第13話 異世界のススメ
王都へと足を踏み入れた二階堂とノアは、賑やかな街並みに身を包み、石畳を歩いていた。
「お、おいノア!荷物半分持ってくれよ!村からもらった物資をよ!」
「情けないわねまったく、悪いけど私馬の手綱引いててクタクタなの、
また後で持ってあげるから我慢しなさい」
睨みつける二階堂を他所に、ノアは毅然と街中を歩く。
すると繁華街に入ったあたりで、商人の男に二人は話しかけられた。
「ようお二人さん、よければウチの品見てかないかい?」
「いいえ結構、急いでるから」
「ほう?そっちのお兄さんはどうだい?随分変わった格好してるけど…」
視線を向けられた二階堂は、自身の服装に目を配り、ノアに問いかける。
「もしかしてこの世界の人達と服とか合わせた方がいいのかな?
俺すげえラフな格好でここへ来ちまったんだが…」
「うーんそうねぇ、丁度村の人からもらった物資にお金も多少あるし、ちょっと装備屋に寄りましょう」
ノアは二階堂の手を引き、装備屋の前まで足を進めた。
「ここが繁華街で一番品質も良くて、値段も控えめな店よ。ただ高すぎるのは買っちゃダメだからね?」
「お前よくそんな場所知ってるな、もしかして来たことあるのか?」
「ええ、王都へおつかいに来た時にね。さ、見繕ってもらいなさい」
二階堂はカウンターにつく店員に、装備について尋ねてみた。
「悪い、少しの予算で出来るだけ質の良い装備を見繕ってくれないか?」
「かしこまりました、お客様は…冒険者様でいらっしゃいますか?」
「えーっと、まあそんなところかな」
「でしたら、動きやすさや丈夫さ、着用時の重量などの実用性を重視した物がオススメですかね。
お客様の体格的は平均寄り、筋肉量は少し多いくらいですか、となると…こちらなどいかがでしょう?」
すると店員は黒色のマントを店の奥から引っ張り出してきた。
「獣の毛皮を加工して作ったマントになります。
軽さと丈夫さを両立した一品で、体を防護してくれますよ」
「へえ、試着していいか?」
二階堂の問いに快く頷いた店員、了承を得た二階堂がマントを羽織ると、たちまちその性能に気づく。
「ほう…確かに軽くて動きやすい、それに前を閉じれば全身をカバーできるな。
表面の皮は硬いのに触り心地もいい、しっかり物理攻撃をカットしてくれそうな感じがする」
「物理攻撃だけではありません。魔法による攻撃も大幅に防いでくれますよ」
「それは高性能だな、気に入った。いくらだ?」
「ノア様のお知り合いということもありますし、多少値引いてご提供させてもらいます」
「いいのか?そんな贔屓させちまって」
「ええ、だってノア様を見てください、あの方が代わりに贔屓してくれてますから」
すると試着室から出てきたノアに、店員と二階堂は視線を移す。
「見なさい二階堂!これが王都のオシャレってやつよ!」
「なんでお前まで買ってんだ、しかもフルコーデかよ」
「いいじゃないの!おかげで勉強してもらったんだから、さあお会計を…」
「ちょっと待った、もう一ついいか店員さん。ここって装備屋なんだよな?
ってことは武器も置いてあったりするか?」
「ええ勿論、何かご希望はございますか?」
「ああ、こう…手にはめるタイプのメリケンみたいな、手甲っぽい武器ないかな?」
二階堂の要望を聞いた店員は、店の奥へ品物を探しに行った。
「ちょっと二階堂!買いに来たのは服だけじゃないの!?」
「ああ、でも門の前で戦ったアンデットに、俺の能力が通用しなかっただろ?
これから先ああいう手合いと戦うなら、近接武器の一つくらい買っといて損ないと思ってな。
特に拳武器だったら、瞬時に能力も発動できるしよ」
すると店の奥から商品を持ってきた店員が、二階堂に話しかけた。
「こちらが当店で扱っているナックルダスターでございます、頑丈な鋼鉄を使用しており、
剣や斧なども防げる優秀な逸品ですよ、一度装備なさってみて下さい」
二階堂は両手に嵌め込み、試しに何発か素振りしてみる。
「スイングスピードは落ちてない、丁度いい重量感だ。
輪っかの内側にクッションが付いてるから、手を痛めにくくなってる。
攻撃部分は鉄のトゲがついてて、打撃だけじゃなく刺突攻撃にもなりそうだな」
「精巧に作り込まれた物ですので、戦いのお役に立つかと思いますよ。いかがですか?」
「よし買った、会計を頼む」
二階堂がそう言うと、店員は購入商品を全て精算した。
そして合計金額を見た二階堂とノアの顔色が、真っ青なものに変わったのは、もはや言うまでもない。
店を出たノアと二階堂は、嵐の前の静けさの如く、口論の助走をつけ始めていた。
「んで、結局村からもらったお金は、ほぼ無くなっちゃったと」
「まあ…そうだな」
「そうだな…じゃないわよっ!!どうすんのよこれから!!
宿一泊出来るかも怪しくなっちゃったじゃない!!せっかく王都に着いたっていうのに!!」
「しょ、しょうがないだろ!戦いに苦戦してたのは本当なんだから!
それにお前のフルコーデがなければ、もっと金も残ってたはずだろ!?」
「ハァ!?自分のこと棚に上げんじゃないわよ!!私だって野盗から逃げてて服ボロボロだったの!!」
「本当に今買うべきものだったか!?もっと資金に余裕が出来たら買えって!!」
「アンタの武器にも当てはまるでしょ!?本当に今すぐ必要な物だったかしら!?」
言葉のマシンガンをノーガードで撃ち合う二人。
しばらく口論にカロリーを使った双方は、ぜぇぜぇと息を上げながら話題を移す。
「こ、こんなこと言い合っててもしょうがねえ、とりあえず今やれることをやるぞ」
「そ、そうね、ひとまず騎士団のところへ向かいたいけど、資金は何としても確保しておきたいし…」
二人はその場で長考し、今後の行動を定めようとする。
そして二階堂が一つの案を思いつき、ノアに対しこう伝えた。
「なあ、こうしないか?資金調達と騎士団への報告、二手に分かれてやるってのは?
村のために警備を送ってもらうってのも大事だが、宿がなければまた野宿しなくちゃならない。
エットと合流した時のことも考えて、金もタスクも同時進行で進めた方がいいだろ?」
「確かにそうね、エット君に宿なしって報告するのもカッコがつかないし…分かった、賛成よ。
じゃあどっちがお金を稼いで、どっちが騎士団のところへ行く?」
「俺は交渉は苦手だ。金を稼ぐ手段さえあれば、努力は惜しまないつもりだぞ」
「そう、じゃあ資金調達は任せたわよ。王都であなたが稼げそうな仕事といえば…そうねぇ」
ノアは辺りを見渡すと、とある建物を指差し、二階堂へ言った。
「冒険者ギルドで依頼をこなしてみるのはどうかしら?
アンタの能力さえあれば、宿分くらいすぐ稼げるわよ」
ノアが指差した建物とは、様々な冒険者達が出入りする、王都唯一の冒険者ギルドだった。




