婚約者
ジュスティーヌの婚約です
ジュスティーヌはこの日、大事な用があるとユルリッシュに呼び出された。
「大事な用ってなんですか?お父様」
「お前の皇配となる者が決まった」
ジュスティーヌは急な話に驚く。しかしジュスティーヌは皇女。いつかはそういう話が出ると覚悟はしていた。
「どんな方でしょうか?」
「魔法師団長の息子だ。バスチアン侯爵家の次男のシャルルだ。魔法学の天才と言われている。お前と同じ歳だ。見目も良いし、美しいジュスティーヌの隣に立つのに相応しい。性格も明るく人気者だそうだ」
「そうなのですね…わかりました!仲良くできるように頑張ります!」
「ああ。バスチアン侯爵家はジュスティーヌの良い後ろ盾になってくれるはずだ。婚約者を大事にな」
「はい、お父様!」
こうしてジュスティーヌの婚約は決まった。
後日顔合わせをすることになったジュスティーヌ。とっておきの水色のドレスに身を包んで、薔薇の香りが仄かに香る香水をつけて準備万端。元々可愛らしいのがさらに愛くるしくなったその姿をまず一番に見せたのがエリザベスだった。
「お義母様!見てください!ちゃんと可愛く出来ていますか?」
「ええ。世界で一番可愛いですよ」
愛娘の愛らしさを堪能するエリザベス。ジュスティーヌは不安と期待の入り混じった複雑な感情を、エリザベスに甘えることで抑える。
「お義母様、大好きです!」
「私も大好きですよ、ジュスティーヌ」
「ジュスティーヌ、そろそろ時間だ」
ユルリッシュが迎えに来て、仕方なくエリザベスから離れたジュスティーヌ。エリザベスはジュスティーヌに手を振ってエールを送った。
「ご機嫌よう。ヴァレリアン帝国第一皇女、ジュスティーヌ・ロランス・ヴァレリアンです」
「お初にお目にかかります。バスチアン侯爵家の次男、シャルルと申します」
シャルルは人に好かれる優しげな笑みを浮かべ、ジュスティーヌに挨拶をした。
「もしよろしければ、私には敬語は不要ですよ」
「なら、僕はタメ口にさせてもらうね?こっちの方がやっぱり話しやすいんだ」
あっという間に切り替えていくシャルルに、ジュスティーヌは笑みをこぼした。
「ふふ、シャルル様は素敵な方ね」
「ルルでいいよ。敬語もいらない」
「いいの?ありがとう、ルル。私も好きに呼んでくれていいよ」
「じゃあ、ジュジュって呼んでいいかな?」
「もちろん!」
ジュスティーヌはシャルルの親しみやすい雰囲気に包まれて安心した。
「じゃあ、ジュジュ。君、甘いものは好きかい?」
「もちろん好きだよ」
「なら、この箱を見て」
「?」
シャルルの大舞台の始まりである。
シャルルは自由人です




