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女嫌いの幼少期

本日2回目


 ハロルドがため息を吐くと、知った顔でガレンが声をかける。


「また女嫌いに拍車がかかったきっかけを、思い出されているのですか?」


「ああ。悪しき風習だ」


 仕事中ではあるがハロルドが手を煩わす執務はほとんどなく、淡々と処理していく姿は頼もしい。そのため、彼が悩ましげにため息を吐くのは、決まってある一定の期間を思い出したときだ。


「国王になった暁には、必ずや撤廃させてみせる。即位後、最初の改革として」


 ハロルドが力強く宣言したのは、幼少期の過ごし方について。

 上位階級の男子は皆、古い慣わしに則って、十歳までを女の子として過ごす決まりになっていた。


 まだ精霊や魔法が一般的だった頃。悪い精霊に大事な息子を誑かさせないため、周りにも性別を偽るのだ。


 王族や上流貴族の家庭に赤ちゃんが生まれても、性別を聞くのはタブーとされている。


 もちろん聞かれたところで「かわいい女の子です」と当たり前に答えるのだろうけれど。


 ガレンはハロルドに気づかれないように、やれやれと肩を竦める。


 まだ幼い頃に女の子と共に過ごすのは、精霊うんぬんよりも、女を見極める目を養うためもあるのだと公爵令息でもあったガレンは心得ていた。


 ガレンもまた、古い慣わし通りに女の子として育ったひとりだ。


 女という生き物は男性の前では取り繕っていても、女同士では化けの皮が剥がれるもの。それは小さい頃も等しく"女"であった。


 人を見る目を養うため。皇太子であるハロルドも、そう説明を受けていたと思うのだが。


 ハロルドをチラリと見遣り、殿下の性格ではどんな育ち方をしても、女という生き物は苦手であっただろうな。


 難儀な性格であるのに女を避けて生きられない立場の主人を思い、ガレンもまたため息を吐くのだった。


 そこへ執務室に現れた文官が、沈んだ空気を変える。


「殿下。ケンドリック伯爵からお手紙が届いております」


「そうか」


 ケンドリック伯爵……というよりも、伯爵令嬢のイレーヌは、終わりがないと思われていた皇太子妃候補選出に現れた一筋の希望。


 ハロルドは気づいていないようだが、イレーヌに興味を持っている様子。時折り、物珍しい珍獣を観察するような少年の目になるときがあり、それがいいのか悪いのかは置いておいて、皇太子が初めて心動かされた女性だ。


「ガレン。次に会うのを承諾するそうだ」


「それはそれは」


 なんとも楽しそうに口の端を上げるハロルドに、ガレンは目を細める。


「今度は、こちらから相談を持ちかけてみるつもりだ」


「相談……ですか」


 黒い笑みを浮かべるハロルドに、たまたま目をつけられた純朴そうなイレーヌを不憫に思った。


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