022 合戦
022 合戦
攻城三倍の法則というものがある。
城を攻める場合は3倍の兵力がいるということである
しかし、此方は300、敵は3千である
精兵といえ、元は農家の次男三男である
皆の表情はさえない
有田川河口から北上する地点の途中に鰈川峠がある
そこに、急造の砦を築いた
木材をプレカットし、作っておき現場で組み立てる
現代のプレハブ?プレカット工法にヒントを得た方法である
砦というより、防壁に近い、高さ2m幅1.5mの防壁である
峠であるため、長さ20mもあれば、敵の進行を阻むことができる
それ以外のところは森であり、忍びに警戒させている。
余裕で勝てる気でいる畠山軍は物見すら出さず進撃してきたが、いきなり出現した防壁に驚いた。
「聞け!愚か者どもよ、わしは、平井の鈴木九十九、わしには何ら非はなく、堺の商人に簡単に騙されて兵をあげる、畠山の愚かものに加勢するとは哀れなり、彼我の勢力は明らかなれど、ここはひとつ、一騎打ちを所望する、我と思わん者は参られよ!」
防壁の前で声高々と呼ばわる男。
普通に聞けば、兵力差は明らかで戦えば負けるので一騎打ちで逆転したいと聞こえるのだが、俺の真意は違う、戦力は明らかにこちらが上だから、一騎打ちで遊んでやるという意味なのだが向こうには伝わらないであろう・・・
彼らには、鉄砲がない、そして、この木造防壁を燃やすための油もない
ついでに言うと、鉄砲を防ぐ竹束すらない
此方の兵は、数を恐れているが、この狭い峠で敵全員が同時にやってこれるはずもない
敵の行軍は長く伸びているのだ。
「子供が言いおるわ!わしは日高の〇〇(地名)の山本嘉平である、いざ尋常に勝負せよ」
日高の国人の山本何某が、鎧姿で現れる
此方は、いわゆる鎧を着ていない、動きにくいので、各部を皮革の鎧にしている
この時代、一騎打ちはもはや行われなくなっている
しかし、せっかくの戦国である、一騎打ちをやってみようとの思い付きである
「山本何某殿、ではいざ参る、しかし、瞬きをしてはいかんぞ、主が瞬きした瞬間が汝の往生へ至るときとなる、注意せられよ」
槍を構える鎧武者はその時瞬きをした
バンと音が発する
俺のいた場所に土埃が舞い、鎧武者の首がはね飛んだ
周りで声を出していた兵どもが息をのむ。
誰も、その動きが見えなかった
山本嘉平の前にいた敵は瞬間にその後方にいた、そして、首が舞っていた
敵のいた場所には、敵の爆発的な脚力が小さな穴を開けていた。
その時俺は、全身の筋肉が裂けて苦悶の表情を浮かべていたことだろう
限界をはるかに超える負荷をかけて、足、手の筋肉が断裂していたのだ。
<破壊された筋繊維を修復します>
でたらめな体であった
「弱いの!」何とか苦痛から戻ってきた俺は、笑みを浮かべ挑発を再開する
「次の者参られよ」
「待てい!」声がかかったが、味方であった
「九十九よ、一騎打ちは戦の華、次は儂に譲れ!」
防壁から飛び降りてきたのは、僧形の槍持ちだった
「儂は、大和の国、興福寺の末寺、宝蔵院院主、宝蔵院胤栄なり、一騎打ちを所望する」
「湯川直道がその一騎打ちを受けようぞ」
雑兵を割って、武者が進みである。
胤栄は初めてあった時より二回りほど筋肉の鎧が増えていた。
肉食と栄養管理を行い、鶏肉の胸肉を主に食べていたのである。おれがプロテインを勧めたのである。
背はさすがに伸びていない・・・
もやは、槍でなく素手で相手を絞め殺す方が向いているくらいだ。
「参る」
「奥義、槍葛(やりかずら」
槍対槍であったが、胤栄の槍がぐにゃりと曲がったかのような動きを見せ、相手の槍に巻き付くように見えたその時、バシンという音がして、相手の槍がはじき飛ばされた
「グわ」湯川氏の手のひらから血が噴出していた、槍を跳ね飛ばされたときに手のひらが裂けたのである。
胤栄の三日月槍が湯川氏ののどを突き刺す。
敵兵は真っ青になった
たったの5分で2名の将が打ち取られたのである
「まだまだやれるぞ、来られよ」胤栄が煽る
「待てい!」しかし、またも味方から邪魔が入る
二人が飛び降りてくる
「某は、大和の国柳生の庄、柳生新次郎」
「俺は前田慶次郎」
一騎打ちはこの時代行われることはなくなっていたのだが・・・・
湯浅何某、玉置何某がそれぞれ相手になったがあっけなく打ち取られる
「湯浅佐渡守様、玉置弾正様討ち死に・・・」
次々と本陣に訃報が飛び込んでいる
そもそも、まだ、進軍の途中である
敵はまだ、ずいぶんと先のはずである
畠山政尚は激しく動揺した
「一騎打ちなどやめさせよ!馬鹿者が、数で優っているのに、総攻めでかかるのじゃ」
しかし、最前線に届くころには、すでに3人が切り殺されていた
服部半蔵保長と戸田勢源、川崎鑰之介が敵を打ち倒していた
歴史に残る一騎打ちの戦いとなっていた。
戸田勢源は目薬の木の力でかなり視力を取り戻していた。
敵軍が引き始める
いよいよ、総攻めをかけるきになったのであろう
「よし、みな聞け、これよりは訓練通りだ、海兵諸君は弾込めを頼むぞ、今見てわかると思うが、数こそ多いが、大した敵ではない、みな落ち着いて臨め、以上」
海軍式敬礼をする
全員が敬礼で返す
防壁の前はそれほど開けた部分はないのでせいぜい数百人が一斉に突っ込んで来れる程度である、しかも、防壁までは、スコップで兵たちがほった浅い空堀が3重に掘られており、馬防柵もあったりする。
「いいか、一番外の堀は1丁(100m)の距離だ、ここから射程内に入る、各自正確な射撃を心掛けよ」「はい」
霜は今まで、繰り広げられた一騎打ち大会を防壁の上から横目でみながら、敵将の場所などを確認していた、彼の持つ銃は、九十九特製の元込め式ライフル銃であり、弾も金属製薬莢性である、有効射程は300mである、今回の戦いでは、将のみを狙うように言われている。
同様の銃は、ほかに2台あり、諏訪賀と荒部が所持を許された。
ドンドンドン、総攻めの太鼓の音が聞こえ、敵兵たちが大声をあげながら突撃してくる
「各人自由射撃開始」敵兵が堀の一番外側に入ったのである
この時代の火縄銃の射程は100m程度であるが、有効射程は50m程度である、ここにある銃は、冷間鍛造により、ライフルを刻まれており、それを補うため、発射薬を多く使う、そのために、銃身の元のほうは、肉厚に作られている
そのことにより、有効射程100m、命中精度の向上を達成している
そして、紙早合(玉と装薬一封化)と雑賀撃ちである
射手一人につき、掃除、装弾のかかりがつき銃は三丁を使用している
射手は、適正の高いもののみを選抜している
射手100人が間断なく発砲していく
浅い堀があるため、全力疾走できない、堀を這い上がる瞬間に弾が体を貫く
瞬く間に、外側の堀が死体で埋まることになってしまった
次々と将の訃報が飛び込んでくる
総攻めの命令の後のことである
3つ目の堀は50mのところに掘られている
そこまでたどりついた者はごくわずかであった、しかもその堀を上がった時に、みな死んでいた
あまりの惨状に突撃がやんでいた
遠巻きに畠山政尚はその惨状を見た、家臣によるとその場所から外は、射程外という
おびただしい死体が、堀を埋めていた
主君を打ち取られた、家の者が帰還要請をしているとのことである
「種子島とはこれほどの威力なのか」
「恐るべき兵器かと」
彼らは、堀から50mは離れていたのだが、防壁の上からは、よく見えていた。
そして、今までの中でも一番高価そうな鎧を着ていたのである。
静まり帰っていた戦場に、三発の銃声がとどろく
「あ!」これが、畠山政尚の最後の声になった
横の家臣もどうと倒れる
「畠山様が撃たれたぞ」
「敵将打ち取ったり!」
様々な歓声が起こる
この時代の戦いは将が打ち取られた場合は負けとなる
一斉に逃げ始める侵攻軍であった
「追撃!追撃開始!」
歴史上、鉄砲が戦で大規模に使われた、はじめての戦い、後に『鰈川峠の戦い』の勝敗はこのように、一方的に決着した。
ただし、この情報が日本に定着するかどうかは定かではない。




