049 将軍義昭
049 将軍義昭
1566年(永禄9年)
九十九軍団は、京の街で、本願寺顕如一向の到着を待ちつつ、京都市内の警備などを行い、三好家などの残党の駆逐を行う。
西本願寺の場所を縄張りし、基本の掘削工事などを建設師団が行っている。
勿論、代金は請求するつもりである。本願寺教団は金持ちの教団である。
また、市内の武装拠点を構築するために、二条城の改築にも力を入れる。
いつまでも、本能寺にいれば、殺されそうな恐怖感が存在した。
「弾正(松永)を呼んで、二条城の構築に力を入れよう」
孫一は姫路城に夢中らしい。
そんな時、本能寺に使者が訪れる。
季節は流れ、秋めいてきたころである。
「拙者は、細川藤孝と申す」
「某は、細川家家臣、明智十兵衛と申します」
本能寺の堂宇に、有名人がやってきたのである。
「おお、これは細川殿と明智殿か、ということは足利将軍の使いということか?」
「は!」
「某は、田舎者故礼儀に疎いので、そこは勘弁してほしい」
「・・・」
俺は、羽織袴姿ではなく、ジーンズ姿である。
動きやすいからだ。
このジーンズは、帆布を藍染めで染め、現代のジーンズの上下の形に裁断縫製したものである。
細川と明智はこの奇妙な姿の男たちを見た。
何ともけったいな恰好である。
「この度は、足利義昭様より命を受け罷り越しました」と細川
「まことにご苦労」と上座の俺が答える。
本来は、ははあとひれ伏すのが礼儀なのであるが・・・
因みに上座に座ってもらうべきところであろう。
しかし、この男にはそのような常識はなかった。
「義昭様は、鈴木家のこと、ことのほかお気にかけておられます」
なぜか、かみ合わない会話が続く。
後から知った事だが、下賤の国人が今、威勢があるが、将軍家が後ろ盾になってやるから、迎えに来い。ということを言いたかったそうである。
俺としては、もう大大名の気分(鈴木家の石高は100万石を越えた)だったので、助けてくださいと言われると考えていたが、世の中には、階級制度があり、昇級させてやるから、助けろと言われていたのであると道雪に解説される。
「なんだか、馬鹿らしい話だな」
「殿、しかもあくまでも我らは鈴木家家臣でございます」
身分はさらに下になるという。
助けて貰う方が、偉そうにするとかありえない!と思う今日この頃。
彼らは、今、越前にいるという。
すぐ最近までは、近江にいたが、鈴木家が上洛してきたため、逃げて越前の朝倉氏を頼ったのだということらしい。
斯くして、九十九たちは、越前まで将軍候補を迎えに行くことになる。
義昭は上洛後将軍宣下を行う予定らしい。
すぐには無理なので、兵を整える時間がかかると、十数日の猶予を貰う。
因みに、近江六角氏、浅井氏も義昭上洛に賛成のため、武力闘争は起きないであろうとのこと。
越前出身の戸田勢源師匠とその一行を入れる。
すでに視力をほとんど回復しており、帰るとまずい状況が起こりそうだが、敢えて一行に加える。
「ところで、十兵衛殿には、美人の妻女がおられるとか」
「いえ、そのようなことはございません。九十九様の御内儀の方が余程美人でございましょう」と明智光秀、さすがに切れ者という感がある。もちろん、見せたことはないし、見たこともない。
細川をパスして、明智ゲット作戦発動中である。
この時、明智は、細川の家臣ということになっていた。
「そうじゃの、犬は大層美人じゃ、未来は毛唐人じゃがなかなかの美人ぞ」と自慢する俺
「家内は病弱で・・・」明智光秀の顔色はさえない。
主家の土岐氏が斎藤竜興に滅ぼされ、越前に逃げ延びたので、心身ともに疲労していたのであろう。病に伏せっているという。
「それよ、十兵衛殿!」
「え?」
「十兵衛殿、我らには、栄養が豊富な食べ物がたくさんある。お内儀に栄養をとらせてみてはどうかな。望月!」
側に控えている望月が返事をする。
「殿、明智殿のお内儀の状態によるでしょう、あまりに弱っている時には、精のつく食べ物は悪いのです。」
「そういえば、そうだな」
「しかし、殿であれば」と打ち合わせ通りの芝居が始まる。
「だが、」と難しい顔の俺
「何かあるのですか?」と明智
智謀の男も妻のためだと冷静さを失うようだ。
「何、大したことではござらん」
「いえいえ、殿のお力で勢源様の眼は復活されたのです」
「望月の薬のおかげであろう」
「勿論、そうかもしれません。ですが、目薬の木の薬効を発見されたのも殿でした」
「何か、医療の術があるのですか?」この時代に眼病が治ることは基本ない。
「十兵衛殿、ないことはないが、やれば治るというものでもない。」
「それに、残念ながら殿の秘術は秘中の秘にござれば、無暗に明かすことはできません」と望月がもったいぶった事をいう。
「どうすれば」
「なるほど、ですから栄養のある食物の話をされたのですね、それなら差し上げる事も可能ですからね」と明智の質問を無視して望月がいう。
「栄養状態がよくなれば、大概はよくなるであろう?」
「は、さすが殿」と猿芝居は続く。
この時代は栄養失調の時代、大概は補えば問題は解決する。
しかし、何か特別な方法があることをにおわせた物言いをされると、人間どうしてもそちらに気が行くものである。
「精のつくものも大事ということですが、他に何か方法が?」光秀は必死だ。
「明智殿、失礼しました。お忘れください」と望月。
「どうか妻を助けてください」
「いやしかし、細川家へ出仕されたばかりの明智殿にこのようなことは言えるはずもございません」
「何ですか?」
「ご無礼を承知で申し上げるが、この秘術は、他家の者に使うことはできません」と望月がひっそりという。
「つまり、鈴木家に仕えよということですか?」
「ありていに申せばそうなります。」
「わかりました、私は、九十九様にお仕えします」
「え?」
「はい、そもそも、某は細川家の家臣でござれば、将軍家から見れば陪臣です、それに、今や九十九様のご活躍は天下にとどろいております。何の否やがございましょう、某の方からお願いしたいくらいです」と俄然やる気を見せる明智。
「鈴木本家ではなく、九十九家でよいのですか?」
「全く問題ありません、九十九様こそ、天下を治める方に違いありません」
こうして、明智光秀は、軍門に降ったのであった。
日ノ本の趨勢を少しでも知れば、智謀に優れる明智光秀はすぐにその判断を行うことができたのである。
明智光秀が鈴木九十九の家臣になることが決まり、細川藤孝に謝罪を行いにいったが、
「明智の面倒を見るほど此方にも余裕が無かったので丁度良かった」とのことであった。
細川よ、それでよいのか?
・・・・・・・
「何じゃ!この馬は!」
細川藤孝らが素っ頓狂な声を上げている。
それは、明からの輸入馬を繁殖したものである。
在来種の馬とは基本的な大きさが違う。
「ははは、某の名馬『赤兎』は赤い汗を流すのじゃ」自慢げな男は、前田慶次郎である。
「某の馬は『絶影』だ」と謎の筋骨隆々の坊主がいう。
確か関羽の生まれ変わりと自称していたが?曹操の馬の名前では?
細川らの馬と体格が明らかに違っていた。
そう、大人と子供ほどに。
明智光秀は、大型馬を与えられていた。
九十九の家臣であれば、日本産の馬を騎乗としない。
日本産の馬は荷駄馬として使われている。
しかも、光秀には種子島も与えられていた。
今や、鉄砲の聖地とも呼ばれる紀伊である。
その統轄を行っているのが、九十九という男であった。
当然の事である。
幸いにして、明智光秀という男は、銃の才能があるようだった。
細川はその様子を見て歯噛みした。
田舎武将の方が金持ちでいいものをたくさん持っているからである。
もちろん、日本の富を独占するほど儲けていることは知らなかった。
巨馬の列が、琵琶湖にでる。
そして、一路越前へと向かうのである。
季節は秋、早くしないと、雪に阻まれるのでかなり速度をはやめている。
馬としての能力もやはり、大型馬のほうがよく、細川家の馬はすぐに疲れてしまう。
その代わり、必要な飼い葉も大量に必要というデメリットがある。
それらは、あとから牛が引いてやってくるのである。
九十九の構想では、これらを機甲師団と呼んでいる。




