花かんむりと血だまり
ちょっとシリアス
ジュスティーヌは、さっそくエリザベスのために花かんむりを作って届けた。
「お義母様、プレゼントがあって…」
「なんでしょうか?」
「こ、これ、花かんむりです!どうぞ!」
「ありがとうございます、ジュスティーヌ。愛らしい花かんむりですね。付けても良いですか?」
「はい!」
エリザベスは表情は外行きの微笑みだが確かに喜んでくれて、ジュスティーヌはとても嬉しくなった。その時だった。
ー…二人の目の前に、武装した男が一人突然現れた。
「…誰、ですか?」
「ターゲット捕捉。撃ちます」
隣国の総力を結集した、転移魔法で現れた特殊部隊の精鋭である。転移魔法は非常に高度な技術が必要なので本来ならば成功するはずがないが、隣国はとうとうその域に達したらしい。それでも一人が限界のようだが。
「皇后陛下!姫様!」
男は真っ直ぐジュスティーヌを狙った。護衛であるアルベルトとアーノルドは二人を庇おうとするが一歩遅かった。
バンバンと銃声が響く。
しかし、ジュスティーヌは無事だった。ジュスティーヌは、エリザベスから強く抱きしめられていた。
「…お義母様?」
「大丈夫ですか?ジュスティーヌ」
「お…お義母様ぁああああっ!血がっ!いやぁああああああ!」
「ジュスティーヌ、大丈夫です。ほら、生きてますから」
「お義母様っ!お義母様っ!!」
エリザベスが男の銃撃から身を呈してジュスティーヌを守ったのだ。目の前で血塗れになり穴だらけになった優しい継母に、ジュスティーヌは泣き叫んだ。エリザベスはなんとか気力で意識を保ち、ジュスティーヌに外行きの微笑みではあるが安心させるように笑った。
「このっクソ野郎!」
「アーノルド、気持ちはわかるが殺すな!確保!」
男はすぐにアルベルトとアーノルドに取り押さえられた。
「アーノルド、治癒術師を呼んで皇帝陛下に報告して来い!」
「お前は!?」
「皇后陛下に治癒魔法を掛ける!俺の魔力じゃ焼け石に水かもしれないが…!」
「わかった!」
エリザベスはすぐに駆けつけた治癒術師の治癒魔法を受ける。しかしその頃には意識を失っていた。
「お義母様っ、死んじゃ嫌です!」
「ジュスティーヌ!」
「お父様っ!お義母様がっ!」
「エリザベス…こんなに撃たれて…ここまで酷いとは…」
駆けつけたユルリッシュも青ざめる。そして、気を失ったエリザベスの手を握った。
「すまなかった。君を誤解していた…ジュスティーヌを守ってくれてありがとう。きちんと面と向かってお礼と謝罪を伝えたいんだ。どうか、生きて目を覚ましてくれ」
「…お父様」
ジュスティーヌが小さな手でユルリッシュとエリザベスの手に触れた。
「お義母様は大丈夫です!私いっぱいいっぱいお祈りしますから!だから、大丈夫…ですよね?」
「…そうだな。お父様もいっぱいいっぱいお祈りしよう」
「はい!」
無垢な少女の祈りは届くのだろうか?
ジュスティーヌちゃんトラウマにならないといいな…