添い寝
ジュスティーヌ、ちょっと頑張り過ぎる
ジュスティーヌは悩んでいた。あんまりわがままを言うのは良くない。しかし、エリザベスにもっと甘えたい。どうしようどうしようと悩んでいると、アルベルトがそれに気付いた。
「どうなさいました?ジュスティーヌ様」
「お義母様と、添い寝でお昼寝してみたいなって」
「添い寝」
なるほどとアルベルトは思う。遠慮がちなジュスティーヌならたしかに言いにくいかもしれない。
「でも、あんまりわがままは言えないから…」
「ジュスティーヌ様」
アルベルトは跪いてジュスティーヌと視線を合わせる。
「ジュスティーヌ様はまだ五歳。もっと大人に甘えてもいいのですよ」
「そうかな?」
「そうですとも」
ジュスティーヌはぱっと笑顔になる。
「なら、お義母様にお願いしてみるね!」
「それがよろしいかと」
ジュスティーヌはエリザベスの元へ急ぐ。ノックをすれば入っていいと返事が来る。ジュスティーヌが部屋に入れば、エリザベスはベッドの上で読書をしていた。
「ジュスティーヌ、どうしました?」
「お義母様…あの、その、えっと…」
「なんでも言ってください。大丈夫ですから」
ジュスティーヌは意を決して言う。
「お母様と添い寝がしたいです!」
そんなジュスティーヌの様子に、エリザベスは悶絶した。愛娘が可愛すぎる。なんとか悶絶するのを抑え込んで、エリザベスはジュスティーヌに返事をした。
「ジュスティーヌと添い寝なんて初めてですね。嬉しいです。ぜひ一緒に寝ましょう。今すぐでもいいですか?」
「…はい!」
ジュスティーヌの花が咲くような可憐な笑みにまたも悶絶するエリザベス。アルベルトとアーノルドはそんなエリザベスに心の中でひたすらエールを送る。
「では、ジュスティーヌ。私の隣にどうぞ」
「失礼します!」
ジュスティーヌはエリザベスの隣に横になる。エリザベスも横になってジュスティーヌの背中をとんとんと優しく叩いてやり眠りを誘う。
「ふぁ…」
「眠ってしまっても大丈夫ですよ、ジュスティーヌ。お昼寝なんですから」
「そうですね…少しだけ、おやすみなさい…」
ジュスティーヌはすぐに寝た。その様子を見て、エリザベスはアルベルトに聞く。
「もしかしてジュスティーヌは、眠る時間を削ったりしていませんか?」
「皇后陛下が起きられるまでの三ヶ月間、ずっと皇后陛下のことばかりを気にされて少しお勉強が遅れてしまっていますので」
「自主学習ですか?」
「はい」
エリザベスはジュスティーヌの幼い寝顔を見て、決めた。
「ジュスティーヌはまだ子供です。睡眠時間を削って学習したところで良い効果があるとは思えません。アルベルト、命令です。ジュスティーヌが睡眠時間を削ろうとしたら止めなさい」
「拝命致しました」
この日以降ジュスティーヌは、睡眠時間をきちんと確保した上で自主学習をするようになった。アルベルトからエリザベスの命令を聞いて、こんなにも大切にされているのだと喜ぶジュスティーヌだった。
やっぱり子供は寝るのも仕事のうちです