第12話 目的の地、王都
アンデットを撃破した二階堂一行は、門番達にお礼を言われていた。
「助かったよ君達!私たちだけで戦ってたらどうなってたことか…」
頭を下げる門番に対し、ノアは何か閃いたのか、腕を組んで尋ねかける。
「ねえ、この街を守った御礼といっちゃなんだけど、私達を中へ入れてくれないかしら?」
「えぇ!?そ、それとこれは…」
「信頼してよ!私達別にやましいことがあるわけじゃないの、ね?お願い!」
ノアが門番に頼み込むと、門番は悩みに悩んだ末、とある決断を下す。
「わ、分かった。君たちからは敵意も感じられないし、特別に入場を許可しよう」
「やったぁ!二階堂!エット君!これで中に入れるわよ!」
ノアが二人の方を見て喜んでいるの束の間、門番が遮るように言葉を続ける。
「ただし!三人とも状態確認検査を受けてからだ。万が一にも良からぬことを考えていたり、
アンデットに感染してたりしたら、入場は認められないからな」
「わ、分かったわよ、いいわよね?二人とも」
ノアが二階堂とエットに、検査を受けてもいいか尋ねると、二人の表情がどこか微妙なものに変わった。
「ま、まあ仕方ないんじゃねえかな…うん」
「そうだね、それでは入れないんじゃどうしようもないし…」
門番は三人を関所まで連行させ、テーブルの上に置かれた紙へ、自身の手を置くよう指示する。
「この用紙の上に手を置いて、状態確認の魔法をかければ、紙に君達の情報が記載される。
さあ、テーブルに手を置きなさい」
三人は言われた通り紙の上に手を置き、奥から出てきた検査官の魔法を付与される。
しばらくして門番に手を離すよう指示された三人は、テーブルから手を離し、
紙に浮き出た自身の情報に目を通した。
「へぇ~便利なものねえ、私の名前や状態まで全部載ってるわ」
「まず吸血鬼の君から確認させてくれないか?えーっと…
名前はノア、出身は森林地帯の屋敷、犯罪歴なし、年齢は5歳…5歳!?」
「なによ、吸血鬼は幼年期の成長が早いのよ、文句ある?」
「い、いや別にないが…まあそれ以外に変わった点はないか。感染もしてないようだし…次!」
ノアの情報に目を通した門番は、二階堂の用紙を手に取った。
しかし目を通した門番の顔が、疑問の表情に変わり、首を傾けて二階堂に問いかける。
「すまない、名前と出身の項目が読めないんだが…」
「あー名前は二階堂達だ、出身は東京都…って分かんないか」
「うーむ…この見慣れない字や名前の付け方、もしかして君異世界人か?」
「え!?な、なんで分かった!?」
「最近増えているんだよ、変わった氏名の異邦人がね。この王都にも一人いたはずだが…」
「そうなのか!?だとしたら一度コンタクトを取らないと!!」
(もしかして元の世界に帰る手がかりになるかも!?
それに俺と同じ強制的に転移させられた人なら、自警団員として救助しねえと!!)
期待と使命感に感情を昂らせる二階堂、その背中をノアが冷たい目で見つめ、彼に視線を感じさせる。
「へぇ…アンタ異世界人だったの、通りで常識知らずなわけね」
「わ、悪かったよ黙ってて、ただこの世界に来たばかりだったから、
どこまで話していいのか様子を探っていたんだ!」
二階堂とノアが騒がしく言葉を交わしていると、門番は二階堂の情報を見て、淡々と口を開いた。
「ふむ、それ以外は犯罪歴もないし、感染もしていない。
ただ魔法を取得していない代わりに、何か変わった力を持っているようだな?」
「そ、そんなことまで分かるのか?そうだ、俺には人とは違う特殊な異能力が備わっている。
…何か問題があったりするか?」
「いいや、他の異世界人も同じような力を持っていてね。
効果は先ほど戦闘で確認したし、問題ないぞ」
二階堂の審査が終わり、門番は用紙を彼に手渡した。
「この紙は身分証明にも使えるから、もし提示を指示された場合は使うといい、分かったな?」
門番に紙を渡された二階堂とノア。そんな二人の後ろで、エットが別の門番に検査を受けていた。
そして用紙に浮かび上がったエットの情報を見て、門番は驚愕する。
「っ!?あ、あなたは!!」
「まあ、驚くのも無理ないよ。ごめんね、こんな非正規な訪ね方しか出来なくて…
どうだろう?中に入れてくれないかな?」
「うーむ…そのまま入れるというのは厳しいかもしれません、詳しくは…」
手間取るエット達を見て、二階堂が心配そうに声をかける。
「どうしたエット?なにかあったのか?」
「う、うーんとね…ごめん、僕少し君達と別れることになるかもしれないや」
「えぇ!?どういうことよエット君!?もしかして検査に何か問題が…」
「えーっと…まあ色々事情があってね、大丈夫!すぐ追いつくから!先に王都へ入ってて!」
エットはそう言うと、門番達数人に奥まで案内された。
残された二人はエットと別行動になり、落胆しながらも王都への扉を見つめる。
「エットのやつ、何か引っかかったんだろうか?何もなければいいが…」
「彼も王都に用があったはずだし、村へ警備を送ってもらうっていう。
しょうがないわ、私達が代わりに騎士団へ頼みに行きましょう」
「そうだな、俺たちはあの村に世話になってる。これくらいの恩返しはするべきだ。
それが終わったら、いよいよ王宮に“例の事態”を知らせに行くのか?」
「ええ、もし騎士団に上手く取り入れたら、王国の上層部へ口利きしてくれるかもしれないわ。
ひとまず目指すべき場所は、王国騎士団の兵舎よ」
二階堂とノアは気持ちを切り替え、門番達に礼を言うと、王都への扉に手をかける。
視界に広がる景色に期待する、異世界人の二階堂。
彼の冒険譚は、新天地王都へと場所を移すのだった。




