ボスエンカウント
また一体骸骨を倒し、それもサラサラーっと砂になって消えていく。
仮面が増やせない。
これはどういうケースだろうか?
同じモンスターだと意味がないのか。
俺が被れる仮面が二枚までなのか。
それとも倒したモンスター全部から出るのじゃなくて倒した瞬間ランダムで出来るかどうかが決まるか。
もし最初の場合だと非常にまずい。
今町の中には骸骨だけがウロウロしている。
普通のゲームだと敵を倒して行けば倒せば倒した分だけ強くなれたり、何かしらの恩恵があるはずなんだけど。
このゲームレベル制度やアイテムドロップ的なのが今のところ無いっぽい?
まあ、いろいろ検証した結果骸骨をスムーズに倒せるようにはなった。
勝手に手が動くので変にこっちで抗わずに身を任せれば自動でやってくれる。
ちょっとロックなコンサートに行ってヘドバンしてる気分になるけど。
すごい便利。
おじさん、この歳になって初めてヘドバンを体験しました。
ただ問題なのがこの先である。
骸骨は倒せるようになった。
ただ元々このクエスト、住人が捕まってるから助けださなきゃいけないわけで。
この町の中にそもそも人の気配が無い。
骸骨しかいない。
つまり町の外にいよいよ出なきゃいけない。
この町に最初に飛ばされた所へ戻り、そこから町の外へ出れる場所を見つける。
こっちでそもそも合ってるんだろうか?
森の中に続いてるある程度整備されている歩道?のような場所を道なりに進んでみる。
うむ、不気味。
赤黒いってだけでも気味が悪いのに物音一つしない。
というか骸骨みたいなモンスターすらいない。
やっぱり道を間違えたのだろうか?
そろそろ引き返そうかと思っていると、何かがそこにはあった。
人の腕が落ちてる。
この世界で赤と黒以外に構成された色なのですごく目立つ。
すごい肌色ですね。
そして体の部分が見つからない。
状況的に多分道は合ってたっぽい。
だけどこれもしかしなくてもいなくなった住人の腕なんじゃ。
「うわぁ…」
思わず声が漏れる。
ゲームの演出なんだろうけどエグイ。
というかこんなことできる奴に俺勝てんの?
とりあえず落ちてた腕を適当に掘った穴に埋め、浅い知識の念仏を唱えて先に進む。
そして進むにつれて妙に歩き難くなってくる。
泥を踏んでいる感覚に近いかもしれない。
そしてそれが泥から、水溜まりのようなものに変わっていく。
自信の足からパシャ、パシャと水溜まりを踏んだ音が鳴り響く。
なんで森の中にこんなに水溜まり?
不思議に思っていると広い場所に出た。
そして心臓が止まりそうになった。
人、人、人。
ただし体がバラバラにされたものが積み上げられている。
死体の山だ。
バラバラにされてる死体から流れ出てるものが地面に吸い込まれていく。
どうやら俺が今まで踏んできたものは人の血液だったらしい。
足が洗いたいなー。
そう馬鹿なことでも思ってもいないとこの異様な光景に吞まれそうだった。
そしてその死体の山の上に座る人影が一つ。
ゆっくりと立ち上がりこちらを向く。
骸骨だ。
だけど今までのやつらと違い、立派な黒い鎧を着てこれまた黒い剣を持っている。
強そう。
っていうか強いんだろうな。
だってこの死体全部こいつが殺ったんだろうし。
そしてゆっくりだけどこっちに近づいてきてる。
『汝か、我の記憶を覗いたものは』
話かけてきた。
絶対強いじゃん。
イベント戦前の会話とか絶対ボスじゃないですか。
『汝か、我の魂を覗いたものは』
えっと、魂?記憶?
これはどう答えたらいいんだろう?
『我の分身から「それ」を剥ぎ取ったであろう』
困惑してるのが伝わったのか鎧の骸骨さんが俺の顔を指す。
あ、仮面のことか。
そして徘徊してた骸骨はどういう原理か分からんけどこの人の分身だったのか。
なるほどなるほど。
骸骨倒して仮面剥ぎ取って、他にも徘徊してた骸骨も検証がてらポキポキと頭をもぎ取りましたね。
やばい。
めっちゃケンカ売ってる行動しててそれがバレてる。
「えっと、すみません。そのわざとではないんです」
ここは低姿勢に、低姿勢に。
『よい』
ほら、ケンカさえ売らなければ解決することだってあるんだよ。
ぶっちゃけ今の状態で勝てそうにもないし、ここは穏便に社交的に
「ありがとうございます。その、ここに迷いこんでそうな町の住人だけ解放していただくことはできないでしょうか?その後は普通に去りますんで…」
話終える前に剣を構えた骸骨さんが俺に突進してきた。
「うぇい!?」
咄嗟に横にジャンプして避ける。
あ、危なかった。
あと一瞬遅ければまた仮面がお亡くなりになるところだった。
『よいのだ異端者よ。我はお前を許そう。そして貴様は我を許す必要はない』
『あの子の「夢」を終わらせないために、貴様を犠牲にすることを』
といって鎧骸骨さんはこちらを向いて剣を構え直す。
良くは分からないが逃がしてくれる気がないのだけは伝わった。