表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/52

009 剣豪

009 剣豪

越前一乗谷、この室町時代の終盤、この地方は栄えていた

すでに、戦国大名の朝倉氏が越前を支配しており京の文化を取り入れた街づくりを行っていたからである。


谷筋の狭い地域であるが、大変な活況であった

その中で、俺たちは柳生新次郎の師匠、印牧(かねまき)自斉の道場を探していた


「頼もう!」この呼びかけが正しいか知らないが、使う

すいません!では恰好が悪いでしょう。

木刀を持った門弟らしき人が出てくる

「何ですか」いかにも怪しんでますという対応である

「柳生新次郎がまいりましたと自斉先生にお伝えください」

「わかりました、此方へどうぞ」

と待合室?応接間?に案内される



「よく来たな、新次郎」

いかにも、剣豪ですオーラがあふれている、野人が出てきた

「師匠、御無沙汰しております」と新次郎

俺たち同行者をちらりとみて

「それで、今日はどうした、また修行か?」

「はい、此方の皆さまが廻国修行で、こちらに寄せていただきました」

「そうですか」

「どうしたのですか、師匠」

「ふむ、実は少しいろいろとあってな、今悩んでおるのだ」

「どうしたのですか、師匠」

とても悩みなどなさそうな野人なのに!と俺は思った

「ここではな」

「大丈夫です師匠、この方たちは、面白い方ばかりです」

面白い方じゃだめだろと思いながら・・・・


「実は、わしの師匠の五郎左衛門殿がな、目を患っておって、どうやら家督を譲るしかないようなのだ」

「そうなのですか」

この時代、障碍者は大きなハンデとなる、しかも、武士であれば戦働きが必要なので、目が悪いとそれができないのは明白である

「しかし、たとえ目が見えなくとも師匠は強いのだが」

そんな馬鹿なことがあるかと思いつつ・・・

「戦働きはむりでも、剣術を教えることは可能ですか?」と俺

「もちろんじゃ、師匠はたとえ目が見えなくとも、心眼でたたかえる方ですからな、失礼、あなたは?」

「わたくしは、鈴木九十九重當と申します、回国修行中のものです、ついでに全国の人材をスカウトして旅をしています」

「はて、すかうととは?」

「失礼、人材発掘あるいは雇用と申したらよいでしょうか?」

「ということは、師匠も雇ってもらえると」

「教えることができればですが」

「もちろんです、もしできなければ、わたくしがお教えしましょう」

「師匠そんなことを言って大丈夫なのですか?」

「バカ者、そんな場合ではないのだ!なんとしても、師匠に恩を返すのだ」野人は正義感の強い人間のようだ



とりあえず、修行を許されたので、街で宿を確保し、旅の汚れを洗い流す

風呂でなく、桶ですけどね、しかも水だし。


翌日、早速道場でガンガン木刀でたたき合う

「新次郎殿」

「なんでしょうか九十九殿」

「木刀って硬いじゃないですか」

「そうですね」

「柳生って、袋竹刀じゃなかったですか?」

「柳生では、木刀ですよ、袋竹刀ってなんでか」

「詳しくは知らんけど、竹で作った棒のようなものに革袋をかぶせたようなもの?に加工したものですかね?」

「知りませんね」

「諏訪賀は頑丈そうだからいいんですけど、霜君はきゃしゃなので、けがが心配なのですが」

「やめさせれば?」

「いや、最低限身につけてほしいんですけど」

「う~ん」

「作ってみますか?」

「お願いします」


こうして、練習を中断して、竹刀を作ってみる

竹をとってきて、割、角やささくれを削り、動物の腱で縛ってみる

持ち手部分に布を巻く、先端部分も皮で巻いてみる


「これなら、寸止めしなくても大丈夫そうですね、ただし軽いのでどうでしょうか」

「まあ、あと竹は乾燥の問題と、漆で塗装すると袋竹刀になりますかね、今はふつうの竹刀ですね」

「内の道場で取り入れましょう」と新次郎


「皆さん少しよろしいでしょうか」自斉の高弟がよびに来る

昨日の応接間である、といってもただの板間であるが・・・

時代劇の定番の畳は、とても高価であるがそんなことは知らない男だった。・・・


見るからに、目が悪いという感じだった

「戸田五郎左衛門様です」と自斉

「宝蔵院胤栄」「柳生新次郎」「鈴木九十九」「霜兵衛」「加留羅蓮国」「諏訪賀利一」とみなが名乗る

「某は戸田五郎左衛門、出家し勢源と申します」

「師匠、本当なのですか」と印牧

「うむ、すでにかすかにしか見えん、これでは戦働きは無理であろう、家督を譲り、出家したのだ、心配をかけたな、自斉」

「師匠」自斉は涙を流した、それを感じた勢源も涙をこらえている


・・・・・

「それで、なんの話であったかな」と勢源

「はい、この九十九殿が、師匠を剣の師として、迎えたいとおっしゃっているのです」

「私でもよろしいのでしょうか」

内心おしえることができるならOKですよと思っているのだが、この雰囲気では言えない

「ぜひお願いしたいとお思います」

「捨てる神あれば、拾う神ありという、世間とはなかなかに面白い」何か思うところがあるのであろう

「この戸田勢源、身命をかけて、お教えしましょう」

「よろしくお願いします」


印牧の眼が何も言うなと言っている、もしだめなら俺が代わりに教えに行くから、絶対何も言うなと目が言っている。野人の目力が凄い!


出発は一週間後になった、修行というのは、言い訳なので、適当に切り上げるつもりである。


勢源の世話を見るために、弟子のひとりも同行することになる

早速、薬に詳しいハズの望月氏に「目薬の木」について記し、文を送る

勢いで、勢源氏も300石相当で召し抱える流れになってしまい

内心、金がないと焦りが生じる

一儲けするために、帰りに堺を目指すことになる


紀伊への帰り道、堺へ寄り道するが、鉄砲について、勢源氏に説明し、銃手の保護のために剣豪が必要なことを説明し、組内術も必用だと説明する

「脇差は私が得意なので、お教えしましょう」と勢源

勢源は腰に脇差、そして、杖を突いている。杖は仕込み杖になっており、スウェーデン鋼の刀(反りがないので直剣だが)を仕込んでいたりする。


堺につく頃には、秋になっていた

案外長い旅をしてきたものである

堺商人と懇意になって、利益を上げねば、俺が破産しそうである

堺は自治組織会合衆が納める自治都市となっている、財力にものを言わせて、武装兵も雇っている。

街の周囲も塀がとり囲み、堀が切られている。

簡単にはやられんぞという気構えなのだろう


何とか、街に入れてもらい、街を見物していると

何やら騒がしい、やはりイベントが起こっているのであろうか?

転生ものではやはりこういうイベントが必須なのであろう。


「離して!」白人の娘が叫んでいる

しかし、周りの人間は見て見ぬふりである

第一、ロシア語はわからないであろう、ただし、雰囲気でどういうことかはわかるであろうが・・・


「私をだましたのね!」

「何言ってんだこいつ」

「私を返して、国に帰るのよ」

むさくるしい男たちが女を捕まえている

「うるさいやつだ、大体何言ってるかさっぱりだ」

「お嬢様を離せ!」大型白人が怒鳴るが縛られていて手足が出ない。


「通訳してやろう、騙したのか?国に帰りたいらしいぞ」

「なんだ、お前、この女は買われた、そして、今ここにいる」

「人の売り買いか、それは許されるのか」

「小僧!死にたいのなら、死んでいくか?」

街中、まあ港だが物騒である

「売られた喧嘩は買うのが筋というものか、だが死んでも文句は言うなよ」と刀に手をかける俺。


「喧嘩はいけませんよ」

そこに、若い商人が現れた


「武力で解決した方が簡単でよいのですが」と俺


「二度と堺に入れなくなりますよ」と商人

「あんな、輩が入れるのに?」

「彼らは、商人の護衛に雇われているものたちです」


堺は財力にものを言わせて、傭兵を雇い、自治を行っている

そういう街である。

資本主義の権化だった俺が何か蘇りそうな予感がする・・・・・・・


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ