第17話 異能力者vsドラゴン①
ドラゴンの討伐クエストを受注した二階堂と鬼灯は、対象が住まう山岳地帯まで足を運んでいた。
幾つもの岩山が聳え立つ山岳を登り、二階堂は息を切らして鬼灯についていく。
「こ、こんなところに…ぜぇ、ぜぇ、ドラゴンなんていんのかよ?」
「何言ってんだ、ドラゴンの住処といえば、険しい山の上だろうが。
つーかそんなにへばりやがって、都会のぬるま湯で育った現代人の性だな」
「うるせぇ!お前が異世界に順応しすぎなんだよ!」
山岳の中腹まで来たあたりで、二階堂は一度足を止め、クエストの詳細が書かれたビラに視線を移す。
「討伐対象は“飛行系大型魔獣”、推奨ランクS~A、報酬は…金貨がたんまり貰えるらしい」
「討伐理由を見てみろよ。どうやら山の麓にある村の一つが、討伐対象のドラゴンに焼かれたらしいぜ?
これ以上被害を出さねえために、冒険者ギルドへ討伐要請が出たんだと」
「じゃあ俺たちが今から倒しに行くドラゴンは、村一つ焼き尽くす化け物ってことか?
マジかよ、とんでもない奴を敵に回すんじゃ…」
「にししっ!それくらい歯ごたえがねえと、アタシは満足しないぜ!」
二人は再び足を進め、ドラゴンの居る山の上まで距離を縮める。
しばらく岩山を登ったところで、鬼灯は懐から一枚の写真を取り出した。
「ギルドの受付から貰ってきたドラゴンの写真だ。
見た目は赤い鱗に覆われて、口から炎のブレスを吐いてくるらしい。
どうだ?それらしい奴はいねえか?」
「うーん、なにも見当たんないけどな…ん?」
すると二階堂は、大きな巣のようなものを見つけ、鬼灯に存在を知らせる。
「なあ、なんかデカい鳥の巣みたいなのがあるぞ?なんだこれは?」
「お、おい二階堂!!ソイツがドラゴンの巣だ!!奴はここを根城にしてやがんだよ!!
これで帰ってきたドラゴンが、写真と同じ見た目なら、いよいよ討伐開始ってわけだ!!」
「うーん、でも今は居ないみたいだぞ?どうすんだ?」
疑問符を浮かべる二階堂に対し、鬼灯は笑顔を見せると、
ドラゴンの巣の上に立って、空に両手を掲げた。
「アタシの異能は“炎を生み出す“能力!!
天高く炎の柱を生み出し、ドラゴンに位置を知らせてやれば!!」
鬼灯の手から火柱が放出され、空に目がけて伸びていく。
すると周囲の空を飛んでいたドラゴンが、巣を攻撃されたと錯覚し、
火の狼煙が上がった自身の巣へと、一目散に急行した。
「にしし!ドラゴンの野郎こっちへ来やがったぞ!どうだ二階堂、写真の奴と同じ見た目か?」
「ああ間違いねえ、あのドラゴンが今回の討伐対象だ」
「よし!じゃあ…先手必勝だぜ!!!」
鬼灯は両手をそのまま振り下ろし、空に伸ばした火柱をドラゴンに向かって直撃させた。
異能の火を浴びたドラゴンは、怯みながらその場で停止する。
鬼灯の撃ち出す炎によって、戦いの火蓋が切って落とされた。
ドラゴンが攻撃を喰らいつつ、顔を上げ何かを溜めている。
「おっ!ドラゴンのやつ頭を上げたぞ!!アタシの炎が効いてるんじゃねえか!?」
「いや…何か溜めてるぞ!?気をつけろ鬼灯!!」
次の瞬間、ドラゴンの口から炎のブレスが吐き出され、勢いよく鬼灯の炎とぶつかり合った。
「ぐおおっ!!お、重い…!なんて威力の火炎放射だ!!」
鬼灯がドラゴンと炎をぶつけ合う中、二階堂は高い岩場に跳び移り、ジャンプしてドラゴンに接近する。
肉薄する二階堂を視認したドラゴンは、大きな翼で彼をはたき落とそうとした。
だが二階堂は懐からナックルダスターを取り出し、ドラゴンの瞳目がけて勢いよく投げつける。
眼球に投擲物が直撃し、ドラゴンは片方の視界を奪われ、命中精度が下がった翼の攻撃を、
二階堂はスレスレのところで空中回避する。
ドラゴンの上空まで辿り着いた二階堂は、能力を叩き込もうと急降下した。
しかしドラゴンはブレスを彼の方に向け、空中で無防備な二階堂を炎で攻撃する。
「ぐ、ぐああああ!!!」
被弾し墜落する二階堂を見て、鬼灯はすぐさま火柱をドラゴンに喰らわせる。
「くっ!お前の相手はこのアタシだ!!」
ドラゴンは攻撃を受けながらも、長い尻尾を薙ぎ払い、鬼灯に直撃させた。
「ごぶっ!!」
ドラゴンの攻撃が当たり、鬼灯は岩山まで吹き飛ばされる。
するとボロボロに焦がされた二階堂が立ち上がり、すぐさまドラゴンの巨体に向かって飛び掛かった。
「ハァアアアアア!!!!」
なんとしても体に接触し、能力を発動させたい二階堂。
しかしドラゴンの繰り出した前足攻撃の前に、その願いは潰えてしまう。
…いや、潰えたかに見えた。
「へへ…ど、どうよ?異能も案外やるだろ?」
攻撃したドラゴンの前足が、ミイラの如く干からびていた。
二階堂は被弾した際、前足に手で触れ、能力を発動させたのだ。
体の一部がミイラになったのを見て、ドラゴンは怒り狂い、二階堂を勢いよく踏み潰した。
「ぐっ!!がはっ!!」
地面に倒れ込む二階堂へ、ドラゴンはさらに追撃をかける。
その光景は見てられるものではなく、悲惨と言わざるを得ない状況だった。
「っ!!や、やめろ!!」
背後へ鬼灯が跳び上がり、火炎をドラゴンの背中に直撃させる。
すると二階堂を大きな翼で吹き飛ばし、崖の下へ落とした後、ドラゴンは背後の鬼灯へ視線を向けた。
「!?嘘だ…!嘘だろ二階堂ぉ!!!」
崖下へ落とされた二階堂を見て、鬼灯は悲痛な声を上げる。
ドラゴンは勢いをつけて突進し、彼女に全体重を乗せた頭突きを喰らわせた。
「がはっ!」
岩山に叩きつけられた鬼灯は、舞い上がる土煙に咳き込みながら、必死に意識を保つ。
(き、キツイ勝負だ…!二階堂のことも心配だが、今はドラゴンをどうにかしねえと!!
こうなったら、死ぬ気で挑むしかねえ!!)
鬼灯は岩から這い出て、土煙の中から姿を現すと、ドラゴンの正面で構えを取る。
「いくぜドラゴン、アタシの実力を思い知りやがれ!!」
鬼灯はドラゴンに向かって飛びかかると、大きく拳を振り上げた。
すると眼光を鋭く尖らせ、能力を発動させる。
「喰らえ!!ファイアブロー!!!」
次の瞬間、拳全体が炎に包まれ、鬼灯はドラゴンの顔面に打撃を叩き込む。
鬼灯のブローを受けたドラゴンは、接触時ピクリとも動かなかった。だが彼女の狙いはその後にある。
鬼灯の当てている拳を中心に、ドラゴンの顔面へ炎が燃え広がり、
次第に頭部全体を覆い尽くすほど燃え上がった。
「見たか!!これがアタシの力だ!!」
炎で顔を包むドラゴンを見て、鬼灯は地面に着陸する。
すかさず両手を目の前にかざし、鬼灯は再度、火炎放射でドラゴンを攻撃しようとした。
しかしドラゴンは大きな翼を豪快に羽ばたかせ、辺りを強風で襲わせる。
鬼灯は風に煽られながらも、強風でドラゴンの頭から火が消えているのを視認し、
奴が口から火炎を飛ばしてくることを察知した。
「くっ!!また火炎勝負か!!」
鬼灯は火炎を手から射出し、ドラゴンの火炎放射とぶつけ合いを始める。
しかし強風で飛んできた岩が鬼灯に直撃し、彼女を強く地面へ突き飛ばした。
「うがあああ!!!!!」
悲鳴を上げる鬼灯は、痛みに悶えながらも、立ち上がりドラゴンと対峙する。
だが意識は既に朦朧としており、彼女はフラフラと戦闘体勢を崩してしまう。
「ぐ…!ち、ちくしょう…!」
立っているのがやっとな彼女の目の前に、巨大なドラゴンが立ちはだかる。
戦況は無情にも、ドラゴンの方へ大きく傾いていた。




