第11話 異能vsアンデット
迫り来るアンデット達に、二階堂は間合いを詰めた。
至近距離に近づく刹那、彼は荷馬車に壁キックし、空中でアンデットの頭部を蹴り飛ばす。
すかさず後ろにいるアンデットにも回し蹴りを食らわせると、二階堂は周囲を見渡し、戦況を確認した。
すると遠い間合いから弓を引き絞るエットの元に、アンデットが数体近づいてくる。
エットは冷静に一体の頭へ矢を命中させると、軽やかに跳び上がり、荷馬車の上へと場所を移した。
彼は矢筒から矢を三本取り出し、手の届かないその場からアンデット達に狙いを定める。
「悪いね、これ以上被害を出すわけにはいかないんだ!」
弓から放たれた三本の矢は、三体のアンデットの頭部に突き刺さり、同時に地面へ倒れ込んだ。
敵を倒すエットに目を配っていた二階堂へ、再びアンデットが突進してくる。
二階堂は強く踏み込み、敵の頭部に向かって拳を打ち込んだ。
アンデットは大きく怯み、二階堂との距離を離す。
しかし彼はその様子を見て、明らかに異変を感じた。
いや“異変がなかったからこそ、違和感を感じた”のだろう。
「な、なんで俺の能力が効かねえんだ!?」
二階堂に触れられ、彼の持つ異能力を叩き込まれたはずのアンデットが、
なんの変化もないまま、こちらに近づいてきたのだ。
二階堂は目の前のアンデットに追撃をかけ、再び拳をお見舞いする。
だが異能力の効果が現れる様子はない、アンデットは平然とした顔で、二階堂に歩み寄る。
「くそっ!どうなってんだ!?俺の能力は、生き物だろうが物体だろうが関係なく効果を発揮するはず…」
一度間合いを取る二階堂、そんな彼に対しノアは、大きな声で助言をする。
「アンタの能力、確か“触れたものの時間を進行させる“だっけ?ならアンデットには効果ないわよ!」
「な、なに!?どうして!?」
「アンデットに寿命はない、いくら老化させようが風化させようが、
アンデットはずっとアンデットのままなのよ!だからアンタの能力との相性は最悪、
一度戦い方を見直しなさい!」
「くっ!マジかよ!能力は効かねえ、噛まれたら終わり、厄介な敵だなチクショウ!」
後ろに跳んで距離を離す二階堂、一方ノアは門番達を背に、アンデットと戦っていた。
「ま、マズイわね!こうなったら…」
ノアが片腕を上げ、歯を食いしばり力を込めると、
上げた片腕が青く染まり、筋肉が倍以上に膨れ上がる。
ガーゴイルの腕に変化させた彼女は、鬼のような手を思い切り振り下ろし、地面に向かって叩きつけた。
「くらいなさい!ガーゴイルインパクト!!」
叩きつけられた地面に衝撃波が走り、前方のアンデット達に向かって、勢いよく攻撃を加えた。
衝撃波をくらったアンデット達は吹き飛ばされ、頭部や胴体が深く損傷する。
「吸血鬼の私に挑むなんて、百年早いのよ!」
勝ち誇るノアを他所に、二階堂は再びアンデットと対峙する。
先に動いたのは二階堂だった。彼は敵に向かって走り込むと、地面に向かって手を伸ばす。
伸ばした手の先には、地面に倒れた門番の剣があり、二階堂は剣の柄を掴み取ると、
素早くアンデットの腹部を斬りつけた。腹から血を流し倒れるアンデット。
その姿を見て二階堂は、眉間に皺を寄せ暗い顔をした。
そんな彼の元にアンデットが一体近づいてくる。
二階堂は剣を振り上げ、迫り来る敵の肩に向かって勢いよく振り下ろした。
鈍い接触音が鳴る中、剣をくらったアンデットは、負傷しながらも二階堂へ接近してくる。
「な、なんだと!?コイツ!!斬りつけられてもまだ来やがるってのか!?」
無理やり押し切ろうとするアンデットに対し、二階堂が苦戦していると、
不意に荷馬車の上から矢が放たれ、アンデットの頭部を正確に貫いた。
「二階堂くん!アンデットは痛みを感じないんだ!
急所を一撃で斬りつけないと、意地でも這い上がってくるよ!」
「あ、ああ分かったエット、恩に着る!」
大勢のアンデットを撃破した二階堂達は、残る最後の一体に視線を向ける。
すかさず最後の一体がこちらに近づいてきた。二階堂は剣を握りしめ、間合いを詰めて迎え撃った。
二階堂とアンデットが至近距離に入った刹那、エットが弓を引き絞り、アンデットに向かって矢を放つ。
「風が吹いてる限り、全部見えてるよ」
放たれた矢はアンデットの膝に突き刺さり、上体を崩したアンデットは無防備状態に陥る。
二階堂は大きく振りかぶると、剣を思い切り頭部に向かって薙ぎ払い、
アンデットの頭を宙に飛ばして撃破した。
剣の握る力を弱め、二階堂は表情に陰りを浮かべると、小さく言葉を呟いた。
「元人間だったやつを殺すのは、気持ちのいいものじゃねぇな…」
彼は剣を地面に落とし、死体の山を寂しく見つめる。
こうして二階堂達は、王都の門をアンデットから守ったのだった。




