007 宝蔵院
007 宝蔵院
宝蔵院の道場に来ていた、武者修行者と紹介される、柳生新次郎が横にいるので、いきなり喧嘩を売られることはない
柳生と宝蔵院はつながりがある
一目で、それが一番強いとわかった
「宝蔵院胤舜どのか!」
しかし、皆が何言ってんの馬鹿なのこいつという風にみられる
「儂は、宝蔵院胤栄覚禅坊と申す」
ヤバい!胤舜って武蔵に出てた人じゃないか?武蔵まだ生まれていない?
まさにそのとおり、武蔵も胤舜もまだ生まれていなかった
宝蔵院胤栄は宝蔵院槍術の開祖である
背丈はそれほど高くはないが、腕がゴリゴリの筋肉質、顎ひげがすごい
目つきもものすごい
「これは、失礼を、拙者は鈴木九十九重當と申します、廻国修行の途中でございます」
「ほう、お若いのに、それで柳生の息子がおるのですな」
「そうです」いつもは余裕があるが、やはりこのような達人の前では、なくなってしまった
「おいくつかな」
「11です」
「ええ」「ええええ」
皆が驚いている、新次郎も驚いている
身長と肩幅が大きいので、年齢よりも上に見えるだけで中身は11才である、ただし、前世知識を足すと軽く百年は超えるがな・・・
本当は、数百年も超えるが、忘れている部分も多いのであった
「生まれつきの体ですかな」
「いえ、これは食事により体を作ることもしております」
「食事で体を作る?」やはりこの考え方は理解されないようだ
「ええ、いい食事をとれば、体を大きく強くすることができるのです」
「むむ!」にらむだけで人が殺せそうである
「修行をさせてもらえるのでしょうか?」
「もちろん、ですが、その体を作る方法をご伝授くだされ」
「ああ、とりあえず、そこの加留羅さんをわが配下にいただきたいのですが」
「なんと、蓮国ですか?蓮国は良き男ではあるが、槍術はそれほどとはいきません」
「ええ、しかし、私の勘が彼を必要としているといっています」
「師匠、私も縁を感じます、ついでにいうと牡丹鍋をもっと食べたいのです」と正直な男
「ボタン舐め?」
「しかたがありません、やりましょう」
こうして、大牡丹鍋大会が始まってしまった
「般若湯を持てい」「飯をたけ」
さすがに、弟子込みで15人以上もいると、いる味噌と肉の量は半端ない
皆、餓鬼のようにむさぼり食っていた
「これが、体を作るということか!」豁然と悟ったかのように胤栄がつぶやく
「食べるだけではだめですし、鍛えないといけませんけど、まあ皆さんの鍛えようは通常じゃないでしょうが」
かくして無事弟子入りに成功?し、槍術の修行に入る
ここでも、料理番も兼任することになる
「師匠、ところで宝蔵院流って鎌槍じゃなかったでしたっけ?」
「なに!九十九、鎌槍とはなんだ」
というので、紙に絵を描く、十文字槍の横の部分が鎌になっているものである
「これは、なんだ!」いやあんたがやってたんじゃ?なかったの。
「よし、これを作らそう」もちろん興福寺には多数の僧兵が存在するので、武器を作る鍛冶屋が存在する、しかも興福寺は金持ちなので簡単に作らせることができる
だからこそ、般若湯(酒のこと)飯(米のごはん)を用意できたのである。
この大和国はほとんどが、興福寺が押さえている国である。
鍛冶屋である俺?も一緒に作業させてもらう
傍らで、適当な刀や十文字槍、鎌槍の穂先などを作る
材料は、持参のスウェーデン鋼なので鍛える必要はなく、形を整え、焼きを入れて刃にすることができる
簡単にできる割に、非常に強力なものになっているのだが、俺はそのことにあまり気づかなかった。
やはりひと月も修行すると、スキル<槍術(宝蔵院流)Lv1>が生える
相変わらず、霜君は生えない模様。あんたにしかそんな機能はない。
スキルが生えるとあとは、自己訓練のみで上達できるので、次の場所に行くことにする
「師匠、ある程度身に付きましたので、廻国修行を続けたいと思います」
「いかん!いかんぞ!」宝蔵院胤栄は断固拒否の姿勢だ
「でも、こっちも時間的制約があるので・・・」
そもそも、あまり弟子らしくない俺氏
元海軍高官でなおかつ貴族、さらに企業集団総帥という前世(直近)の記憶が鮮明であるので、どうしても偉そうになる模様
「うーむ、では儂も一緒に行こう」なんでそうなると突っ込みをいれそうになる
「それが良い、わしも廻国修行に行こう、体を作らねばならんし、この鎌槍も極める必要がある、それに九十九はまだ子供じゃ」
体は、あんたガチムチじゃないか、もう作る必要ないだろう!
「師匠、背は伸びませんよ」
師匠はガーンと打ちのめされている
「背は伸びんのか?」
「成長期過ぎてますよ、三十路でしょ」
「うるさい、今からでも伸びる可能性があるはず」ねえよ
「ついでに言うと、髪も生えてこないと思います」
「うるさい」ゴンと拳骨をくらう
「儂は、剃ってるの、禿じゃないわ!」
でもピカピカしてるけど、心の中ではそう思いながらも口には出さないでおく
この男の拳骨はかなり危険である
加留羅 蓮国は槍術はそこそこだが、やはり銃の腕前はすごかった
すぐに、手足のごとく扱えるようになった
彼は、迦楼羅神を祭る神官の家の三男で、関連のある興福寺に預けられたので、自由にできるとのことだったので、早速俺の配下になってもらうことになった
ちなみに俺は、鈴木孫一の配下であるが、単なる側近である、重要な武将ということではない、ゆえに柳生君は客将扱いが妥当ではないかと考えている
孫一が雑賀衆を統一し、大名になったら、家臣でもよいかなと思う
雑賀衆とはいうものの、「五絡み」などといわれるが5つの集落の惣(自治組織)で合議によっている組織である。つまり鈴木はその五つの内の一つでしかない。
「で、ツクモよ、次はどこに行くのじゃ」と師匠
「はい、これからは情報の時代です、というか戦争とは、情報戦ですから、もちろん情報戦のプロ集団、忍者を雇いに行きます」
「うむ、お前の言葉はよくわからんが、情報は大事じゃな」ひげをしごく師匠
「伊賀・甲賀のものをスカウトします」
「素ッ破か、そうなのか」
「服部半蔵をスカウトしたいです」
「すかうと?とはなんじゃ?」
「雇うです雇う」
こうして、オレ鈴木九十九、霜兵衛、柳生新次郎、加留羅蓮国、宝蔵院胤栄の5人組の旅が始まる、甲賀は近江、伊賀は伊賀国であるが、すぐ隣なので気にする必要はない、大和の隣であった。
・・・・
伊賀の国は貧しいところであった、そもそも田を作る場所が少ないのである
山と谷ばかりの険しい場所にある、だから忍びを生み出すことができたのであるが
やはり貧しい、しかも近ごろは不作続きである、生活はどうしても苦しくなっていた
伊賀国上野
さすがに、胤栄師匠、年の功で伊賀を案内してくれる
迷いもせず、目的の土地に到着、普通の田舎だった、どこにでもある田舎の風景
これが、忍びの里?もちろんそんなに目立ってたらだめだろう
そもそも、このころ忍びなどとは呼ばない、スッパ、ラッパ、細柵などと呼ばれているらしい、知らんけど。
いつもお読みいただきありがとうございます。
ライト時代劇な感じ?です。
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