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シャルルとリード

二人の関係

シャルルは多才である。顔も家柄も良く、優秀な彼は悩みがなさそうに見えるかもしれない。しかし、実際のところそうでもない。いくら才能があろうが、手に入らないものはある。


「母上、か…」


彼は、乳飲み子の頃に母を亡くしている。母の顔など覚えていない。父の後妻である義母は、なんとなく距離を感じる。弟も妹もいない。父と兄はとても忙しい。


「…僕を必要としてくれる人は、この世の何処かにいるのだろうか」


家族からの愛情も、自分を必要としてくれる人も。幼いシャルルには、圧倒的に足りていなかった。だから、自分を命に代えてまで守ろうとした護衛を心底気に入っている。


「暇だし、今日も森に行く」


「熊が出るかもしれませんが」


「クマなんて怖くない。いざとなれば僕の魔法で目眩しして逃げればいい」


「…かしこまりました」


シャルルには家庭教師がつけられなかった。というのも、シャルルが優秀なためスイスイと知識を吸収するのでこれ以上は必要ないと判断されたのだ。実際、家庭教師をつけられても退屈この上なかっただろう。


しかし、シャルルはそれを期待されていないからだと勘違いした。拗ねてわざと危ないところに行くシャルルを、後の専属護衛となるリードは心配していた。そのため、リードは自らシャルルの護衛を志願した。


「シャルル様、あれがたぬきです」


「へえ…可愛らしいね。あんなに小さくて、野生で生活できるんだ」


「野生動物ですから触れませんが、ふわっふわですよね」


「やめてよ、触りたくなってきただろ」


くすくすと笑うリードに、シャルルはなんとなくささくれだっていた気分が落ち着いた。


「他にも生き物を教えてよ」


「もちろんです」


森にいる色々な生き物を紹介するリード。シャルルは物知りな彼を次第に尊敬し始めた。


「君って物知りなんだね」


「恐縮です」


リードはシャルルの素直さに心が癒される。その時だった。


「…なんか、茂みが」


「…シャルル様!逃げますよ!」


熊が、現れた。


「これが…クマ…?」


テディベアしか見たことがないシャルル。腰が抜けて動けない。熊は、逃げてくれれば良かったのだが残念ながら戦う気満々らしい。リードは、シャルルを抱えて走るか熊と戦うか一瞬迷ったが即座に剣を抜いた。熊には足で勝てるはずがないからだ。


「…うぉおおおおおおお!」


凄まじい気迫で熊に迫るリード。熊はその勢いに恐れをなし、戦闘モードを解除して逃げ帰る。リードは内心、逃げてくれてホッとしていた。勝てるかどうか、正直わからなかったから。


「…君、名前は?」


熊を追い返し、半分放心状態だったリードはシャルルの言葉に少し反応が遅れる。


「…リードと申します」


「そう。リード、君は今日から僕の専属護衛ね」


「え!?」


「決定事項だから、よろしく」


そしてシャルルは、父に直談判してリードを専属護衛にしてしまう。ただし、今回の件を重く受け止め三ヶ月間森への侵入禁止を科されたが。


そんなこんなで、自分を大切にしてくれるリードはシャルルにとってとても大切な存在で。そんなリードに丁寧に接するジュスティーヌは、シャルルにとってとても大切相性の良い相手だった。


そしていつからだろう。きっと、最初からだった気がする。シャルルはジュスティーヌを必要とするようになった。ジュスティーヌもシャルルを必要としてくれる。リードとジュスティーヌの存在が、シャルルにとって心の寂しさの特効薬となっていた。

リードが優しい近所のお兄ちゃんみたいな感じ

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