左手の薬指
「ジュジュ」
「なあに、ルル」
いつもの休憩時間。ジュスティーヌはシャルルとお茶を楽しんでいたが、ふと真剣な表情のシャルルに名前を呼ばれる。返事をすれば、椅子から下りて近付いてきたシャルルに目の前で跪かれた。
「ルル?」
「愛する我が唯一の人。どうか、これを受け取ってください」
そう言うと、シャルルは一つの小箱を取り出してジュスティーヌに見えるように開けた。そこには小さな可愛らしい指輪が一つ。
「ルル、それ…!」
「婚約指輪。もっと大人になってからで良いと周りからは言われたのだけど、ジュジュを喜ばせたくてお小遣いを貯めて買ったんだ。やっと欲しかったデザインの指輪が買える金額が貯まってね。どうかな?喜んでくれる?」
「もちろん…!」
「成長してサイズが変わる頃には、きっとまたプレゼントするから。ここは、僕だけに飾らせてね」
シャルルはそう言いながらジュスティーヌの左手をとり、薬指に指輪をはめた。
「ルル、本当に大好き!愛してる!」
「僕も大好きだ。愛してる。僕もほら、着けているからね。お揃いだから、ずっと持っていて」
「うん!」
もう婚約しているというのにこんなに初々しい姿をみせてくれる二人の小さな主人にアルベルトとリードは胸をぎゅっと押さえる。すごくときめいていた二人である。
「ルル、私からも何か贈りたいな。サプライズするのは得意じゃないから単刀直入に聞くけど、何が欲しい?」
「なら、ジュジュが使っているのと同じ香水が欲しいな。いつも主張し過ぎないふわっとした桜の香りが、すごく好きなんだ」
「じゃあ、すぐに用意するから届くまで待っていてね!」
「ジュジュから贈り物をもらえるなら、いくらでも待つとも!…ふふ、これで寝る時も枕に一吹きすればジュジュを感じられるね」
「ふふ、ルルったら!でも私も、指輪のおかげで夜も寂しくないね。本当にありがとう!」
夜もお互いを感じたいなんて、二人の小さな主人達のなんと可愛らしいことか。アルベルトとリードはキュン死するかと思って一瞬本気で焦っていた。そんな二人のことなど知らないジュスティーヌとシャルルはお互いの手を取り合って微笑み合っていた。




