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第27話 王都防衛戦

王宮を出た二階堂達勇者隊は、攻撃を受けた王都南の防壁へと到着する。

防壁の外側では、既にアンデットと騎士団が交戦していた。


「よし、俺達も加勢しに行くぞ!!」


四人は門から王都の外へ出ると、王都を防衛する騎士団達に混じり、アンデットと戦闘を繰り広げる。

エットが周囲に目を配ると、外壁に不可解な跡が出来上がっていた。


「こ、こんなに大きなクレーター、一体誰が…」


次の瞬間、遠くから巨大な岩が、防壁に向かって飛んできた。

すかさず飛ぶ鳥を落とす勢いで、何者かが盾で岩を防ぎ、王都への攻撃を阻止する。


「この騎士団長エドナがいる限り、王都への侵攻は一歩たりとも許さん!!」


大きな盾を構え、エドナが騎士達を率いてアンデットの前に立ち塞がった。

彼女の頼もしさを背中に受けながら、二階堂達は岩の飛んできた方向に視線を移す。


「どうやら岩を投げつけてきてる奴が、防壁にクレーターを作ったみたいね」


「…ん?あれは…」


二階堂が怪訝な顔をする中、防壁付近で戦う者達の前に、

天にも届くほどの巨体をしたアンデットが姿を現す。巨大な岩石を投擲していたのが誰なのか、

一目で把握出来る大きな手を握りしめ、巨大なアンデットは、咆哮で大地を震わせた。


「ぐっ!想像以上のデカブツじゃねえか!!

 いいねえ!それぐらいじゃないとアタシは満足しねえぜ!!」


鬼灯は両手に炎を激らせ、巨大なアンデットに向けて火炎を放射する。

そんな彼女の横から、通常のアンデットが勢いよく迫ってくるも、

エットの援護射撃が、敵の頭部に当たったことにより、鬼灯は被弾を免れた。


「鬼灯ちゃんは奴を攻撃して!周囲のアンデットは僕が引きつけておくから!」


「助かるぜエット!うぉおおおお!!!!燃え上がれええ!!デカブツ!!!」


鬼灯が巨大アンデットに火炎放射をし続ける。

痛がる素振りを見せるも、アンデットは強引に炎を薙ぎ払い、鬼灯に向かって手を伸ばした。


「っ!?そんな!?か、硬すぎて燃えやがらねぇ!!」


鬼灯は迫り来る手に掴まれ、巨大アンデットに体を締め上げられる。


「ぐっ!!ぐあああああああ!!!!」


悲鳴を上げる鬼灯を助けるべく、ノアがガーゴイルに変身し、掴んでいる腕に打撃を加えた。

しかし打撃にびくともせず、巨大アンデットは鬼灯を締め上げながら、逆の手でノアを殴り飛ばす。


「きゃあああああああ!!!」


地面に叩きつけられたノアは、衝撃のあまり変身を解かされてしまう。

すると巨大アンデットは、締め上げていた鬼灯を手から離し、音を立てて地面に落下させた。


「な…なんて…強さだ…!」


「わ…私の…ガーゴイルが…足元にも及ばないなんて…」


無力化した二人に目もくれず、巨大なアンデットは援護射撃するエットへ標的を変え、

彼女に向かい距離を縮めた。


「くっ!!ぼ、僕のところに来てるのか!!マズイ、距離を取らな__


エットが動き始める刹那、アンデットは拳を勢いよく振り下ろし、盲目の彼女に攻撃を仕掛けた。

その場から退避する前に攻撃を仕掛けられ、エットが無防備で被弾しかけた刹那、

二階堂がエットに向かって飛び込み、瞬時に攻撃範囲から脱出した。


「大丈夫かエット!?怪我は!?」


「う、うん、ありがとう二階堂くん!」


抱きかかえたエットを地面に下ろし、二階堂は巨大なアンデットを見上げる。


「お前、やはりあの時の…」


二階堂は既視感を覚えつつも、アンデットの振り下ろす拳を跳んで避け、腹部に向かって拳を叩き込む。

しかしアンデット相手に二階堂の能力が効くわけはなく、彼は有効打を与えられずに地面へ着地する。


「すっかりアンデットになっちまって、王都に群れを連れて攻め込んできて、

 本当にお前がやりたかったことかよ」


二階堂に向かって再び大きな拳が振り下ろされる。

彼は後ろに跳んで攻撃を避けると、間合いを取って口を開く。


「…そんなわけねえよな、分かってるよ」


すかさずエットが、アンデットの眉間に矢を射撃する。しかし硬い皮膚に弾かれてしまうと、

彼女もまた、二階堂と同じ既視感に襲われた。


「この皮膚の硬さ、どこかで…

 ま、まさか!?」

 

エットが既視感の正体に気づくと、二階堂の表情に陰りが見える。


そう、この巨大なアンデットとは、元々森で二階堂達を襲ったオーガなのだ。


巨大になりつつも面影ある姿、鉄の矢を弾くほどの皮膚、

そしてオークとして生きられず魔物と化した悲しき瞳に、二階堂は正体を気づかざるおえなかった。


かつて悲しみから解き放つため、トドメを刺した二階堂にとって、

このオークと再び対峙することは、あまりにも気が重かった。


しかし二階堂は自身の気持ちを殺し、覚悟を決めた表情を浮かべ、オークに構えを取った。


「お前が王都を狙うのであれば、俺は全力で立ち塞がる。

 勇者隊として王都を護るよう王女から引き受けたんだ、今さら唾は飲めねえよ」


二階堂は拳を握りしめ、力を込めて”自身を成長“させた。

 

「ハァアアアアア!!!!!」


髪を逆立て、周囲に威圧感を漂わせた彼は、すかさずアンデットに飛び込んだ。

アンデットが腕を薙ぎ払うも、二階堂はスライディングで回避し、足元の地面に両手を付ける。


すると能力によって地盤が崩壊し、奈落へと落下する巨大アンデット、だが巨大な墜落音がした刹那、

すざましい勢いでよじ登ってくるアンデットは、穴から身を乗り出し、二階堂へと腕を薙ぎ払った。

二階堂がバク転で攻撃をかわすも、穴から這い出たアンデットが彼を踏み潰そうとする。


巨大な足が激突する刹那、接近したエドナが盾で受け止め、二階堂の身を守った。


「!?エドナ!!」


「くっ!!は、早くここから離れるんだ!!急げ!!」


すかさず二階堂が退避すると、エドナは盾を押し上げ、巨大な足を振り払う。

アンデットはエドナに手を伸ばすと、盾ごと彼女を掴み取り、防壁まで投げ飛ばした。


「くっ!!エドナ!!」


防壁に土煙が立つ中、二階堂は再びアンデットと相対する。


「こんな…こんなことお前も望んでねえだろ!!誰かにアンデットにされちまったんだろ!?

 お前は安らかに逝きたかったはずだ!!こんな侵略行為したくねえはずだ!!

 ゆるせねえ…!俺はお前にこんなことさせてる奴が許せねえ!!」


二階堂は全身の力を振り絞り、アンデットに向かって飛びかかる。

しかし腕を薙ぎ払ったアンデットに阻害され、二階堂は両手で防御するも、

遠くの地面まで叩きつけられてしまう。すると意識が途絶えそうになる彼に対し、一人の男が声をかけた。


「けっ、だらしねえな、それでもAランク冒険者かっての」


斧を担いだアスファルトに手を差し出され、二階堂は掴んで地面から立ち上がる。


「うるせえ、少し休んでただけだ」


「嘘つけ、オレが来なかったら死んでただろうが」


二人は構えを取ると、力を込めて戦闘状態を整えた。


「悪いけど本気で行かせてもらうぜ、バーサーカーダイブ、狂化ァ!!!」


狂化したアスファルトと成長した二階堂が、巨大なアンデットへ飛びかかる。

アンデットは地面から岩を持ち上げ、二人に向かって投げつけた。

すかさず二階堂が岩に触れて崩壊させると、アスファルトは岩の陰から飛び出し、顔面を斧で斬りつけた。


しかし刃が硬い皮膚に弾かれ、瞬時にアスファルトは大きな手で掴まれてしまう。

巨大なアンデットに掴まれながらも、手斧で手に攻撃するアスファルト、だが彼の攻撃は届かず、

アンデットは勢いよくアスファルトを、二階堂の元に投げ飛ばした。


「くっ!!危な__


二階堂は投擲攻撃を回避するも、避けた先にアンデットが蹴りを放ち、

勢いよく地面へ蹴り飛ばされてしまう。


「が…は…!」


意識が朦朧とする二階堂の目の前で、エットに近づいた巨大アンデットが、

足を振り上げて彼女を踏み潰そうとする。


「っ!し、しま__


巨大な足に下敷になったエットは、音を立てアンデットに踏み潰されてしまった。


「っ!!エ…エット!!」


二階堂は身体中が震え、歯を食いしばり、力一杯拳を握りしめる。


すると決意に満ちた表情で立ち上がり、ふらつきながらも、巨大なアンデットに視線を向けた。


「俺はお前をここで倒す!王都の為に、お前の為に、そして戦った仲間の為にだあああ!!!」


二階堂は全身の生気を振り絞り、己の力を全て解き放つ。

圧倒的な威圧感を纏い、彼はアンデットに飛びかかった。


猛スピードで突進した二階堂の拳は、アンデットの腹部に突き刺さる。

しかしアンデットは気にせず、彼を地面に叩きつけた。


二階堂はすかさず地面から立ち上がり、再び突進攻撃を仕掛ける。

アンデットは腕を薙ぎ払って迎撃し、二階堂を空中ではたき落とそうとするも、

彼は攻撃を貰いながら、アンデットの手に捨て身で触れる。


だが能力が発動することはなく、無情にも二階堂は地面に激突した。


「く…くそ…!アンデットに…俺の能力が通用しない…!だが…諦めるわけにはいかねえ!!」


二階堂は足元に接近し、再び地盤を崩壊させようとした。

しかしアンデットに掴み取られ、行動を阻止されると、掴んだまま地面に叩きつけられる。


「うぐっ!!が…は…!」


アンデットはそのまま足を振り上げ、二階堂を踏み潰そうとする。

意識が途絶えかける中、二階堂は瞬時に跳び上がり、アンデットの攻撃を回避した。


ボロボロになりながらも、二階堂はファイティングポーズを崩さず、不屈の精神でアンデットと相対する。


「絶対…負けられねえ!!ここにいる皆の為に、俺は絶対勝ってみせる!!」


能力を怪我の治療に費やし、二階堂は深く息を吐いた。


(今ある体力で、奴を殴れるだけ殴る、俺に残された道はそれしかねえ)


しばらく戦場に静寂が宿る中、アンデットは回復する二階堂に近づく。

間合いを詰められると悟った二階堂は、思い切りアンデットの巨体に肉薄した。


巨大なアンデットの体に、二階堂の拳が突き刺さる。すかさずアンデットがはたき落とそうとするも、

彼は巨体を蹴り飛ばし、顎先に向かって跳び上がると、拳を硬い皮膚に激突させた。


「ハアアアア!!!!」


跳ね上がった頭に向かって、二階堂は両拳を固め、アンデットの顔面に叩きつけた。

だがアンデットは、平然と彼を摘み上げようとする。二階堂は顔面から跳び上がり、

後頭部まで移動すると、思い切り裏拳をアンデットに激突させた。


『グ…グアアアアアアアアアアアア!!!!!!!』


アンデットが振り返りながら、同じく裏拳を二階堂に放つ。

彼は急降下して攻撃をかわすと、地面に着地し、再度高く跳び上がった。


巨大な顔面まで跳び上がった二階堂は、拳から血を流しながらも、アンデットに何発も打撃を加える。


「こんなことしたくねえよ!!俺だってお前を寝かせてやりてえよ!!

 だから早えとこ楽になってくれ!!頼むから!!!」


二階堂に掴みかかろうとするアンデットの手を、彼は拳で弾く。

しかし彼と巨大なアンデットの力量差は明らかであり、

それも元オークの成れの果て、オーガが以前の姿ともなると、二階堂に勝ち目はなかった。

弾かれたアンデットの手は、再度二階堂の全身を捕らえ、力一杯彼を握りしめる。


「う…!うぉおおおおおおおお!!!!!!」


二階堂は掴むアンデットの手に触れ、全身全霊で能力を使用する。

だが時間進行の効果が現れることはない。アンデットは彼を、地面に強く叩きつけた。


「ぐ…!ま…まだだ…!」


血を吐きながら地面に手をつき、ゆっくりと立ち上がる二階堂。

彼の目はまだ死んでおらず、決意に満ちた瞳を浮かべ、アンデットに歩み寄る。


「お…俺は…!必ずお前を能力で楽にしてやる…!

 オーガとして暴走し、アンデットとして利用されたお前を…必ず…!」


二階堂は勢いよく跳び上がり、拳を突き出して肉薄した。


「解放してやるんだああああ!!!!!」


二階堂の拳がアンデットの顔を突き上げ、諦めず能力を発動させた。


『グ……ガ………!』


すると今まで何の効果も受けなかったアンデットが、不意に感情を抱き始める。


『…コ……コレハ………アノ……トキ……ノ…!』


アンデットが何かを思い出しかける刹那、二階堂が再び拳を振り放つ。


二階堂の拳が接触すると、再度アンデットは味わったことのある感覚に襲われた。


『オ……オイラハ………コイツニ………ラクニシテ……モラッタンダ……!』


二階堂が拳をアンデットに振り下ろすと、もう一度能力の感覚を身に覚えるアンデット。


『コノ……ユルヤカナ…カンカク……ユルヤカナ…シ…

 オイラハイチド…コイツニ…カイホウシテ…モラッタ!!』


アンデットは後ろに怯み、大きな音を立てて踏みとどまる。

アンデットである彼に、二階堂の能力は効いていなかった。


しかしオークである彼は、一度味わった二階堂の能力を、

一度受けた二階堂への恩を、脳裏の奥底から思い出したのだ。


オークは理性を取り戻し、真っ直ぐな瞳を二階堂に向ける。


「っ!!お、お前…!」


『ヨ……ヨウヤク……メガ……サメタヨ……』


「フッ、お前に届いてよかったぜ、あの時与えた”能力の感覚“をよ」


二階堂は何度も能力を打ち込んだが、最初から効果を与えようとはしてなかった。

彼に前与えた能力の感覚を、穏やかに進む時間の感覚を、思い出して欲しかっただけだった。


二階堂は正気を取り戻したことを察し、全身の力がぐったりと抜ける。

するとエットがいた方向から声が聞こえ、二階堂は振り返り視線を向けた。


「大丈夫、エットは無傷よ。私が全身で防御してなかったら、流石に危なかったわ」


エットが踏み潰される寸前、ガーゴイル形態になったノアが滑り込み、

彼女を庇って攻撃を防いでくれていたのだ。


「の…ノア!!よく守ったぞ…!よくやってくれた!!」


二階堂は地面に座り込みながら、仲間が助かり喜びを覚えると、オークに対して言葉を送った。


「お前!アンデットを全員退かせることは出来ないのか?」


『オ…オイラガ…ヒキイテル…ワケジャナイ…カラ…

 デモオイラハモウ…コウゲキシナ___


オークが言い終える刹那、後頭部から謎の光線が撃ち抜かれ、彼は生命感なく崩れ落ちた。


「っ!?な、なに!?」


「ハァ、あの二人に次いで、ペットちゃんまで使い物にならないなんて、とんだ出来損ないどもね」


空中に浮くローブを纏った女に対し、二階堂は強く尋ねた。


「だ、誰だテメエは!!?」


「ウフフ、私はこのアンデット達のママ、”オリエリン“よ。

 随分やってくれたじゃないのアナタ達、私の可愛い僕を三体も撃破してくれちゃってさ」


ついに姿を現したオリエリンに、二階堂達は驚愕した。

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