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第19話 命を懸けた報酬

意識を失っていた鬼灯の瞼がゆっくりと開き、彼女を現実へと引き戻す。


「こ…ここは?」


鬼灯が辺りを見渡すと、目の前にドラゴンの死骸が横たわっていた。

目を丸くし驚く彼女へ、二階堂が声をかける。


「おう気が付いたか鬼灯、まだ治療中だからじっとしてろよ」


全身傷だらけになった鬼灯の体を、二階堂が能力を使って治療する。

彼はドラゴンを倒した後、崖下まで移動し、鬼灯達の治療を行なっていた。


「お、お前、ドラゴンを倒したのか?一体どうやって!?」


「フッ、俺一人の力じゃねえよ。ともあれクエストは達成した、

 怪我が治ったらギルドへ報酬を貰いに行こうぜ」


二階堂は能力を使いながら、ビラに書かれた報酬金額を指差し、鬼灯に笑みを浮かべる。

すると彼女は、ドラゴンの死骸に視線を移し、口角を上げ二階堂へ笑い返した。


「なあ二階堂、報酬も貰うっちゃもらうが、ドラゴンの素材はどうするよ?」


「ドラゴンの素材?あの死骸から取るのかよ。なんでまた…」


「バカ言ってんじゃねえ、ドラゴンの素材はどの部分をとっても高額で売却できんのさ!

 鱗一枚だけでも、それこそ馬車一台買えちまうほどな!!」


「なに!?じゃあさっきの戦闘でかなり傷ついてるが、このドラゴンの体から素材を剥ぎ取れば、

 めちゃくちゃ金になるんじゃねえのか!?おいおい一気に大富豪だな俺達!!」


治療を終えた鬼灯が急いで立ち上がると、二階堂と共にドラゴンの体を剥ぎ取った。

ウキウキで盛り上がる二人を見て、そばにいたアスファルトが静かに立ち去ろうとする。

そんな彼に気づいた二階堂が、大きな声を出し呼び止めた。


「おーい!お前は報酬どうすんだよ!脳筋野郎!」


「…けっ、そいつはオレが倒したわけじゃない。

 自分が完遂したわけでもないクエストの報酬なんか、受け取れるかよ」


冷たく返答したアスファルトに対し、二階堂はため息を吐きながら、鬼灯にある物を要求する。


「なあ、素材袋持ってねえか?冒険者やってんなら何枚かあるだろ?」


「え?あ、ああ、そりゃあるけど…」


二階堂は受け取った袋の中に、ドラゴンの鱗をたんまり入れ、黙ってアスファルトの方に投げつけた。


「あ?んだよこれ」


「俺はタダ働きさせて胡座かくほど腐ってない、それはお前の分だ。黙って受け取っとけ」


「ふざけんな、お情けなんていらねえんだよ」


「アホか、お前は曲がりなりにもあのドラゴンと戦って、奴を倒す手助けをしたんだよ。

 正直俺一人で奴と戦ったところで、鬼灯を救う事はできなかった。だからこれで貸し借りなしだ。

 分かったらそれ持って、さっさと消えろ」


二階堂はドラゴンの素材を剥ぎ取りながら、アスファルトに冷たく台詞を吐く。

アスファルトは渡された素材袋を手に取り、舌打ちしながらその場を去る。


「ちっ、くだらねえ…」


必死に剥ぎ取った素材を袋に詰め込む二階堂に対し、鬼灯はニヤけながら語りかけた。


「にししっ、お前らさては似た者同士だな?素直じゃねえところといいよ」


「うるせえ、黙って剥げっての」


二人は満タンになった素材袋を担ぎ、冒険者ギルドまで帰還した。




ギルドの扉を開き、カウンターまで直行する二階堂と鬼灯は、クエスト完了を受付嬢に伝える。


「クエストクリアお疲れ様でした、あのドラゴンはS〜Aランク推奨になる程の対象だったのですが、

 流石Sランク冒険者の鬼灯さんですね、それに…」


受付嬢がカウンターから身を乗り出し、二階堂のことをじっと見つめる。


「新人とはいえど、二階堂さんの実力もかなりのものですね。

 流石ギルドマ…ゲフンゲフン、試験官を倒しAランクをもぎ取ったお方です」


「まあ俺一人でクエストに挑んでたら、多分死んでたけどな」


「いいのですよ、冒険者にとってパーティーや仲間との連携は、基本中の基本ですから。

 それではクエスト完了を確認しましたので、報酬を差し上げます」


すると受付嬢は、金貨の詰まった袋をカウンターに置き、二人へ報酬を差し出した。


「なあ二階堂、お前ここの通貨の価値って知ってるか?」


「旅の途中、一緒にいた仲間に教えてもらったよ。

 日本円に直すと、銅貨一枚千円、銀貨一枚一万円、金貨一枚十万円ぐらいだろ?」


「ああ、んでこの袋には金貨が百枚以上は入ってる!!つまり一クエスト行っただけで、

 一千万円以上も稼げるってこった!!これだから冒険者はやめらんねえぜ!!」


「そのかわりドラゴンに全滅されかけて、瀕死の状態でようやく手に入れなきゃならないんだけどな。

 本当ハイリスクハイリターンってわけだ」


鬼灯と二階堂は大金を受け取ると、次に持ってきた素材袋をカウンターに置いた。


「あーそうだ受付のねーちゃん、倒したドラゴンの素材を剥ぎ取ってきたんだけどよ。

 よかったら換金してくれねえか?」


「かしこまりました、素材鑑定士に見せますので、しばらくお待ちください」


受付嬢は素材袋を回収し、ギルドの奥へ運んでいく。

しばらくして受付へ戻ってきた彼女は、二人に今度は金貨の入った箱を差し出した。


「こちら全て換金しましたところ、金貨五百枚に引き返させてもらいます」


「き、金貨五百枚…!日本円に直したら五千万円…

 討伐報酬と合わせて六千万円相当も稼いじまったぞ!?」


「こりゃあ命張る価値あるだろ?なあ二階堂?」


「ぼ、冒険者が多い理由が分かる気がするぜ、宿代なんかいくらでも払えるな…」


「なんだ?二階堂お前、宿代稼ぐためにクエスト受けてたのか?」


「ああ、金稼いだら仲間のとこに合流する手筈だったんだ。

 そろそろアイツも用を終えてるだろうし、俺も騎士団のところへ行ってみるか」


二階堂が鬼灯と報酬を二分し、分け前を袋に詰めてギルドの出口へ向かおうとする。

すると彼は途中で足を止め、鬼灯の方へ振り返り、声色を変えて提案した。


「なあ鬼灯、俺と一緒に組む気はないか?俺達ならこの世界でも生き残っていける気がするんだ。

 もしお前が冒険者として、ギルドで実力をつけたいってんなら強制しないが、

 一緒に冒険してくれるなら…」


「おいおい二階堂、なにもう別れる前提で話進めてんだ?せっかく自警団で弟みてえに育ててきたお前と、

 異世界で再会出来たんだ、最後までついてってやるよ。弟の面倒を見るのは姉の役割だろ?」


「フッ、お前を姉と認めた覚えはないぜ。…これからもよろしくな、鬼灯」


二人はお互い腕を組んだ後、肩で風を切って外に歩き始めた。

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