第14話 異能力者in冒険者ギルド
様々な冒険者達が行き来する建物の扉を、二階堂が音を立てて開く。
彼の入った建物は「冒険者ギルド」で、枯渇した資金を調達するために、
二階堂は緊張を感じながらも、受付に話を伺った。
「なあ、ここが冒険者ギルドで合ってるか?よかったら仕事を紹介してもらいたいんだが…」
「いらっしゃいませ、失礼ですが新規登録者の方ですよね?
本ギルドは身分や実績が認められた登録メンバーの方にしか、仕事を斡旋することが出来ないんですよ」
「そ、そうなのか、すまないが今日泊まる宿代も困ってるくらい切羽詰まっててね。
出来れば手早く手続きしたいんだが…」
「ええ勿論です、では身分証明書の提示をお願い出来ますか?」
すると二階堂は、門番からもらった身分の証明できる用紙を、カウンターにつく受付嬢に見せた。
「えーっと…ニカイドウ…ススムさんですね?もしかすると異世界人の方ですか?」
「あ、ああそうだ。よく俺の名前が読めたな?」
「本ギルドには同じ異世界から来た方が所属していますから、
もしものために、異世界の言葉のマニュアルを作っておいたんですよ」
「ほう、そうなのか。ここに異世界人がねぇ…」
興味深そうな反応をする二階堂は、受付嬢に話を続ける。
「それじゃあ手続きは終わったかな?」
「いいえ、本ギルドへ登録するにあたって、まず実技試験を行い“冒険者ランク”を設定させてもらいます。
冒険者ランクはA~D級までございまして、ランクに応じたクエストを受注してもらうことになります」
「へえ実技試験か、今から受けられるのか?」
「はい、丁度今日の分が今すぐ始まりますので、よければ試験会場までご案内致しますよ」
「ありがたい、早速受けさせてくれ」
二階堂は受付嬢に先導され、ギルドの奥に繋がる廊下を進んでいく。
「身分証明書を見たところ、二階堂さんは特殊な力をお持ちだとか?」
「ああ、今回の実技でも使っていいのか?」
「ええ大丈夫ですよ、ただあくまで試験者の実力を測るものですので、あまりにも大規模な力だったり、
会場全体に損傷を与える能力だった場合は、極力セーブしてご使用下さい」
「了解、まあ俺の能力なら問題ないだろう」
二人が廊下を歩いていると、ついに奥の試験会場へ到着する。
だだっ広い空間の中心に、試験に関わるであろう者達が数人、到着した二人を待っていた。
「おい遅いぜぇ?オラァすぐにでも始めてぇってのによぉ!」
「早くして、時間の無駄」
「まあまあ、さ!こちらに来て!緊張しなくて大丈夫だよ!」
二階堂は指示される通り、会場の中心へと足を進める。
案内した受付嬢は、二階堂へ別れを告げると、自身の持ち場である受付まで戻っていった。
するとギルドの試験官が、到着した二階堂を快く迎え、試験の概要を話す。
「えーっと、君が飛び入り参加の二階堂君かな?今日は来てくれてありがとう!
早速だけど今から、冒険者ギルドの登録及び、ランク設定試験を行います!各々身分は分かったから、
あとは実技に合格すれば、本ギルドへの所属が完了するよ!みんな!力を抜いて試験に…」
「御託はいいからさっさとやらせてくれや、兄ちゃん。一体何したら合格なんだ?」
いかにも荒くれ者っぽい見た目をした男が、試験官へ威圧的に尋ねる。
「そうだね、じゃあ早速試験に移ろっか!内容は極めて簡単さ、
僕の呼び出す召喚獣を倒すことが出来れば、試験は合格だよ!
倒せなかったり、倒した方法に不正が絡んでいた場合は、不合格になっちゃうからね!
ランクに関しては、倒した時間、手際、被弾を総合的に見て公正に判断するから、
各々自分の実力を遺憾なく発揮してほしいな!」
試験官が説明を終えると、一人ずつ試験を行わせるため、
実施者以外の人間を全員離れたところまで誘導する。
「じゃあまずは元闘技場戦士の君!アスファルト君からね!」
「よっしゃあ!!行くぜ!!どいつでもかかってこいやぁ!!」
荒くれ者の男が、会場の中心で斧を構えると、試験官が召喚獣を呼び出した。
「今から君には、この召喚したビーストラットと対決してもらうよ!
では位置について、よーい…スタート!!」
試験官が合図を出した瞬間、アスファルトが召喚獣に向かって肉薄した。
「へっ!ネズミごときが舐めんじゃねえよ!!」
振り下ろした手斧の一撃が、ビーストラットの頭部に直撃する。
しかし痛みに屈することなく、ビーストラットがアスファルトに反撃を繰り出した。
「っ!?なに!?ぐああああ!!」
被弾したアスファルトが後方に吹き飛ばされる。
地面から立ち上がった彼は、血反吐を吐いた後、再び突進した。
薙ぎ払った手斧の斬撃が、ビーストラットの両目を負傷させ、
視界を奪ったところで、先程一撃加えた場所へ、刃を深々と斬りつける。
しばらくしてビーストラットの生命感が完全になくなり、息絶えたところで試験は終了した。
「おめでとうアスファルト君!急所を狙ってトドメを刺す一連の動きは、やはり闘技場で培ったノウハウが生きているようだね!ただ被弾してダウンを奪われちゃったところは減点かな」
「ちっ、うるせえなぁ…」
「よし次!王立魔法学校卒業生のロス君!」
「もう位置についてるわ、早いところ始めて」
今度は青い髪の少女が、会場の中心で試験を開始した。
先程と同じビーストラットと相対するロスは小声で呟く。
「さっきの手際悪すぎ、あれが実戦なら確実に死んでた」
「あぁ!?なんだとコ___
逆上したアスファルトが言葉を言い終える前に、
ロスは手から氷魔法を撃ち、ビーストラットの足元に着弾させる。
次の瞬間、接触した氷が下半身に纏わり付き、ビーストラットの動きを完全に封じた。
「終わりよ、ネズミさん」
ロスは鋭い氷を撃ち出し、ビーストラットの頭部を貫通させ、完全に生命機能を停止する。
召喚獣を消滅させたロスは、涼しい顔で試験を終了した。
「お見事だよロス君!流石主席で魔法学校を卒業しただけはあるね!
これは文句なしの評価をさせてもらうよ!」
「けっ!どうせまぐれだろ…」
「まぐれかどうか確かめてみる?小物さん」
二人が火花を散らし睨み合う中、とうとう二階堂に試験の番が回ってくる。
「じゃあ二階堂君!最後に君の番だよ!中央に立って戦闘準備をしてね!」
二階堂は試験官に指示された通り、広間の中央で構え、召喚されたビーストラットと対峙する。
「よぉし、では始め!!」
試験官の合図と同時に、ビーストラットが二階堂の元へ突進してきた。
「出し惜しみはしない、遠慮なく決めに行く!」
二階堂は向かってくる召喚獣の頭部を、迎え撃つように拳で攻撃する。
そして次の瞬間、本人含め周囲の人間の度肝を抜くような事態が、会場の中心で起こった。
二階堂の拳が接触した時、ビーストラットが一瞬で消滅したのだ。
あまりにも早い撃破速度に、試験官や試験者達は目を疑った。
「なっ!?ば、馬鹿な!?」
「っ!?何が起こったの?」
「こ、これは…」
目の前から脅威が消えた二階堂は、困惑の表情を浮かべながら、自身の手に視線を移す。
「な、なんだこれは?俺の力に瞬殺する効果なんて…」
冷や汗を垂らす彼を他所に、試験官は何かに気づき、納得した様子で笑みを浮かべた。
「なるほど…証明書を見るに、二階堂君の能力は“時間を進行させる”ことが出来る。
召喚時間に制限のある召喚獣に能力を使えば、制限時間が急速に進み、
瞬時に制限を超えて、消滅してしまうってわけか…」
試験官は拍手をし、二階堂を讃えると、試験は無事終了したのだった。
…したはずだったのだが。
「おい!なんだよ今の!不正じゃねえのか!!?」
離れたところで見ていたアスファルトが、二階堂の試験結果に難癖をつけてきた。
不正を疑う彼に対し、試験官は冷静に悟す。
「彼は不正なんてしてないよ。たとえ召喚獣を殺害しなくても、
消滅させて無力化したのが自身の力でなら、実力でこの場を制したといって差し支えないからね」
「ふざけんな!そんなの納得いくか!!」
逆上したアスファルトが広間の中央に近づいてくる。
「戻りなさいアスファルト君!彼がまだ試験を…」
「もう終わったんだろ?オレがこのヒョロ男の不正を直々に暴い__
アスファルトが二階堂に走り込む刹那、試験官が首元に召喚した剣を突き立てた。
「もう一度言うよアスファルト君、今すぐ場外に戻りなさい。従わないなら即座に不合格とみなします」
「ぐっ!こ、この野郎…!」
すると睨み合う二人の間に、二階堂が口を開き割って入る。
「いいぜ試験官さん、ようはコイツを納得させればいいんだろ?俺だってすぐに試験を終わらせたいけど、 あとでグチグチ小言ほざかれて、ギルドでの活動に影響を出される方がよっぽど嫌なんだよ。
だったらここで黙らせといた方がマシだ」
「へっ!上等じゃねえか!どんな狡い手使ったのか知らねえが、正々堂々なら負けねえぜ!」
二階堂とアスファルトがお互いに闘志を剥き出しにすると、
試験官は深くため息を吐き、二人へ諭すように口を開いた。
「ハァ…二人ともやめなさい、試験は終了したんだ。今回は全員合格だよ。
冒険者ランクはまた後で報告するから…」
「それじゃあ納得いかねえ!このヒョロ野郎を不合格にしろ!」
「だから実力で倒したっつったろうが!まだ分かんねえのか脳筋野郎が!」
「二人ともやめなさい!!試験官の僕の指示に従えないなら、こっちも容赦しないよ!!」
「なんだと!?」「なんだぁ!?」
睨み合っていた二人が、一斉に試験官の方へ視線を向ける。
この挙動にふと何かを思いついた試験官は、ニヤリと笑い彼らにこう告げた。
「そうだ!君達が試験の合否に納得できないなら、追加試験といこうじゃないか!」




