ユルリッシュの誤解
ユルリッシュは前妻のことしかまだ考えられないという…でも言っちゃいけないと思うんですよね…
ユルリッシュ・トリスタン・ヴァレリアン。情はありながらも冷静な判断で治世を行う賢君である彼は、そんな自分を理解して支えてくれた前妻を深く愛していた。
「シルヴィア…何故私を置いて先に逝ってしまうんだ…」
「皇帝陛下…」
「…いや、すまない。こんな時こそ心を強く持たねばならないな。娘が女帝になる時に問題が起きぬようにしておくのも、俺の役目だ。そうだよな、シルヴィア」
そんな彼は、愛する前妻との間に生まれた娘を心の中では溺愛している。しかし娘は正統なる皇位継承者。甘やかすことは出来ない。
「ジュスティーヌにもすまないことをしたな…あの子には甘やかしてくれる存在が必要だったというのに…」
「皇后陛下がいらっしゃいますよ」
「彼女はジュスティーヌとあまり上手くいっていないんだろう。正直期待外れだった」
「…お言葉が過ぎますよ。まだお二人ともお互いの距離感を測っている最中です」
「…そうだな、すまない」
後妻となったエリザベスにジュスティーヌを甘やかしてやって欲しいと思っていたが、二人はあまり上手くいっていないらしい。しかし、今のは少し言いすぎたと反省する。それに嫌がらせや虐めはないようなのでそこは安心だ。エリザベスなりに上手くやろうと思ってくれているのかも知れない。
「むしろ、皇帝陛下と皇后陛下の距離感の方が問題です」
「私は結婚する前にシルヴィアを愛しているから君を愛することはないときちんと伝えた」
「それこそ大問題ですよ貴方はバカですか」
普段温厚なユルリッシュの専属護衛騎士、アルベルトとアーノルドの三つ子、アルフレッドが軽くキレた。
「皇帝陛下が皇后陛下と距離を置いたから、それが皇后陛下の求心力の低下に繋がっているのです。貴方は何がしたいのですか?」
「そ、そんなに怒ること…」
「怒ることです。姫様が嫁ぎ先で同じ思いをしたら貴方はどう思いますか?」
「…!…だが、今更どう接すればいい?」
珍しく困り果てた表情になるユルリッシュに、アルフレッドは冷たい目を向ける。
「そんなことご自分で考えてください。ただ、我々は誠意ある対応を求めます」
「我々?」
「なんでもありません」
三つ子は、元々姫様のファンである。ファンというか、元々皇族として忠誠を誓っていたのだが、そこにエリザベスが現れた。ジュスティーヌとの初対面を終えた時のエリザベスは三つ子が…というかアーノルドが軽く引く程度にジュスティーヌにメロメロだった。ジュスティーヌもエリザベスと仲良くなりたいと奮闘する。しかしお互いなかなか分かり合えない。そんな二人を見て、それこそ二人の大ファンになった三つ子なのであった。
だから、ユルリッシュに誠意ある対応を求める。ユルリッシュは三つ子に呆れられる前になんとかエリザベスとの仲を修復出来るだろうか?
アルフレッドがキレるのも無理はない