第16話 元の世界の旧友
実技試験を合格し、晴れて冒険者ギルドの一員になった二階堂は、
受付カウンターに戻って受付嬢の話を聞いていた。
「…以上を持ちまして、二階堂様を冒険者ギルドの一員として登録します。
以後自身の冒険者ランクに見合ったクエストを受注していただけますので、
当ギルドで発行したギルドカードを参考の上、任務に取り掛かって下さい」
受付嬢からギルドカードを手渡され、二階堂が記載された情報を確認する。
するとそこには、二階堂の笑みを溢すようなことが書かれていた。
「冒険者ランクAだ!試験官の奴、ちゃんと約束守ってくれたんだな」
二階堂が軽くガッツポーズをすると、受付嬢がため息を吐いて口を開く。
「あなたが実技試験で何をしたのか知りませんが、
ともあれAランク相当のクエストを受注することが可能です、早速お受けになりますか?」
「ああ、何があるのかよく知りたいんだが…」
「はい、詳細は後ろにあるクエストボードからご確認頂けます。
受注したいものがありましたら、貼ってある紙を受付までお持ち下さい」
「オーケー、分かった」
二階堂はクエストボードへ行き、ランクA相当のクエストがあるか目を通した。
その隙に受付嬢はギルドの奥へ行くと、執務室と書かれた扉の前まで移動する。
「失礼します、ギルドマスター」
二回ノックをした後、受付嬢は扉を開けて部屋の中に入る。
そこには冒険者ギルドの管理人、ギルドマスターがソファーに腰を下ろしていた。
「やあご苦労様、受付を空けてもいいのかい?」
「代わりの者が立ってくれていますから。それよりギルドマスター、お怪我は大丈夫ですか?」
腰下ろすギルドマスターの体中には、治療用の包帯が巻き付いており、
痛む後頭部を押さえながら、彼は気の抜けた声を上げる。
「あはは、まあ大丈夫だよ。でもまさかこの僕が新人に負けるなんてねぇ…凄い二人だよ、彼らは」
「わ、笑い事ではありません!入団員の実力を直接確かめたいって理由で、
自ら試験官をこなすと言い出してから、いつか無茶をするんじゃないかと思っていましたが!!
あなたにはギルドのトップとしての自覚がないのですか!?」
怒鳴られるギルドマスターだったが、どこか表情が喜んでいるように見える。
「ははは、ごめんごめん!でも今回は僕も黙って見てられなかったんだよ。
せっかく優秀な新人同士が、入る前から喧嘩してちゃあね?でも彼らはいいライバル関係になるんじゃないかな?だって二人合わせれば、ギルドマスターの僕をやっつけちゃうくらい強いんだから。
ほんといい拾い物をしたよ、うん」
「まったく、それで本当に両方Aランクにしちゃうなんて、つくづくお人好しなんだから…」
この時二階堂は、自身が所属するギルドのマスターを、試験で撃破したなんて知る由もなかった。
クエストボードを眺めていた二階堂は、あるクエストのビラに目が止まり、手を伸ばして取ろうとする。
すると彼は、同じビラを取ろうとしていた誰かの手とぶつかり、反射的に言葉を口にした。
「あぁすまん、そっちが取っていいぞ」
「おう悪いな、じゃあ遠慮なく…」
ビラを取った冒険者の方に目を向けた二階堂は、不思議と既視感を覚える。
冒険者もまた二階堂に視線を移すと、二人は同時に驚いた声を出した。
「ああ!?お前は鬼灯!?どうしてここに!?」
「お前こそなんでこっちにいんだ!?随分久々じゃねえかよ二階堂!!」
ビラを手に取った赤髪の冒険者は、二階堂の元の世界の旧友、鬼灯彰という女であった。
この異世界に来て初めて元の世界の住民に会い、なおかつ自警団の仲間と再会できた二階堂は、
鬼灯の手を硬く握り、お互い再会を喜び合った。
「受付嬢が言ってたギルドにいる異世界人が、まさか鬼灯のことだったとはなぁ。
それで?お前はどうやってここに来たんだ?確か地方に遠征へ行ってると聞いてたが…」
「ああ、その途中で”奴“に会っちまってよ。結構前にこの世界へ飛ばされてきたんだ」
彼女のいう”奴“とは、二階堂を異世界へ送った張本人のことであり、
鬼灯もまた同一人物の手によって、この世界へ足を踏み入れたのだという。
「そうだったのか…災難だったな」
「お互い様じゃねえか、慰めはいらねえよ。
でもアタシだって飛ばされてから今まで、何もしてなかったわけじゃねえんだぜ?これ見てくれよ!」
鬼灯は懐からギルドカードを出すと、二階堂に向かって誇らしげに見せる。
「へえお前もギルドに登録してたのか、
どれどれ、冒険者ランク…Sだと!?」
「にしし!どうだ驚いたか!?最高ランクAを超えたSランク冒険者だぜ?
厳しい審査を通過してようやくなれたんだ!!スゲエだろ!?」
「お、お前結構冒険者ライフを楽しんでるんだな…」
二階堂が苦笑いを浮かべると、鬼灯は途端に真剣な眼差しを浮かべ、自身の持つ目的について語る。
「さっきも言ったがアタシは”奴“と対峙し、そして負けてここへ飛ばされた。
正直手も足も出なかった、ここまで自分が無力だって思い知らされたことはねえ。
だからこの世界で強くなって!もっともっと実力をつけて!今度こそ奴に勝つって決めたんだ!!」
鬼灯は拳を硬く握り、二階堂に訴えかける。彼女の言葉を聞いて、二階堂は自身の境遇と当てはめる。
彼もまた同じ相手にここへ飛ばされ、元の世界へ帰ってリベンジを望んでいた。
同じ目的を持つ者同士、二階堂は鬼灯へ協力を申し出た。
「なあ鬼灯、俺と手を組まねえか?
それで一緒に元の世界へ戻って、”奴“をぶちのめそうじゃねえか!」
「にしし!アタシも言おうとしてたところだよ!
だがアタシはSランク冒険者だぜ?今のアタシについてこれるか?」
「俺だって初日でAランクになったんだ、いずれ追いついてみせるさ。
そういやさっき、お前も同じビラを取ろうとしてたよな?」
二階堂が鬼灯の手に持つビラを指差すと、彼女は顔を縦に頷いた。
「ああ、飛行系大型魔獣の討伐だってよ、お前もこれ受けようとしてたんだろ?二階堂」
「報酬が良さそうだったからな、でもその“飛行系大型魔獣”ってなんだ?そいつを討伐すればいいのか?」
「軽く言ってくれるな二階堂、コイツのことを何も知らずに、クエストを受けようとしてたのかよ。
いいか?このクエストは山岳地帯に住む“ドラゴン”を討伐するクエストだぜ?」
「へぇ、ドラゴンを…ドラゴン!?」
伝説や物語でしか聞かない名詞を聞き、二階堂は目を丸くする。
「こ、この世界にはそんなモンもいるのか!?」
「おうよ!想像以上にデケェぞ?つっても一度しか見たことねえけどな。
アタシらの異能と、伝説の生物ドラゴン、どっちが強えか試してみようぜ!」
鬼灯がクエストのビラを見せ、二階堂をクエストに誘う。
二階堂は彼女の手を取り、共にドラゴンを討伐することを決意する。
受付へ立ち寄る二階堂と鬼灯。二人は受付嬢にビラを見せ、正式に討伐クエストを受注した。
今宵二人の異能力者と、伝説上の怪物ドラゴンが、異色の対決を繰り広げる。




