ユルリッシュとサシャ
ユルリッシュは真面目
ユルリッシュは今日も今日とて仕事三昧である。皇后であるエリザベスが動けない状態であるため、余計に忙しい。しかし、夫として妻を支えるのは当然だと考えているし、そもそも愛娘を守るために身を呈したエリザベスには感謝しかない。そのことでギスギスすることはなかった。
「サシャー!待ってー!」
「みー!」
「ん?」
外でジュスティーヌの叫びが聞こえる。サシャという猫が来てから、ジュスティーヌは少しお転婆さんになった。そんな愛娘が愛おしいユルリッシュは、つい執務の最中にもかかわらず頬を緩めた。そんなユルリッシュに、アルフレッドは安心する。真面目すぎるユルリッシュがストレスばかりを抱えずに済むのは、いいことだ。
「みー」
「もう、サシャ。いくらお父様が大好きでもお仕事中は邪魔しちゃダメよ!」
「みー!」
かりかりとドアを引っ掻く音が聞こえる。小さな二人の可愛らしい喧嘩に、アルフレッドは思わずクスクスと笑う。あとでアルベルトとアーノルドにも話してやろうと考えていると、ユルリッシュが言った。
「ドアを開けてやれ」
「よろしいのですか?」
「少しなら構わない」
アルフレッドはドアを開けた。キョトンとするジュスティーヌと、当たり前のように入っていきユルリッシュの膝の上に収まるサシャに癒されるアルフレッド。
「ジュスティーヌもこちらにおいで」
「はい、お父様!」
笑顔を浮かべるジュスティーヌ。膝の上を占領するサシャにぷくっと頬を膨らませるものの、ユルリッシュと一緒にいられる時間が出来たとすぐにご機嫌になる。
「サシャは本当に自由だな。間違えて外に出ないように、きちんと見ておきなさい」
「はい、お父様!」
「みー」
中庭はともかく、外になんか出ないと抗議の声を上げるサシャだが伝わることはない。
「サシャ、外なんか行かないで、ずっと一緒にいようね」
「みー」
ジュスティーヌの愛情を感じて、サシャは鳴く。ユルリッシュの大きな手が優しい手つきでサシャを撫でる。サシャはそのままお昼寝の体勢に入った。
「飼ってみると、可愛らしいものだな」
「そうですね、お父様」
サシャを起こさないようにひそひそと話す父娘に、アルフレッドは胸が温かくなった。これもあとでアルベルトとアーノルドに教えてあげようと思いつつ、目の前の光景を脳に焼き付けた。
アルフレッドは今日も可愛らしい光景にほくほく




