手が増えました、もっと首が欲しいです
骸骨の仮面。
今すぐにでも取り込みたい気持ちで満載なんだが。
さっきの断末魔聞いた後だと凄く怖い。
なんか呪われそうじゃない?
恐る恐る手に取ってみる。
うん、見るからに禍々しい。
そして一番の問題が。
めっちゃ美味そうに見える。
うん。分かってるよ。
でも良い子の中年の皆も医者に糖尿の気があるから甘いものを控えてと言われてもついついお菓子食べちゃうじゃん?
あんな感じ?
見るからに危ないしこんなもん食った日には腹壊すんだろうなっていう感じはするのに、どうもプレイヤーの俺の意識じゃない『何か』を感じる。
ウサギの仮面のときも美味そうって思ったのから想像するに、
あのときも多分この『仮面マトイ』自身に意識乗っ取られてね?
オートの仕様なのか、キャラの仕様なのか分からんがどうにも仮面への執着が半端ない。
いいのか、これ?
プレイヤーの意識刈り取ってるけど。
大丈夫?バグじゃない?
怖いけど仮面集めないことには絶対生き残れない。
ただでさえこの骸骨君手に入れるのも命がけだったのに武器も無しじゃいつまでもつか。
椅子カリバー(仮)は役に立たないことが立証されたし。
俺もどうかしてたよ。
椅子で殴るってどんな原始的な方法よ。
なんらかの有用な能力を手に入れる必要がある。
出来れば戦闘用の。
うし、食うか。
中年は度胸、なんでも試してみるもんさ。
といっても食べてる?描写のとき記憶無いんだけどね。
オートスキップ昨日が備わってると思えばいっか。
別に仮面をボリボリ食べてるところ見ても不気味なだけだし。
期待も込めて骸骨の仮面を手に取り、じっと待つ。
ほーれ餌の時間ですぞー。
待っていると徐々に意識が薄れていくのを感じる。
きたきた。
完全に意識が途切れる前に聞こえてきたのは
『イタダキマス』
というどこか陽気な声だった。
あれ、前のときこんなこと言ってたっけ?
視界がなんだかボヤけてる。
なんとなく夢を見てるっていうのが感覚的に伝わってくる。
子供が泣いている。
衛兵の『俺は』その子供に、大丈夫だよ、大丈夫だから。
ひたすら慰めの言葉をかける。
大丈夫だよ。大丈夫だから。
カタカタとしか話せないこの体がもどかしい。
絶対に守ってみせる。
皆、皆。
俺が今度こそ。
そこで意識が徐々に覚醒しだす。
おはようございます。
うん、なんだか凄い意味ありげな夢を見た。
これはこの骸骨の仮面の元になったやつの記憶か?
なるほど。
他のプレイヤーはどうか知らんけど俺のキャラはこういう形でストーリーやヒントを見ていくのかもしれない。
なるほどなるほど。
仮面絶対集めなきゃダメじゃん。
取りこぼしたらストーリーとかクエストの全容が分からなくなるやつだこれ。
新たな目標も出来たことだし。
いよいよ本命。
すーはー。
ヒッ・ヒッ・フー
よし。
「ステータス!」
ステゴロからは出来れば脱却したい。
おっさんの反射神経じゃ相手の攻撃も避けれない。
どうか、どうか有用な能力を!
鏡が出現し、覗き込む。
うん、予想通りだ!
鏡に映る姿には骸骨の仮面から血が流れでているピエロの恰好をしたやつが映っていました。
怖いです。
そして鏡の中に文字が浮かびあがる。
名前:仮面マトイ
種族:???
HP:1/1、1/1
異能:骨手、血涙、仮面収集、仮面憑依
HPは予想通り1/1がもう一個増えてる。
多分だけどだけどこれ仮面毎にHPがある。
サモレさんが撃ってきてウサギの仮面が壊れたのは一回死んだから。
あいつ絶対許さねぇ。
なんで始まりの町でNPCに殺されかけなきゃいけないんだ。
でもこれはありがたい。
一回までなら死ねる。
死にたくないけど。
そして異能。
えっと。
これってどうやって読むんだ?
ほねて?
ヘルププリーズ。
新しいものは本当にヘルプ機能に聞かなきゃ分からん。
骨手:仮面から骨の手を出現させる
うん、結局読み方は分からない。
だけど仮面から骨の手って。
なんだか非常に微妙そうな、使えるんだか使えないんだか分からないような。
使ってみろって話なんだけどまず戦闘じゃないところで試そう。
万が一ダメージ食らったら仮面壊されてまた振り出しに戻りそうで怖いです。
もっと冒険しろって?
ぶっつけ本番?
ははは、無茶を仰る。
とりあえず戦闘無しで仮面から骨の手が出現するか試す。
骨よ出よー、骨よ出よーと心の中で念じてみる。
そしたら顔から何か飛び出したのがわかった。
目の前が真っ暗になった。
多分今現在進行形で骸骨の手が顔から出現している。
感覚で分かる。でも、
文字通り仮面という俺の顔から出ているであろうそれは視界を全部シャットアウトしている。
あかん。
マジで見えん。
しかもなんか勝手に動いてるっぽくて頭に振動がモロにくる。
うお、やめろ揺れる、頭が揺れる。
人の頭でヘッドバンキングするんじゃねー!
ダメだこりゃ、戻れ戻れ。
顔にあった異物感が消えて視界が戻ってくる。
うっぷ。
少し酔った。
誰かに頭を鷲掴みにされてガクガクと揺らされた気分だ。
いや、されたことないんだけどね。
何が起こってるのかまったく把握できない。
こっちの意思で動かせてない。
なんとも微妙な能力を貰ってしまった。
ジャグリングよりはマシだけど。
とっとと新しい仮面を取りに行くか。
まぁ、命のストックが増えたと思えば。
ギリギリ異能無しでもなんちゃってステゴロで倒せるわけだし。
もっと仮面を手に入れれば能力も増えるかもしれない。
ただ慎重に、慎重に。
骸骨共もまだ町を徘徊しているのでアンブッシュ方式で行こう。
ビビってないさ。
本当だよ。
壁から壁へカサカサと進む。
出来るだけ見つからないように、相手の後ろをいつでも取れるように。
すると一匹の野良骸骨を見つける。
まだ気づかれてないようだ。
後ろから忍びより、背後から首目掛けて両手で握りこぶしを作り力いっぱいに振り下ろす。
カタカタ
うん、まだピンピンしてる。
アンブッシュが全然できません。
よく漫画で首に片手でトンってやるだけで敵気絶する描写あるけど、あれ嘘ですね。
骸骨が俺に気づきこちらを掴む。
相変わらず避けれません。
噛もうとしてきたので慌てて骨手を出してみる。
うん、相変わらず何も見えない。
そして頭がめっちゃガクガクする。
酔う、これかなり酔う。
人が吐き気と戦っていると目の前?から
ゴキッ
という鈍い音が。
肩を掴んでた骸骨の力が緩む。
骨手を戻してみる。
おお。
骸骨の首が取れて地面に落ちてる。
良いじゃないか骨手。
視界が完全に見えなくなるけど自動で攻撃してくれるのか。
どこぞの椅子とは大違いである。
よし、仮面収集、仮面収集っと。
意気揚々と骸骨の首を求める俺。
戦国武将が相手の首を求める気持ちが分かったかもしれない。
短い間にいろんな倫理感が吹っ飛んだ気がする。
ペリッと仮面を剥す気まんまんでいたら骸骨が砂になって消えていった。
頭と体両方。
あれ?
おっかしいな。
もしかして。
いやー、まさかね。
たまたまよ。たまたま。
今度こそ上手くやればと思い、また徘徊してる骸骨を探す。
丁度良いところに新しいのがもう一体近寄ってきた。
今度は無駄なことをせず、後ろから忍び寄り、骨手を発動。
ゴキッ
この音がどこか心地良くなってきた俺はもう駄目かもしれない。
敵を倒した瞬間にゲームでよく鳴る勝利BGMの気分。
そして骨手を引っ込め、取れてる骸骨の頭を確認。
砂になるのも確認。
はい、サラサラサラーと俺の手からこぼれていくね。
うん。
これはあれだ。
仮面収集ができねー!