺がケリを着ける。

 最初から決めていたことだ」


「っ!!」


二階堂は横たわる織江凛の体へ、静かに手で触れる。

彼女の身体はこれ以上ないほど干からび、全身を痩せ細らせ、ついには生気を失わせた。


「く…そ…!もっと…役に…立ち…たかった……」


瞳を白く染め上げ、魂を天に昇らせた織江凛は、無念を浮かべ息を引き取った。


「…やっと、終わったんだな」


静まり返る書斎の中で、二階堂は戦闘の緊張感から解放される。

こうして王都の存続をかけた、織江凛との戦いが幕を下ろしたのだった。


彼女の手から死霊術網羅書を取り上げると、本に纏わりつく不気味なオーラが消滅し、

召喚士のいなくなったアンデット達は、灰のようにこの世から散っていく。


王国から召喚されたアンデットがいなくなり、王都防壁を攻めていたアンデットの群れも、

一斉に灰と化して消えていった。正真正銘今回の騒動を収めた二階堂は、倒れた仲間の元へ向かう。


「ノア!エット!しっかりしろ!!」


倒れ込む二人を呼び起こし、二階堂は肩を担いで立ち上がらせる。


「う…うぅ…二階堂…?」


「ぼ…僕達勝ったの…?二階堂くん…」


「二人とも目を覚ましたか!!大丈夫、もう終わったんだ。

 織江凛を倒して、死霊術網羅書も奪還した。一件落着だ」


二階堂が二人を安堵させると、ノアが辺りを見渡し、寂しさを身に宿す。


「鬼灯は…やっぱりもう…」


「っ!!…あぁ、もう体すら見当たらない」


暗い顔を浮かべながら、拳に力を込める二階堂。

彼の悲しみを受け止めたエットが、焼け跡を眺め言葉を呟く。


「彼女は異世界人でありながら、この国の為に命を懸けてくれた。

 ルデリシア王国の元王女として、僕は鬼灯ちゃんを誇りに思う。

 彼女の守ってくれたこの王国を、必ず守り抜いてみせると誓うよ」


決意を固めるエットと共に、二階堂もまた鬼灯の意志を引き継いだ。


「お前の無念は俺が必ず…必ず晴らしてみせる。

 もっともっと強くなって、いつか元の世界に帰って、必ず“奴”を倒してみせる。

 だからあの世で見ていてくれ、…鬼灯の姉貴」


二階堂達は深く瞼を閉じ、仲間の死を弔うと、静かに書斎の扉へ手をかけた。

アンデット騒動に終止符を打った勇者隊は、灰が舞い散る屋敷を後にし、王都へと距離を縮める。


平和を取り戻した王国の大地を、三人は戦車で駆けるのだった。

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